洞窟の果ての死闘!
「レスタ(生命よ、萌えよ)」
ルルーの姐さんのテクニックで傷が癒えていく。体内のナノマシンは今日も正常だ。
俺達、人類の歴史で、近年に大革命を起こしたのは、母星近くの衛星から発見されたフ
ォトンとナノマシンだ。フォトンは様々なエネルギーに、ナノマシンはいろんなテクノロ
ジーと融合した。姐さんが唱えたテクニック、レスタにより俺の傷が治癒されたのも、ナ
ノマシンが俺の体内に存在するからこそ。テクニックにより命を受けたナノマシンが体内
の治癒機能に呼びかけ自らも治癒に参加し、自然治癒を瞬間に行うまでに加速させる。戦
闘どころか生命の維持さえも危ういレベルも、テクニック”リバーサ”とナノマシンの働
きがあれば、死の淵から即戦闘出来るまでの治癒も可能なのだ。
「ギルガン、貴男、副作用はないの?」
軍人からハンターズに転向して間もない(ハンター家業が長いアルのお嬢達に言わせれ
ば、だ)俺に、アルのお嬢が声をかける。
病気は無理だがどんな怪我でも瞬時の治癒を可能にするテクニックとナノマシン。テク
ニックを使う能力を持つにはナノマシンを体内に射れる事が必要なのだが、しかし、ナノ
マシンは曲者で、これを体内に射れることに耐えれる人とそうでない人が居るのだ。耐え
れない人はどうなるか? 答えはナノマシン注入後、死する。だから、いくらその恩恵が
大きいとしても、ナノマシンを身体に入れたいと、自ら思う人はあまり居ない。そう、俺
達のように、毎日手足を切断するくらい、またはそれ以上に身体を害する、ハンターズ以
外には。
「無いな。お嬢のように、愉快なやつなら大歓迎なんだが」
俺の言葉に、むっとするお嬢こと、アル。マスタークラス(レベル100超)のハニュ
エールだ。お嬢は見かけ背が低く、ジュニアハイスクールに行ってるといっても通用する
が、ニューマンという種の不確かさか、実年齢はチームの中でも一番高い。
「まあまあ、ギルガンさん。アルはギルガンさんを、心配してるのですよ」
へらへらと笑う俺とそれを睨みつけるお嬢の間の悪さを察したのか、先ほどレスタを唱
えた姐さん、ルルーが俺達に話しかける。姐さんはお嬢と同じマスタークラスで、フォマ
ールだ。物腰穏やか、いつも笑みを絶やさない、俺より年上の女性だ。アルは顔が幼いつ
くりですから睨んでも可愛いですよ、とお嬢の頭を撫でる姐さん。なおさら間を悪くして
いるような気がするが、それを許してしまえる、何かを持っている女(ひと)だ。
拗ねて、ぷいっと横向くお嬢の頭をなで続けつつ、アルは本当に自覚がないのですねそ
んな仕草が可愛いのですよと微笑みながら、「本当に大丈夫なんですか?」と姐さんが聞
いてきた。
「ああ、全くねぇよ。姐さんもないんだろ?」
ナノマシンを身体が受け入れても、その後に何だかの影響が出る人が居る。例えばアル
のお嬢だ。お嬢の副作用は可愛いモノで、たまに性格が幼くなる。その”たまに”もアル
のお嬢は強い精神力で押さえ込んでしまうので、ほとんど害はない。が、中には、ハンタ
ー家業に影響を及ぼす場合もある。ある野郎がハンターになろうとナノマシンを射れたが、
副作用で歩けなくなったというのを聞いた。神経がずたずたに、やられたそうだ。これで
はさすがのテクニックとナノマシンでも治しようがないし、ハンターにはなれない・・・
こんなケースもあるし、副作用がかなり後になって出ることもあるので、お嬢は俺を心配
してるのだ。また反対に、ナノマシンが通常以上に、身体に馴染む場合もある。人はナノ
