アルティメット地区の、洞窟のボスとの戦闘。
武器による攻撃では有効打を与える事が出来ず、ボスの攻撃をしのぐのが精一杯の俺
達、ハニュエールのアルとフォマールのルルー、そしてレイマーの俺。ボスの攻撃は俺
達から、俺達が乗っている筏に移り、そして筏は壊されてしまった。地下水路の水流に
飲み込まれる寸ででルルーの姐さんのラバータによる氷の筏を足がかりにしたが、俺達
が窮地に立っているのにかわりはなかった。
洞窟の果ての死闘! 四章 『救世主』
おおおぉおおおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおお・・・
「なに、これ・・・」
お嬢、アルの声が掠れている。
アルの手の中にある武器、 S武器のフォトンが黄金色の炎と歓喜の声を、挙げていた。
お嬢は困惑してるが、俺には覚えがある。
お嬢が持っているS武器の状態は、かつて俺がヴァリスタを手に取った時に似てる。
俺は銃一つで、世の中を渡ってきた。
軍に入隊した時から除隊するまで、そしてハンターズでレンジャーを選んでから今ま
で、ずっと銃を握っていた。だからいろんな銃を触ったが、その中でもヴァリスタは格
別だった。腰のホルスターからの抜き易さ、構えたときの銃の重さとバランス、撃った
ときの重心移動、どれもが抜群に取り扱いやすく制しやすく、その上標準も合わせ易く
攻撃力も高いと、他の銃を使ったときの『こうだったらいいのによ』とか感じるのを全
て取り込んだ、夢や想像の産物ような銃だった。俺は初めてアルのお嬢からヴァリスタ
を渡されたとき、ヴァリスタの良さを直感的に感じ取り、あまりのヴァリスタの名銃ぶ
りに感情が高ぶり「おおお」と叫んでしまい、お嬢や姐さんに呆れられた。
性能がいい武器や道具には、持ち手や使い手を選ぶモノがある。
いいモノは、いい能力が合わさったとき、より高い性能を発揮できる。
姐さんに後で聞いた話だがお嬢が持ってるS武器は、ある人から貰ったそうだ。その
人にしろ姐さんにしろ、あまりのS武器の性能の高さ故に、S武器本来の性能を引き出
す事が出来なかった。おそらくこのS武器は生み出されて以来、自分に見合った使い手
に会えなかったのだろう。そして今、アルという、100レベルを超えマスターの域を
超えてもまだ成長を続けているハンターが装備し、ピックでさえ大きなダメージを与え
る事が出来なかったボスの足を、一刀両断できるほどの性能を発揮できた。それで歓喜
してるのだろう。
姐さんが以前に言っていた。「長く使われたり壊れなかったモノは、意志を持つので
すよ」と。うそくせぇと俺は思った。が、今自分の目の前で、轟々と炎を挙げているS
武器はどうだ? ただ振るうだけで人知外の性能を発揮するS武器だ、姐さんの言葉を
納得するしかない。
KYASYAAAAAA!
怒気を孕んだ音。ボスが、怒りを顕わにしている。
ボスの身体から次々と光球が生まれ、俺達に向けてカッ飛んでくる。
数、一つ一つの大きさ、俺がジャスティスで相殺した時とは、桁が外れて強力になっ
てやがる! やべぇ!
ビシャァァァァンッッッ!!!
やべぇと俺が思った次の瞬間、視界で白光が弾けた。
ギゾンデだ。
ギゾンテは簡単に言えば大量のゾンデを放つテクニックだが、そのあまりの数の多さ
に、俺の目には白光にしか映らなかったのだ。
他のテクニックの1.5倍ほども速く放つ事が出来る連射能力とどのテクニックも敵
わない弾速、正面のみのロックオン範囲だが複数に対して攻撃能力を持ち、攻撃力も高
いテクニック。特に25レベルより上のギゾンデは余剰エネルギーが火花となり、使い
手の辺りを漂うほどのテクニックだ。これを高レベルのフォースが使うとどうか?
