デジ絵本10 +結晶世界


やわらかな土の奥深くには、固い地盤の縞模様。
地中深く進むと世界はその姿を変える。
そこには白い手の結晶の子がひっそりと暮らす。


 苔の仄かな光が濡れた壁を人知れず照らすところ。
輝石の結晶は白い手によって創られてゆく。
天体の光の射さない暗い世界でも、
匂いと音の反響で、すべて手に取るように把握できるから
ここは美しく安全な別世界。


 太古の水の創った洞窟の迷路をくぐり、
若い火の流れに足を入れ、溶けた欠片を拾い、
金の鉱脈の冷たい手触りにそっと凭れる。


 小さな白い手の持ち主は微かな石の粒を揃え、
永い永い時間をかけて硬い結晶にして行く。
やがて地上に姿を現した結晶達が
黒い血で洗われようとも
けして姿を変えることの無いように。
   
  無骨な争いや、暗い嫉妬にも
けして曇る事の無いように。


 その硬く強く美しい結晶の閉じられた世界には、
誰も立ち入る事が出来ない。


結晶世界
 2003-02-28
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