マシンが身体に馴染むと、ナノマシンに他の自分の身体の器官同様、命令を送る事ができ
る。この命令を送る事を別のいい方で”テクニックを使う”という。この”馴染んだ”以
上に、桁外れにナノマシンに馴染んだ人は、フォースへの道が開けたという事になる。余
談だがアンドロイド達はナノマシンが身体に馴染む事はあっても、テクニックを使用する
事はできない。自分の身体の機関への信号と、人類外が造ったナノマシンの信号は質が違
うらしく、ナノマシンは今の技術を総動員してもその殆どがアンノーウンに包まれている
からだ。
「ありがとうよ、お嬢。まっ、副作用出たとしても、なんとかなるだろうよ」
そう言って、俺はにやりとする。お嬢はがくりと肩を落とし、姐さんは苦笑している。
「じゃ、この先も、何とかしてよね」
お嬢の冷めた声に、俺は現状を思い出す。
今俺達が居るのはオンラインタイムのアルティメット地区、フィールド”洞窟”の一番
奥、洞窟のボスへのトランスポーターの前だ。
「ベリーハードまでは、デ・ロル・レとよんでいましたが・・・」
歴戦を重ねた姐さんが、さすがに眉をひそめて、心配そうにする。アルティメット地区
の洞窟は、姐さんやお嬢も、初めてなのだ。初アタックでボスの前まで、洞窟の最深部ま
で来れただけでも大したモノだと思うのだが。
「可能ならボスのデーターも持ち帰る事、よ」
心配そうな姐さんとは違って、いつものままのお嬢。
お嬢が言った事は俺達が属する、パイオニア2のハンターズギルドの、規則の一つだ。
可能なら。
ここまで来るのに大きなダメージを受けた者はないのに、このままパイオニア2に帰れ
ば、俺達を責める奴は居ないだろうが、チキン(臆病者)と笑われてしまうだろう。いや、
チキンと笑われてもここまでの、アルティ地区の洞窟捜索の困難さを考えれば、チームメ
ンバーの命を考えれば、お嬢が帰ろうと言っても、俺はアルを責めないだろう。
しかしお嬢は、その小さな身体に収まりきれないほどの闘志を。
凛とした視線を、トランスポーターの先に向けていた。
行くのですね、と姐さん。あれを、とお嬢。
姐さんはお嬢の言葉にうなずき、トランスポーターの中に、小さな人形を置く。
「お、姐さん、今日はどんなんだ?」
姐さんは、ほほほ、と笑っている。
置かれた人形・・・
「お嬢じゃないか?」
お嬢をそのまま、20cmほどに圧縮したそれは、その、なんだ。
「母星の、私達のカントリーでは、このくらいの子達を、小学生とよんでいましたわ」
・・・聞いたことがある。
何でも、バックを背中に背負って、通学するらしい。
そのバックに学校で使う物を何でも入れるそうで、俺は重心が背中にいくんじゃないか
歩きにくいんじゃないかと思うのだが、それが決まりだったらしい。しかし・・・
「赤いランドセルに、給食エプロン入れと縦笛。我ながら完璧ですわー」
白いシンプルな上着に、スパッツ。よく見ると右胸のネームプレートに、『ラグオル小
学校 第2学年2組 羽生アル』と書いてある。
「私はよしてって言ったでしょ、ルルー・・・」
どっと疲れたという表情で、お嬢。気持ちは判る。判るが・・・その、なんだ。
お嬢の尺度のままでスケールのみを落としたハズなのに、どうしてお嬢に小学生の格好
が似合うんだろうな? 事実は小説より奇なり、というところか?
「あらあら、まあまあ・・・ でも可愛くできてるでしょう? ね、ギルガンさん?」
いや、俺に話を振らないでほしいのだが、姐さん。
案の定、お嬢は睨む視線の先を、姐さんから俺に変えた。
「おいおい・・・」
俺のせいか、ええ、そうなのか〜?!