「おいたする子には、お仕置きが必要ですわ・・・」
ボスに対し笑顔の姐さん。ボスの光球攻撃を、俺では手も足も出ないと思ったのを、
一撃のギゾンデで相殺してしまった。ったく、毎度ながら敵にしたくない人だぜ・・・
ぶぅん。
ボスの足が横に構えようと、バックスイングする。
お嬢はアイテムボックスからダガー系の片割れを持ち出し、ボスの足の”く”の字に
曲がってる中心めがけ投擲した。見事ボスの足に命中したが、今のダガーはフォトンの
色から見てブレイドダンス、お嬢愛用のなら高い属性付だろうが、今はそれを勿体ない
という場合じゃない。
「ギルガン、ブレイドダンスを中心にラファイエ! ルルーも出来る?!」
お嬢の指示。ラファイエは広範囲にいるエネミーにダメージを与えるテクニックだが、
実はテクニックの中心地が一番大きなダメージを与える事が出来る。ラファイエ唱える
時の目印の為に、お嬢はブレイドダンスを投げたのだ。
姐さんはお嬢に答えるまでもなく、もうラファイエの詠唱に入っている。俺も慌てて
詠唱する。
『ラファイエ!(炎よ、燃やし尽くせ!)』
三人のラファイエが重なる。誰かがタイミングとるまでもなく、まっ、これがチーム
というもんだぜ。
俺達のラファイエのピンポイント攻撃を受け、
どぼーん。
また一本、ボスの足が水没していく。
KKKKKKKYAAAAAAA!!!!
辺りの空気を振る分けるほどの怒気を吐き、ボスがまた横凪に足を振るってくる。
「テクニックは無理です!」
姐さんは立て続けて攻撃テクニックを唱えた為、今は足場のラバータ制御に専念して
る。ちぃ!
「ならっ! いくよっ!」
お嬢の言葉に、歓喜状態が収まっていたS武器がまた炎を挙げる。
ごおぉぉっ!
「はぁっ!」
ボスの足が立てる轟音と、お嬢の気合いが交差する。
どぼーん。
また一本、ボスの足が水没していく。
GGGGGGGGSYAAAAAAAAAAA!!!!!
ボスが、あまりの苦痛に、のたうち回っている。
「チャンス!」
お嬢がアイテムボックスから何やら大きめの銃、というよりも砲を取りだし、俺の方
に放った。
「パンツァーファーストよ。奴の口の中にたたき込んで!」
! こいつはまた、レア武器じゃねぇか!
これについては俺も話では聞いていたが、しかし俺には、
「エネルギーは残ってるから。貴方にも撃てるわ」
・・・! お嬢、あんた!
パンツァーファーストって武器は、単発のショット系武器だ。ショット系のくせに弾
は一発しかでないのだが、攻撃力が高い。また着弾した時ラファイエのような爆発を起
こす。その爆発を起こす為にエネルギーが必要で、この武器は使用者からそのエネルギー
を採る。だからレンジャーでもアンドロイドのレイキャストとレイキャシールしか使え
ないのだが、例外はある。戦闘状態にエネルギー採られちゃ使用者がたまらねぇから、
パンツァーファーストは使用者が静止している時やただ移動している時にエネルギーを
採取する。そしてエネルギーを溜めておくのだが、たまにエネルギーが溜まったまま、
パンツァーファーストが発見される事がある。そのときは生身のレンジャー、レイマー
の俺でも使えるわけだ。この事はハンターズの中でもレンジャーの極一部しか知らない
はずだが・・・お嬢の情報通ぶりには、感心するぜ・・・
ぐわ。
ボスが苦痛の絶叫のまま、大きく開いた口を俺達に向けた。
ベリーハード地区までの洞窟のボスはその巨大の体から光球を出して攻撃するが、そ
れ以上の威力を持つレーザーを、口から放つ事が出来た。その攻撃をするつもりなんだ
ろう。
「ギルガン、今よっ!」
お嬢に言われる間もなく、俺は腰だめに構えたパンツァーファーストのトリガーを引
いた。
どん・・・どぉぉぉん・・・・
ショット系らしく大きな反動を残し、パンツァーファーストの弾がボスの口の中に着
弾した。そして爆発!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
もはやなんと例えたらいいのか判らない絶叫をするボス。
「今! ギルガン、肩借りるわよっ!」
お嬢はボスがのたうち回ってる時、ちょうどボスの口が俺達の方を向いて低い位置に
なった時、自分の脚部にシフタをかけ、俺の肩を踏み台にし。
「お嬢?!」
ボスの口の中向けて、跳躍した。
ボスの口が閉じる。当然、お嬢が見えなくなる。
ボスの頭の部分が、まるで人が飲み物を飲んだ時の喉のように、ごくごくと動く。
お嬢を、飲み込んでやがる?!
