第7話   「初パーティー」



「・・・・よろしく」
ひどく疲れた、そんな顔。
全てを諦めているようにも思える、そんな顔だった。
でなければこんな顔、出来ないと思う。
『よろしくお願いします』
わたしの声はレイキャストの内部で自動的に男の人の声に変換されている。
「こいつ、まだ初心者だからちょっと手間かかるかもしれないけど面倒見てやって」
アズさんがわたしを双月さんに紹介してくれた。
「名前は・・・・・えっと・・・・・フォーレン」
ふぉ、ふぉーれんって!
「ちょ、ちょっとすみません」
双月さんに言ってわたしはアズさんを引っ張って部屋の隅に移動。
「な、なんだよいきなり」
「い、いくらなんでもそんな名前使わないで下さいよっ」
小声で叫ぶ。
「なんだよそりゃ」
アズさんはわけがわからないという顔をしている。
「だって、フォーレンって、あの「フォーレン」さんの名前から取ったものじゃない
んですかっ!?」
「フォーレン」という名はわたしたちアルゴルの民では特別な名前。
かつて1000年に一度起こった「ダークファルス」の復活を3人の英雄と共に倒し
た伝説のアンドロイドの名前。
こんなところで名前を出されたらアルゴルにいるアンドロイド崇拝者に殺されてしま
うと言ってもいいぐらいの名前なの!
だけどアズさんは全然気にしないであっさりとその名前を・・・・

「だから好都合なんじゃない。この地にいる奴でフォーレンなんて名前知ってるのい
ないでしょ」
「で、でもだからって・・・・」
「でももう無駄よ。あんたの名前今更違うなんて言えるはずもないし」
そ、そうだよね・・・・・・ふぅ・・・
この人結構意地悪だ・・・・・・・

「お待たせ。こいつ初めてだからね、ちょっと心構えを教えてやったのよ」
「・・・・・そうですか」
そっけない答え。
自分には関係のないことだから気にならないってことなのかも。
「本当そっけないねーあんたも」
アズさんも同じ気持ちだったみたい。
「ま、今更言うのも馬鹿らしいし、とっとといこっか」
「そうですね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
「も、もう行くんですか?」
きょとんとした顔をするアズさん。
「そりゃそうでしょ。それともあんたまさかメイト関連買ってないとかいうんじゃな
いでしょうね」
「そ、そんなことはないです」
けど、心の準備が出来てないんですけど・・・・・
「まさか心の準備がとか言うんじゃないでしょうね」
鋭い。
さすがは「狩猟者」の斬り込み隊長さん。
「実はそうだと言ったらどうします?」
双月さんに聞こえないように小声で聞く。
「終わった後で苛め倒す」
ひぐっ。
「そそそそっ!そんなことあるわけないじゃないですかっっ!」
「・・・・・・なら文句言わずとっとと行くよ」
「・・・・・はぁい」
「一応言っておくけど」
「はい?」
「双月の前でそんな口調使ったら変な目で見られると思われると思うので注意が必要
だと自分に言い聞かせておくように」
「あ、はい」
「・・・・・あたしの知り合いに女言葉で喋るレイキャストがいるなんて思わせない
ように・・・・思わせたら・・・・」
「きききき肝に銘じておきますううううっっ!」
ここここ恐いいいいいいいいっっ!




新人が一番多く足を踏み入れる地域。
そして、一番落ち着かせてくれる地域。
ここは・・・・風を感じられるから。
草や木が風に揺れている。
わたしは直接風に当たることは出来ないけれど、それを見ているだけでも落ち着く。
風が近くにいてくれるだけで。
「そろそろ出てくるからね」
アズさんがわたしに向けて言う。
緊張。
汗が身体に浮かぶのを感じる。
拭えないのが辛い。
と!

背後に何かの気配!
同時にぼこぼこと地面が盛り上がっていく!
「・・・・な!」
そこから獣が這い上がってくる!
「・・・ブーマぐらいであわあわ言うなって」
アズさんが呆れ気味に言った。
だって、まさかこんなところから・・・VRマシンにはこんなで方のパターンなかっ
たのに!
こ、攻撃・・・・!
か・・・からだ・・・がっ・・・緊張して・・・・・

その時。
目の前で起こったのは夢じゃないかって思えるほど、鮮やかだった。

3体のブーマ。
その脇を黒い影が光の線を描きながら走り抜けていった。
そして、
次の瞬間声をあげることなく崩れ落ち、土に返っていく・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・」
その影――――――――双月さんは何事もなかったかのように遠くを見て少しほつれ
た長い髪を掻きあげつつ、わたしの前に近付いてきて
「・・・・・大丈夫か?」
そう言った。
寂しそうな目、最初はそう思った。
今も変わらない、でも。
暖かいものを感じる。
身体の奥がじわっとなる。
涙腺が不意に緩んだ。
「あーこらこら!」
アズさんもやってくる。
「ちょっと双月!あんた何考えてるのよ!」
「・・・・・・・・・?」
「ここに今来ている目的は何?何だか覚えてる?」
「・・・・・・ああ、フォーレンの付き添いだったな」
「こいつに経験積ませなきゃなんないの!でなきゃ意味ないでしょうが!」
「・・・・・・・そうだったな」
「「・・・・・そうだったな」じゃないの!あんたが倒してどうするのよあんたが倒
して!」
「・・・・・・・すまん」
「気をつけなさい。いつもみたくこんなところで特攻かけられたらこいついつまで
経っても進歩なしになっちゃうんだから!」
・・・・・・・・・違うよ、アズさん。
双月さんはわたしを守ってくれたんだよ。
動けなかったわたしを、守ってくれたんだよ。
「あんたもよフォーレン!この程度で動けないようじゃハンターになる資格なんてな
いわ!帰りなさい!」
・・・・・・・・・・帰れない。
「・・・帰りません」
「なら今度は自分で何とかしなさいね、次はあたししばいてでも双月の動き止めるか
らね」
「・・・・・・おいおい」

帰れない。帰らない。
もう・・・・迷わない!


つづく





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