お嬢は俺を睨みつけたまま。俺は内心でため息を吐きつつ。
「はいはい、俺が悪ーぅございましたよ」
未だ、俺は睨まれたままだ。姐さんはというと、顔の前で手を合わせ、御免なさいねギ
ルガンさん、としている。俺はやれやれと思いながら。
「終わったら、俺のおごりだ」
お嬢はにらみ視線から、上目遣いに変えて。
「・・・チョコレートケーキ」
と、ぼそっと言った。
「へいへい・・・」
俺は肩をすくめつつ、ボス戦が終わったらつてをあたってみるかと思い、軍のつてでケ
ーキを入手できるか、それの難易度は今からのボス戦と、どちらが高いだろうかとか馬鹿
な事を思った。このときはまだ、俺は覚悟が足りなかったと、後から思い知った。
と、補足。お嬢の人形だが、これは立派な、俺達の仕事道具だ。
通常、ボスのテリトリーに続くトランスポーターは、その場に居合わせた人数を送り込
むとその機能を閉じてしまう。入っていったチームがボスを倒すか、ボスが返り討ちにす
るか、そうしないとトランスポーターは再び役を果たすことはない。つまりだ、応援や助
っ人を呼ぶことができないって事だ。そこでこの人形が役に立つ。この人形、名をダミー
ドールといい、トランスポーターに入るときの人数を1人分、余分に認識させる機能を持
つ。つまりはこの人形をトランスポーターに1つ置いておけば、1人救援が呼べるという
事だ。このダミードールはお嬢と姐さんが創ったオリジナルのツールで、ギルドには報告
していない。まっ、こんな小細工じみた事は、他のチームでもやっている事だ。が・・・
「お嬢、ダミードールが要るって事は」
「・・・ええ、ヤな予感がするのよ。外れてくれるといいのに」
こういう時のお嬢の予感は、気味が悪いほど中る。
姐さんは不安そうにお嬢を見ている。俺もお嬢の台詞の後半を祈りたい気分だった。
トランスポーターが送った先は、地下水脈に浮かぶ、筏だった。
ここまではバリーハード地区までの洞窟のバス、デ・ロル・レの時と同じだったが。
「筏のサイズが小さいわね」
「私達の行動範囲が小さくなりますわね」
「殴るも撃つも、避(よ)けるも避(さ)けるも逃げるも、し難いわけか」
「”逃げる”は却下よ、ギルガン」
へいへい。俺は肩を窄める。ちょいとしたジョークだろうに。
アルのお嬢は少し、生真面目すぎる面がある。側にルルーの姐さん、やんわりした人が
が居るから中和されているが。
「ま、アメリカンジョークって奴だ」
俺はHAHAHAと、いつものように笑う。
「・・・現状はアメリカも何も、無いでしょうに」
人種やカントリーの枠を超えてパイオニア2という巨大な移民宇宙船に乗ってきた先の
惑星ラグオル。そこで起こった謎の大爆発。先にテラフォーミングを行っていたパイオニ
ア1の人々の安否の調べるために降り立ったギルドメンバーの俺達。もう少し真面目にし
てよね、とでもお嬢は言いたいのだろう。
お嬢は昔ギルドで孤立していた頃、必要外の会話を人と交わさなかったせいか、ちょっ
とした会話でも、一言一言が非常に気になるらしい。一時期それでいざこざが起きていた
が、最近は抑えるすでを知ったのか、それなりにチーム以外の奴とも会話している。が、
見知ったチームメイトには気安さも手伝うのか、今のように昔のように、人の台詞に突っ
込む事がある。それが俺には嬉しくもあり、また逆に感じるときもあり。嬉しくも思うし
うっとうしくも思う。複雑な心境だ。
「・・・! 二人とも、来ましたわ!」
姐さんの台詞に振り返れば、筏と併走する何か。水面を割り、その一部だけ水面より出
たのを見ても、
「アル家の近所の公園の、ペンギン大王くらいの大きさだな・・・」
「あの大きさでも残念ながらギルガン、貴男では中に入って遊べないわね」
「アルなら入れそうですわ。ヴィジュアルメモリー、持ってるべきでしたわ〜」
軽口をたたき合う。自分の、数倍の大きさのエネミーを相手にするんだ、負の部分はで
きるだけ除いてしまうにかぎる。
「来る!」
小山のようなそれ、ベリーハード区域まではデ・ロル・レと呼んでいたモノ、その身体
水面から出ている所々が光り、無数の光球が生まれる。それが徐々に大きくなり、俺の身
長と直径がそう差がないまでになる・・・って、まて!! デ・ロル・レも同じ攻撃をし
てきたが、桁が違う!