「お、お嬢・・・
お嬢おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
お嬢おおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおぉおっっっっっ!!!!!」
「ギルガンッ! 落ち着きなさいっ!」
一喝。
姐さんだ。
姐さんからオレは、初めて呼び捨てされた。
それはどんな事より、俺に冷静さを取り戻らせた。
「・・・ギルガンさん。シフタをかけようとしてください」
シフタなどのテクニックはレベルが高くなるにつれ、対象が単体から複数になる。そ
してテクニックは通常空間にかけるモノで、その空間にいるモノ全部が対象となるのだ
が、それではエネミー相手にレスタやシフタをかける事になる。これじゃテクニックを
かけたらかえってマイナスになるので、対象空間からテクニックの影響を受けないモノ
を選択する事になる。この選択はテクニックの効果が大きいほど困難になり、それ故に
フォース以外はレベル15までのテクニックしか使えないのだ。
「! なにっ?!」
俺は姐さんに言われたようにシフタをかけようとした。シフタの範囲内に俺と姐さん、
そしてボスともう一体、シフタの効果範囲に入るモノが居るのに気づいた。
「・・・では、レーダーマップも見てください」
ハンターズ全員に配られる道具に、アイテムボックスと連絡端末、それとレーダーが
ある。このレーダーは自分が居る回りの地形のマップと、エネミーやハンターズが立っ
ている位置がマーカーで表示される。そのマーカーはエネミーとハンター達では色が違
うから、俺と姐さんは判る。じゃ、その側に表示されている、エネミーの色でもハンター
ズの色でもない、見た事ない色のマーカーはなんだ?
・・・! まさかっ?!
「そうです。レーダーは、アルとボスの座標が、重なっている事を示しています」
「という事は、お嬢はまだ健在って事か?」
「はい」
どっと、体中の力が抜けた。安心したのだ。
しかし何故、お嬢はこんな事を・・・?
「先ほどのブレイドダンスは、ラファイエを、ボスの体内に届くようにする為です」
そうか、ただの目印なら何も、愛用してる貴重な武器じゃなくてもいいわけか。ただ
ブレイドダンスクラスの武器じゃないと、ボスの身体に食い込ませる事が出来なかった
のか。ラファイエの三重かけだけで、ボスの足が切れたわけじゃなかったのか・・・
「いくらS武器があり、ボスの身体を攻撃できるといっても、どのくらい時間がかか
るか判りません。私がラバータの足場を展開できるのも無限でありませんし。
・・・自分の体のサイズとボスの大きさを考えて、アルはボスの体内から攻撃する
事を思いついたのでしょう」
・
・
・
「アル家の近所の公園の、ペンギン大王くらいの大きさだな・・・」
「あの大きさでも残念ながらギルガン、貴男では中に入って遊べないわね」
「アルなら入れそうですわ。ヴィジュアルメモリー、持ってるべきでしたわ〜」
・
・
・
はっ、と思い出した。ボスと初めて対面した時、こんな会話をしたんだった。
「私はアルがボスの体内に入った時、咄嗟にシフタを唱えたんです。
シフタが足にかかったままでは、攻撃にはシフタが働きませんし」
・・・俺はお嬢が飲み込まれた時、取り乱した。姐さんは攻撃の為に、お嬢にシフタ
をかけた。さっきの俺に対しての呼び捨ては『アルを信じなさい』という、姐さんの叱
咤だったのか。
「・・・すまねぇ、姐さん」
そう、俺が言っただけで全てを感じてくれたのか、いつもの笑顔で姐さんは答えてく
れた。
!
ボスの身体に、小さな穴が開いた。それに俺は気づいた。
次の瞬間、ボスの体内から金色の光がレーザーのようにまっすぐに延び、地下水路の
壁まで直線を引いた。その光の線はぐるりと一周、水面から垂直に延びているボスの身
体を中心にして、回った。
「折れろぉっ!」
こいつはお嬢の声だ!
どごぉ!
ボスの中から、何かを叩く音が聞こえた。光の線が一周した少し上くらいのボスの身
体が、中から叩かれたように膨らんだ。
ぐらり。
ボスの身体の線から上が、揺らいだ。
いや。
線から上が、折れた。
・・・なんてこったお嬢の奴、ボスの体内からボスを、ぶった切りやがった!
「ギルガン、受け取ってねっ!」
折れた部分が倒れ始め、その影からお嬢の声がする。
俺めがけ、お嬢が落ちてくる。
重力がある。
だから普通、軽いモノより重いモノが速く落ちる。今の場合、アルとぶった切られた
ボスの身体になる。当然、アルよりボスの方が速く落下するはずだが、アルの方が速く
落ちてきている。これはボスの身体を踏み切り台にして加速をつけ、ついでに脚部にシ
フタでもかければ、可能な事だろう・・・って、冷静に能書きたれれる場合じゃねぇ!
