「ナイスだ、姐さんっ!!」
 俺は姐さんの方に向き、右手の親指を突き出す。姐さんも片手を頬にあて微笑みながら、
小さくぴっと、親指を立てた。



   洞窟の果ての死闘! 二章 『絶望』



 俺達が溜め息つく間もなく。
 どおぉぉぉぉん・・・
 3度目の光球攻撃も不発に終わり、ついに奴が筏の上に、その身体を乗り上げてきた。
 ベリーハード地区までの洞窟のボス、デ・ロル・レの時同様、この時が俺達の攻撃の
チャンスだ。
 「シフタ!(フォースあれ!)」
 「デバンド!(エアよ、我らが盾になれ!)」
 「ジェルン!(エアよ、可の者の戒めとなれ!)」
 「ザルア!(鎧よ、無きモノとなれ!)」
 立て続けにルルーの姐さんの攻撃補助テクが、効果を示していく。体内のナノマシン
を極めた者、フォースの姐さんの使うテクの効果は大きく、腕の筋肉が倍ほども膨れ上
がった気がするぜ。
 「いくよっ!」
 お嬢、ハニュエールのアルが、自分の身長の1.5倍の長さを持つピックを片手に、
奴に近づく。近づき狭間にピックを奴の胴体めがけて薙ぎ、返し刃でまた薙ぐ。奴の身
体に、お嬢が描いたピックの切り傷が、無数に刻まれていく。
 レイマーの俺は最前線のお嬢より、それより少し後ろに居る姐さんより、さらに後ろ
に居る。女2人を前に出して男が後ろなんて、など考えるのは、よほど自分の実力を知
らない、馬鹿な男だ。マスタークラスを越えたハニュエールのお嬢が一番エネミーにダ
メージを与えられる上に、武器自体の攻撃力が高い、接近戦用の武器を装備している。
姐さんは三人の中でも一番レベルが高く、フォマールというクラスの特徴通りに、マス
タークラスのハンターに近い攻撃力と最高クラスのテクニックを使う事ができる。いざ
となればお嬢同様、前線に立つための、そのポジションだ。俺まだ、アルティメット地
区のエネミーに対しては、お嬢と姐さんの2人の加勢どころか、枷にしかならない戦力
でしかない。それならばお嬢や姐さんの攻撃の合間に自分の攻撃を当て仰け反らせ、エ
ネミーに攻撃チャンスを与えないようにした方が、結果的にはチームのためになるのだ。
 さすがに目の前の奴のような巨体相手では、仰け反らせるための攻撃なんて誰も出来
はしないが、今のように確実にダメージを与えたい時は、いつものコンビネーションが
ベスト・・・お嬢?
 「お嬢!」「何っ?!」
 お嬢が変だ。声にも表情にも、苛立ちというか、焦ってるように見える。
 「振りがデカくなってるぜ」
 ピックのような、大きく降るタイプの武器は、力任せに大きく振っても意味がない。
右から左へ、左から右へ、攻撃を移すときは必ず、武器のスピードを殺し、ゼロにしな
くてはならない。大きく降ると武器のスピードが増しゼロにしにくく、また次の攻撃へ
の移行と加速も遅れる。これが大きな隙となる。今のお嬢の攻撃モーションはまさに、
こういう状態だ。
 「と、ありがと、ギルガン」
 一声かけたところで、またお嬢はいつものような、隙の少ない攻撃に戻した。
 「アル、どうしたのですか?」
 ラファイエの合間に、ルルーの姐さんもアルのお嬢に声をかける。
 「あまり、ピックが、利いて、ないみたいなのよ」
 お嬢もピックを振りつつ、返す。
 姐さんの攻撃補助で強まった、お嬢のピックですら、奴に有効打を与えていない・・・
 どうする・・・?
 さっきのアルの様子は、これが原因だったか。
    ・
    ・
    ・
 「ギルガン! そろそろよ、準備して!」
 お嬢の声に、はっと我に返る。
 考える事に没頭して、心ここにあらず、機械的に身体が動いていたらしい。
 とにかく。
 今は奴の攻撃に備える事だ。

 奴は何も、こっちの攻撃を一方的に喰らうために、筏に乗り上げるのではない。
 筏に乗り上げる事により、その長く、まるで巨大な槍のような足で、こちらを攻撃で
きるのだ。足の部分だけで3mはあるだろう、それを大きく上に振りかざし、凄まじい
スピードで振り落とす。そんなのを脳天に喰らえば、どんな高レベルのハンターでも即
死は間違えない。この一撃必殺の攻撃のために、奴は筏に乗り上げるのだ。
 ただ、今までのベリーハード地区までのボス、デ・ロル・レの場合、足を振り落とす
動作に入ってしまえば攻撃対象を変える事ができない。だからデ・ロル・レの足が上が
り、振り落とすのを見た後に移動すれば、割と楽に回避できる攻撃なのだ。目の前の奴
は、今までの攻撃の激しさを除けば、攻撃手段はデ・ロル・レと同じなので、足による
攻撃も同じではないかという、お嬢の読みだろう。

 俺達は一度攻撃を止め、奴の足の動きに注目する。
 奴の長い足が上がっていき・・・落ちてきた!
 俺達は適当に1ステップ、大股で一歩分、元居た場所からずれる。これでかわせるは
ずなのだが。

 だぁぁぁん。
 奴の脚が振り落とされた場所は、俺達3人が立っている場所の、ちょうど真ん中だった。

 おかしい。
 いくら回避できるとはいえ、デ・ロル・レや奴の足が上がり、落ちてきて筏に触れる
までは5秒もないほどの時間だ。だから奴の動きを見て動き始める俺達は一歩分しか移
動できず、奴の脚が落ちてくるのは俺かお嬢か姐さんか、誰かの側に落ちてくるハズな
んだが。
 が、奴は、2撃3撃目も同じ場所に、足を振り落とした。
 そして、4撃目も・・・まさかっ!
 「なんて頭がキレる奴!」
 お嬢が4撃目を防ごうと、4撃目が振り落とされるだろうポイントに、ダッシュする。
 しかし。

 どばぁぁぁん・・・
 俺達の真ん中、ちょうど筏の真ん中を付衝いた奴の足は、筏を破壊するのに成功した。

 俺は高く、筏の残骸と共に、飛ばされた。
 今までのデ・ロル・レ戦の、数多くのハンターズギルドに届けられたどの報告見ても、
筏を破壊されたという事は、無かったはずだ。激流の地下水路、果たしてアーマー着た
ままで流れに逆らえるか。その上に奴だ。俺はこの時、正直、絶望した。


 続く。


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 次回予告。
 「・・・羽?」
 勝利を誘う、女神。
 「これはっ!」
 勝利を導く、武器。
 「刃っ!」
 勝利を呼ぶ、攻撃。
 金色(こがねいろ)のフォトンが、ハンターズに勝機を与える。

 英雄は、一人じゃない。




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