「嘘でしょう?!」
さすがの姐さんも声を上げる。ただ、
「2人とも伏せて!」
お嬢の判断に素直に応じる俺と姐さん。立ったままでは何発喰らうか解ったものじゃな
い。なら筏に伏せて、1〜2発を喰らうのは覚悟して、やり過ごした方がいい。
3人合わしたように立ち上がり、姐さんがレスタを唱えようとしたとき、俺はまた、奴
が同じ攻撃をしてきたのに気づいた。伏せるにももう攻撃に耐えるほどの体力はないし、
だからって避けが可能な光球の数ではない。
「ルルー、ギルガン、私の順でレスタコンボ!」
だからお嬢はレスタのタイミングをずらして唱え、つねに回復できるようにかつ1人で
唱える時のレスタの隙を無くす為レスタをコンボし、それを繰り返し、奴の光球攻撃をや
り過ごす・・・つぅ! いくらダメージはレスタでつねに回復されるとしても、痛覚を誤
魔化す事はできない。だからといって痛さを気にするあまりレスタの詠唱のタイミングを
変えてしまえば、俺だけでなく、お嬢と姐さんをも危険にさらしてしまう。それは2人に
も同じ事で、俺達はホンの数秒間、痛みに耐えながらレスタを唱え続けた。その間は秒単
位でなく、分単位の長さに感じた。
「ふ、ふぅ・・・ ようやく止まりやがったか」
「2人とも、TPの残量は?」
「私はまだまだいけます。ギルガンさんは・・・?」
俺は悪態を付いているのに、2人はもう次の手に移っている。これが経験、ハンターズ
としての差なんだろう。2人はまだ、闘いが序盤であると感じているのか。
「俺も大丈夫だ。しかし、どうする?」
「・・・そうですね、今はおそらく、同じ攻撃する為の”溜め”の時間だと思います」
「なんでそんなんが、判るんだ?」
「辺りのナノマシンの数が急に減りましたから」
体内にナノマシンを射れ、ナノマシンとの馴染み、相性が抜群に良い奴はフォースにな
れる。そしてそのフォースが経験を積めば、テラフォーミングの時に作業用として大気中
にばらまいたナノマシンの量を、大雑把とはいえ、機器を使わずに量る事ができるのだ。
「ナノマシンを体内に吸収して、その分を上乗せして攻撃してるのね。攻撃が激しいは
ずだわ」
お嬢の言葉を考える。つまりナノマシンを身体に入れて、攻撃機能の補助なり加速装置
に見立てる・・・
「それって、俺達が常にしている、シフタ状態って事じゃないか?」
「そういうことね」「よくできました」
俺の言葉に、2人も同意で返す。
「ザルアで落とせねぇのか?」
「ザルアは互いに、物理的に接触する攻撃にしか、効果しません」
そうだった・・・ ザルアはシフタの反テクニックで、攻撃力の低下がその効果なんだ
が、姐さんが言ったような欠点がある。どうする・・・? 今の、奴が溜めに入っている
ときに対抗策を考えないと、
「ギルガン、これを使って」
お嬢が胸の辺りに縫い付けているアイテムバックから2丁の銃を取りだし、俺に投げで
寄こす。いやこの銃の場合、2丁で一対、一つの銃というべきで、それを通称マシンガン
系と言い、この銃の名はH&25ジャスティスという。この銃を持った者に正義を与える、
いやこの銃を持った者が正義と、詠われ恐れられた、名銃である。
「ジャスティスの、隠しモードは知ってる?」
・・・! お嬢の言葉に驚く。最近の銃は全くのノーメンテナンスでも問題なく使える
ほど精巧に出来ている。下手に手入れしようと張らしてしまうと、素人では元に戻せない
ほどだ。だから普通は布で拭くくらいの手入れしかしないのだが、その程度ではジャステ
ィスの隠しモードには気づかない。つまりはお嬢、レンジャーでも特に銃を好きな奴しか
しない、銃をばらして手入れをやっているという事だ。
「それで、奴の光球の相殺、もしくは進路変更を行うわ」
相殺とは同じ2つの攻撃力を、攻撃のベクトルを全く逆からぶつければ、互いの攻撃力
が失われる現象だ。
「光球はおそらくフォトン。だからジャスティスでも相殺は可能なはずよ」
たしかにジャスティスから発射される弾はフォトン弾だが、例えば、ミサイルとミサイ
ルがぶつかって爆発するのは想像できる。しかしフォトン同士、光のエネルギー体同士が
ぶつかりあっての相殺は可能なのか?
「フォースに、セイバーの訓練を志願しているレンジャーは、何方かしら?」
・・・そうだった。俺、姐さんとセイバーを合わしたり弾いたり、してるじゃねぇか。
姉さんを見ると苦笑している。その訓練、俺の連戦連敗中なのだ、ちっ。
しかし、だ・・・ 相殺には、同じ攻撃力という、条件がある。俺が、筏を並んで泳い
でいる、水面から出ただけでも馬鹿でかい、奴と同じ攻撃力を・・・
俺はジャスティスの銃底の蓋を開けようとした。このとき、これしか無いという道具が
ある。女性が髪をとめるときに使うピン留めだ。それが目の前に差し出される。
「使ってよ」
お嬢だ。お嬢も自分のピン留めで、俺がしているようにジャスティスの銃底の蓋を開け、
中のジャンパースイッチをピン留めで弄ったに違いない。
「ねえ、聞いていい? ギルガンは、誰のピン留めを使ったの?」
「・・・はぁ?」
そのときの俺は、自分でもこの上ないほど、へっぽこな声だったと思う。
お嬢は俺の声に、腹を抱えて笑っている。ち、情けねぇぜ、俺。
「ごめんジョークよ、さっきの仕返し・・・ギルガン、貴男なら頼めるわ。お願いね」
・・・はは。こりゃ、やられたぜ。
チームリーダーに頼まれて、引き下がるほど腰抜けなのか、俺?