俺は慌てて腕にシフタをかけてから、両手を大きく広げ、アルを受け止める準備をし
た。
どがぁっ!
それでもお嬢を受け止める時の衝撃は両腕とも脱臼したと感じたほどで、それでも勢
いを停めれず、俺はお嬢を抱いたまま背中から、ラバータの床に激突し
「デバンド!(空気よ、衝撃を受け止める羽となれ!)」
そうになったが空気のクッションのおかげで、なんとか床に激突してダメージを受け
る事は回避できた。空気を動かす事により物理的なダメージの低減を狙うデバンドは、
姐さんくらいのフォースになれば、こんな使い方も出来るのだ。
「サンキュー、姐さ・・・」
という途中で、俺は目の前に、アルが斬ったボスの身体が落下してきた事に気づいた。
もう、何かをして回避する時間はないだろう。
このままいけばラバータの床はボスが落下してくる衝撃に耐えれず破壊されるか、も
し筏が保っても、筏とボスの身体に挟まれる俺達は、無事じゃないだろう。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?!」
俺は、せめてお嬢だけはと思い、お嬢をラバータの筏の上に置き、俺はお嬢の身体を
守るように覆い被さった。
「センセー! スポットラファイエ、アタック行きます!」
声が聞こえた。
高速船が水面を割って進む音も。
その声に、姐さんは「その手がありましたっ!」と、なにやらカジュシーズを激しく
振り回していつものテクニックより長い詠唱をして、
「私達はけして、負けませんっ!」
『スポット・ラファイエ!(全てを焼去せよ!)』
姐さんと誰かの事が重なり、
きゅんっ・・・
小さな、音がした。
俺はテクニックから背を向け、目を閉じているにもかかわらず、瞼の裏を閃光が染めた。
視力が回復すると、そこにはもう、落ちてきたはずのボスの身体が無かった。
お嬢が斬った以外のボスの身体は、沈んでいった。
こうしてアルティメット地区の洞窟のボスとの、闘いは終わった。
「あー、せっかくボクがギルドから高速船を借りて応援に来たのにっ!
ギルガンちゃんってば、アルちゃん押し倒してたし〜
船借りる時、言い訳とか、すごく苦労したんだよー」
・・・そういう事しか言えんのかい、このぼんぼん娘は。
ダミードール使って、強引に、わざわざボス戦に参加したのだろうに。
ぼんぼん娘ってのはこいつの見かけそのもので、頭に大きなぼんぼん着けている、何
ともまー、恥ずかしい格好してるハンターズギルドの一員だ。そして俺達のチームメイ
トでもある。名は千歳。まだマスターには達していないがアルティメット地区の探索が
許されているフォースで、アルと同じニューマンだから、フォニュエールという事にな
る。
「あらあら、まあまあ。ギルガンさんって結構大胆なんですね」
私も気をつけませんと、と千歳が乗っていた船に乗り換えたのでラバータの筏の制御
から解放されて、すっかりいつもの調子に戻った姐さんだ。その、世話好きのおばさん
が嬉しそうにしているような仕草、止めてくれ・・・
「千歳てめぇ、ちゃん付けは止せって言ってるだろうがよ。
姐さんも、さっきのはそう、だなぁ」
「じー(どきどき)」「じ〜(わくわく)」
二人ともとも、俺の発言に思いきり注目してやがるし。
「千歳や姐さんからそう見えたかもしれねぇが、こうするのが一番だと思って」
「ふーん。で、押し倒したんだ。でもボクは、場所は考えた方がいいと思うな」
「そうですねぇ、やはりきちんとお互いの気持ちを確信し合って。
それからお部屋が良いかと」
「うんうん、センセの言うとおりだよ。自分勝手はイケナイよ」
・・・千歳は姐さんを、センセと呼ぶ。なんでも姐さんのテクニックの使い方に感動
して、自分から姐さんに弟子入りを希望したらしい。それでセンセと呼んで姐さんに懐
いているんだが、どうも性格が似ているらしく、波長がよく姐さんと合う。つーか女二
人に対して、口で勝てる男はあまり居ないと思うが。
「・・・勘弁してくれ。ああやるのが、一番お嬢を守れると思ったんだ」
「はいはい、判りました。千歳さん、ギルガンさんが許してほしいそうですよ?」
「うん、センセが良いなら、ボクも良いよ」
へーへー、お許しいただき、至極恐縮でございます。
と、そういやさっきの、ボスを片づけたテクニックはなんだ?
