「風が心に刺さった日」
「今日やろ?」
いつもの公園で、いつものように漣と二人。
芝に寝ころんで、風を感じていた。
「なにが?」
ぽか
「いたあ・・・・」
「何がやない!テストの結果や!」
・・・・・・ああ、そっか。
「うん。今日届くと思うよ」
漣の顔が一瞬曇る。
でもすぐ陽気な顔になって、
「いよいよ玲奈もハンターかぁ」と呟いた。
・・・・でもね。
「まだじゃないんだけど・・・」
「ほえ?」
きょとんとなる。
まあ無理もないと思うけど。
「ライセンスが合格通知と一緒に届くんやろ?」
「うん、そうなんだけどね」
そなんだけど、ハンターにとって最後の適性審査というものがあるの。
それは見知らぬ人とパーティーを組んで、一定持間共に捜索をするというもの。
そこで合格判定を受けてやっとハンターズライセンスが発行されるというわけ。
「何や、まだ仮免かいな。めんどいことやねー」
漣はシンプルなのが好きだからなあ・・・
でも、仕方がないって。
そうやってしっかりした試験にしないと未熟な人も簡単になれてしまうことになっちゃったら大変だと思う。
「こういうのは難しめの方がいいんだよ」
「そかなー」
そうだよ。
今日もいい風が吹いていた。
システムが管理している風なのに、故郷――自然とと同じような気持ちよさ。
優しく吹く風に身体を委ねる。
緩やかに時が流れる。
側にいるのは大切な友達。
わたしと同じように横になって風を感じている。
この時を大切にしていたい。
ハンターになったらきっと、こんな気持ちになることも少なくなるだろうから。
辛い時に耐えることの出来ること、それは思い出に帰ること。
いい思い出に帰って、そして心を和ませて、辛い局面に立ち向かう。
わたしはそうやって辛さに立ち向かってきた。
まだまだ全然長い時間を生きてきたわけじゃないけど、それで辛いことや苦しいことはたくさんあった。
でもわたしは頑張れる、
大切な人と過ごしていた思い出と、優しく吹いてくれる風があるから。
だから、きっと大丈夫。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
不意に――――――――――――――――
風が、変わった。
困惑しているような、複雑な流れ。
どうしたんだろう・・・
「玲奈」
「ん?」
漣が呼ぶ。
声に緊張が混ざっている。
「どうかした?」
わたしも自分の声が強張っていたように感じた。
「あれ見てみ」
目配せ。
その先にあるのはベンチ。
とはいってもかなり先にある。
ここからは40メートル以上離れている。
「見られてるで、うちたち」
「え?」
漣は体術を使う人だからそういうものを感じ取る術に長けている。
でも・・・・・
「ベンチって反対向いてるよ?」
そう。
ベンチは芝生に背を向けている。
つまりここを見るなんて無理なはず。
「間違いない。見てる」
漣の緊張が解けていない。
「長身の男や、それもかなり鋭い「気」持ってる」
その時―――――――――風向きが変わった。
風がベンチの方から流れてくる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それは・・・・・悲しい風。
よくわからないけど、悲しかった。
「玲奈?」
辛い、厳しい風。
「玲奈て」
優しさを、暖かさを全て失った風。冷たく、突き刺さるような風。
「れな、て!」
「・・・・あ、え?」
身体を揺すられて気がついた。
「な、なに?」
「・・・どうして泣いてるんよ」
言われて気がついた。
頬を伝うものに。
「あれ・・・・・あれ?」
自分でもわからない。
でも・・・・止まらない。
ただ風が冷たくて、悲しくて。
「・・・・・・・・・・・・・!」
気がつくと、わたしたちの前に一人の男の人がいた。
その人は・・・この間ベンチで腰掛けていた人だった―――――――――――――――