空の王国
雲の上には、空の王国がある。
王国の住人は独りきり。
雲の王が住んでいる。
雲でできた城の、雲の階段を昇った、雲の王座についている。
柔らかな雲の長いマント。
美しいレースは、白い靄。
身を飾る宝石は、氷の粒
広い広い王国は、見上げるような雲の峰。
速い流れのような雲の川。
どこまでも続くまっすぐな、白い雲の道。
すべてが 王のもの。
王の髪は、時々の大気に合わせ色を変えていく。
眩しい白銀、
暗い灰色、
夕映えをうつすオレンジや赤――。
果てしもなく移りゆく王国に
たった二つだけ 変わらないものがある。
雲の王が持つ王冠に嵌め込まれた、雫型の宝石。
この石は王国の象徴で、
本当の王はこちらだというまことしやかな噂をもつ。
もう1つは王の瞳の色。
それは一面に立ち込めた曇天の
たった一部がひらけて
ほんの少し覗いた、
透き通るようなうすい空の青―。
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