「姐さん、さっきのスポット・ラファイエは?」
「えと、ギルガンちゃんはアルちゃんのように、見かけが幼くても好いっと。
メモメモ・・・」
「ギルガンさん、話題変更は、大変そうですね」
・・・マジでメモるな、千歳。そう、判ってるなら答えてくれ、姐さん。
「あれはかなり広いラファイエの効果範囲を、可能な限り縮めて、発動させるテクニ
ックです。効果範囲を縮めた分は、そのままテクニックの攻撃力を高める方に回り
ます」
「ボクだと、だいたい半径10mほどあるラファイエの効果範囲を、ちょうどさっき
のボスのサイズくらいまで、縮める事が出来るんだ」
「・・・半径10mなら直径で20m、さっきの折れたボスの身体は全長で5mくら
いか。縮めるサイズが25%くらいなら、与えるダメージは4倍になるのか?」
「ううん、普通のラファイエって、効果範囲にあるモノでも、効果を起こさないよう
に出来るよね? スポット・ラファイエはこれが、一人では出来ないんだよ。出来
ない分、普通のラファイエより大きなダメージを与える事が出来るんだけどね」
「あ・・・? ってさっき、俺や姐さんは、ボスの身体から5m以上離れていたよう
には感じなかったが? すげえ危ない橋渡ってたって事なのかよ?」
「そこで、私が千歳のスポット・ラファイエに介入して、効果範囲内の、効果対象外
の指定をするんです」
「だからスポット・ラファイエってテクニックは効果範囲にエネミーしか居ないか、
今みたく誰かがサポートしてくれるか、そんな時しか使えないの」
「他人のテクニック詠唱に介入する?
姐さんはいとも簡単に言ったが、そんな簡単な事じゃねぇだろ?
目隠ししたドライバーに指示して、車を動かすようなもんじゃないのか?
運転する方も指示を出す方も、大変だぜ・・・?
「ええ、ですから日頃から練習した同士でないと、うまくいかないでしょうね」
・・・なるほどな。
「うん? しかし千歳の話だと、効果範囲にエネミーが居ないなら、撃てるんだろ?
どうしてボスと戦ってる時、使わなかったんだ?」
「・・・はい。正直言えば、スポット・ラファイエの事は忘れていました。
それと、やはり効果対象の選択が出来ない状態で、高レベルのテクニック使うのは
危険です」
「それにいくらスポット・ラファイエだからって、ボスを倒せたかどうかは疑問だよ。
さっきはもうボスの死骸だったから、一撃で焼去出来たけど」
「今ギルガンさんが抱いてるアルが重いのは、アルが意識を失っているからです。
千歳さんが言っている事は、こういう事です」
なるほどなぁ。
姐さんや千歳の話を聞くと、自分でも何となく使っているテクニックの、奥深さを感
じる。
「・・・う」
と、お嬢が気が付いたか?
「・・・はにゅー」
がく、と。
どうもお嬢、まだ夢の中らしい。
「仕方ありませんわ。あと5%程、肌がボスの体液に犯されていたら、レスタでも回
復できません。アルは死んでいたはずなのです。
今は眠って、体力を回復させませんと」
万能に近い効果を示すレスタも、病気や、一気に臓器の80%を失った時、それに全
身の皮膚の80%以上失ったり火傷を負った時には、どうしようにもない。アルは危な
い状態だった。
「ん・・・ あ・・・ やだ」
そんな事を頬を染めて、自分の腕の中で呟かれると、いろいろとやばいんだがお嬢よ。
「あー、抱いているのを良い事にギルガンちゃん、アルちゃんの変なとこ触ってるんじゃ?!」
「抱いている、というより、抱っこしているの方が、正しいかもしれませんね」
ツッコミとボケが一緒に飛んでくる。いいコンビの師弟だぜ。
「わたしの・・・ ちょこれーとけーきー」
思わず、姐さんと千歳を顔を見合わし、苦笑する。
「もう、アルは大丈夫のようですね。
・・・チョコレートケーキ、大変でしょうけど、よろしくお願いしますね」
姐さんにふかぶかと頭を下げられる。
「ボクも手伝おっか?」
千歳も協力してくれるらしい。
たしかに甘い食べ物が規制されてるパイオニア2では大変かもしれないが、お嬢と約
束したしな。
まずはどこから当たってみるか? そんな事考えながらお嬢を見ると、
「お嬢、よだれ・・・」
俺達はまた、苦笑した。
おしまい。