・・・ははは。
そのリーダーはアル、お嬢だぞ。その強さに、俺が惚れた女だぞ。
HAHAHA!
奴の方が攻撃力が高い? そんな事は判っている。判っているがお嬢が可能と言ったん
だ、やれるさ。
「HAーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーHAHAHA!!
まかせなっ! こんな事は朝飯前!!」
俺はジャスティスのトリガーリングに指をかけ、ジャスティスをくるくると回し、回転
を止めるのと同時に、ジャスティスを構えてみせた。
「お嬢曰くならっ! 朝ご飯前の、バケツパフェだーーーーーーーーーーーぜっ!!」
そう言ってにやりと笑う。
甘いモノは別腹を地でいくお嬢は俺の言葉に、また拗ねた。姐さんはいつものように笑
って見守ってくれている。これだ、いつもの俺達だ。
『・・・!』
3人が同時に、奴が攻撃再開したのに気づいた。
「私とルルーがサポートするわ。ギルガン、思い切りやって!」
「おうよ!」「はいっ!」
俺は隠しモードがオンになったジャスティスのトリガーを1回弾く。一発、フォトン弾
が発射された。普通の銃ならこれが正常なのだが、マシンガン系の銃はこれでは異常なの
だ。マシンガン系の銃は1回トリガー弾くたびに3発のフォトン弾が発射される。しかし
裏モードのジャスティスは1発しかでない。これではマシンガン系の”攻撃力の低さを弾
数で補う”という長所が無くなってしまう。3コンボ攻撃するのに3回トリガー弾けばい
いのと、3×3で9回トリガー弾く必要があるの、どちらが良い銃だろうか?
しかし、こう考えればどうだろうか。3コンボ内で9の対象物を撃てる銃。それにレン
ジャーの早撃ちの腕が重なったら? ジャスティス裏モードの欠点、単位時間に対する攻
撃機会の少なさは解消できないか? 他の銃の3コンボ分の攻撃がたった1コンボで可能
になるジャスティスの裏モード。しかもジャスティスはマシンガン系だから2丁分の攻撃
機会があるわけだ。奴の光球の数を相殺するなら、まさにジャスティスの裏モードはうっ
てつけだ。短時間でこんな事をひらめく。さすが、お嬢だぜ。
「HAHA!」
右、目線上5m。左、目線下3m。それぞれ水平に向かっている光球。
「HAHAHA!」
右、目線右斜めから円弧を描く。左、俺の90度真横から光球。
「HAHAHAHAHAHA!!」
もう、狙いを定めて撃つ感覚がしない。目に入ってくるのを指さしている感覚。
それでもちゃんと奴の光球に当たり、相殺できている。
おそらくこのジャスティス、フォトンが奴のフォトンに似ているのだろう。アルのお嬢
に聞くなり鑑定屋に再鑑定してもらえば、洞窟のエネミーによく利くと結果が出るはずだ。
「HAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!」
笑いが止まらない。テンションがべらぼうに高い証拠だ。
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA・・・ぉぉぉおおお!!!!」
しくじった。俺の真正面に飛んできた最後の1発、やけにでかい、奴の光球。
「つぅ! ちぃっ!!」
持っていたジャスティスがオーバーヒートを起こしていた。それだけ相殺した光球の数
が多かったという事だが。俺の手はジャスティスのオーバーヒートにより、軽いやけどを
負っていた。銃を持てる手ではなかった。レスタを唱えればいけるだろうが、その暇を目
の前に迫った光球は許してくれそうにない。こいつはぁ喰らうぜ。痛てぇだろうな・・・
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
高笑いは、絶叫に変わっていた。もう、当たる。3,2,1,ゼ・・・
「ゾンデ!(雷よ、奔れ!)」
姐さんのテクニック、ゾンデが俺の、文字通り目の前に迫った光球を相殺する。
ゾンデは狙いを定める時間が不要で、およそ視界に入った、その瞬間に撃ち放つ事が出
来、しかも狙いが外れる事がない、レンジャー泣かせの、命中率100%を誇るテクニッ
クだ。銃で狙って撃つ暇がないと判断した、かつ姐さんのテクニックの、攻撃力の高さを
踏まえた選択だ。
「ナイスだ、姐さんっ!!」
俺は姐さんの方に向き、右手の親指を突き出す。姐さんも片手を頬にあて微笑みながら、
小さくぴっと、親指を立てた。