第6話   狩猟者



「覚悟は・・・・・出来てますか?」
「はい」
ここはわたしが所属することになったギルド。
これから最終実践テストが行われることになっている。
今はそこのギルドのまとめ役であるシェス様の指導を受けているところ。
「最後の心得」を言い終わったシェス様はほうっとため息をつく。
「こういうの、慣れなくって」
そう言ってあはは、と笑った。
こういったら悪いけど、その仕草はとても可愛くて羨ましい。
わたしもシェス様みたいな大人になりたいな。
「ではあなたのお目付け役を紹介します。わたしについてきてください」
言って歩き出すシェス様の後をついていく。
わたし歩くのそんなに速い方じゃないけど、シェス様の歩みは緩やかだったから小走りで追うほどにはならない。
やがて一つの部屋に通された。
「お待たせしました」
中には一人の女の人がいた。
スリムな、でもラインがはっきりとわかる服からわかるのはメリハリのある身体だった。
すごく羨ましい。
足が細い。胸がある。ヒップラインも綺麗。おまけに美人。
それに引き替えわたしの身体は・・・・・・・やめよう。
考えてもこぼしてもどうにかなるものじゃないってことはわたしにだってわかってるんだし。
でも・・・・神様不公平。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
女の人は
「こちらがあなたの保護者になってくれるアズさんです」
アズさんはわたしをまじまじと見つめている。
これだけ美人の人に見つめられると・・・・・恥ずかしい。
だってわたしなんてどこにでもいるような何の特徴もない女の子だし。
「そしてこの子が」
シェスさんがわたしを紹介してくれる。
挨拶挨拶。
失礼があったらいけないもの。
「よ・・・よろひくお願いしましゅ!」
うわうわうわっ!
裏返ったおまけに噛んだ!
最悪最悪最悪―――――――――――――――っ!
恥ずかしさも手伝って思いっきり頭を下げた。
目いっぱい深々と。
そうでもしないと赤くなった顔を見られてしまいそうだから。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
うわうわうわ。
妙な気配。
最悪なファーストインプレッションに呆れたんだよきっと。
はうーまずいよ―――――――――――。
これからこの方にはここにいる間はずっとお世話にならなければいけないっていうのにー・・・
どうしよーどうしよー・・・どうやって汚名返上すればいいんだろう・・・・

むんず

へ?
両手でわたしの顔を掴まれる。

ぐい

持ち上げられる。

ずいっ

アズさんの顔がわたしの目の前に!
うわうわうわっ!睨まれてるわたしっっ!
でも・・・・・・本当綺麗・・・・・怖い顔でも・・・・綺麗だ・・・
頬が赤くなるのを感じる。
思わず見とれてしまう・・・・・
そんなわたしにアズさんは

もに

赤くなった頬を摘み・・・・・

むに―――――――――――――

と左右に・・・・痛い痛い痛いっっ!
「な!なななななななな・・・・・・・・!」
と、わたしは言ってるつもりだけど実際はそう聞こえてないのかも・・・
でも痛いー!
「ちょ、ちょっとアズさんっ!」
シェス様が慌てて止めに入ってくれる。
でもアズさんの手は中々わたしの頬から離れてはくれない。
「ひ、ひはいへふううううううううううううっっ!」
抗議の声も無視された。
わ、わたしが挨拶に失敗したのってそんなにひどいことなのお?
「あんたわ・・・あんたわあんたわあああっっ!」
こここここ怖すぎですよおおおおおおっっ!
痛さと怖さで涙が滲む。
「アズさんっ!この子泣いてますからやめてくださいっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たく・・・じっとしてろっていったのになんでのこのここんなところに来るわけよあんたは!」
唾を飛ばしながらようやく頬を開放してくれた・・・はうー、痛くて熱い・・・
「・・・・アズさんに何かしたの?」
シェス様がレスタをかけてからわたしに聞いた。
「お会いするのも初めてですよぉ・・・・」
嘘はない。本当に初めて会う人。
なのにどうして・・・・・これって新人に対する虐めなのかも・・・なら耐えないと。
「そんな感じじゃないですよ?
・・・とにかく紹介が途中でしたからちゃんと紹介しましょう」
むっとした顔で腕を組んでいるアズさんの前に立たされる・・・・ううっ、怖い。
「では改めて」
「改める必要なんてないわよ!」
怖いよぅ・・・でも!この程度で怯んだら漣に笑われる!耐えないと!
「・・・・そんなこと言わないで下さい。儀礼的なものですからちゃんとしないと私がルツ様に怒られてしまいます」
いいですね?と続けるシェス様に不承不承頷くアズさん。
「それではちゃんと紹介します。この子が今度最終試験を受けてもらうことになる玲奈」
「よ、よろしくお願いしますっ!」
こ、今度はちゃんと言えた・・・・
「そして彼女がこの地に派遣されたハンターのエース。故郷のアルゴルでは「狩猟者」というチームでもエースのアズさんです」

「「ええええええええええええええええええええええ?」」
なぜかわたしとアズさんの悲鳴がハモった。
「あなたがあのアルゴル最強のカウンターハンターチーム「狩猟者」の一人なんですかああああ?」
「あんたアッシュじゃなかったのおおおおおお?」



どうやらアズさんはわたしにそっくりな女の子を一人知っているらしく、その子と勘違いしていたようで。
後でひたすら謝られた(いい人だった・・・よかったぁ)。



それから1日。
いよいよ最終試験の日。
わたしは装甲に身を包む。
今回は初めてアルゴルの人以外の人とも一緒に行くことになる。
わたしが・・・・このレイキャストの中身の存在が知られないこと。悟られないこと。
それが最終試験。
準備は完了。
後はアズさんが連れてくるというハンターさんと共に戦うだけ。
ちょっとだけ緊張する。
そこにアズさんと・・・・・・・・
「あ」
見覚えのある人が・・・・わたしの前に現れた。
「紹介するよ。彼が今回の仲間で・・・・」
風が、吹いた。
「双月」

つづく





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