デジ絵本144 +火の贈り物
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1 ある所に小さい生き物がいました。 生まれつき目があまり良くないため、 暗い世界に見ることのできるものは、”光”だけでした。 ずっと1人で、気持ちの良い岩陰の巣穴に住んでいました。 昼間はあたり一面が白く見えますが、 お日さまの光はあまりに強すぎて、 長く見ていると目を痛めました。 夜、辺りは真っ黒に沈みます。 星の光はあまりに遠く、離れすぎていました。 月の光だけが優しいのですが、夜毎姿を変えるため、 月が細くなるたびに心に影を落とします。 夏の夜、黄色い蛍の光のすじが横切るようになりました。 しかし蛍の光ははかなく、 手に取ると二度と光ることはありませんでした。 |
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2 ある日、枝に止まったおしゃべりな鴉たちの噂話に、 人が使うという”火”の話を聞きました。 「それはあたたかくて、美しく、消えることのない小さな火。」 1人きりの小さな生き物は、 火を思ってどんなものだろうかと考えました。 「もし火があればどんなに良い事だろう。」 とうとう他の事が考えられなくなるほど、 自分だけの火が欲しくなりました。 木の実や虫を食べる事も忘れて、 暗闇に浮かぶ自分だけの火を見つめていました。 雨がなく、乾燥した日が続いたある夜のこと、 近くの森に火の手があがりました。 小さなものは一目で、これが自分の欲しかったものだと分かりました 「ゆらゆら揺れて誘う、あたたかくて、美しくて、消えない火。」 |
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3 そして火を手に入れるために、急いで近づいて行きました。 周りには逃げ惑う生き物たちがいましたが、 小さい生き物は何も見えず、ただただ火を目指します。 やっと手に入れたと思って、手を差し出した途端、 鋭い痛みが走りました。 火に噛みつかれ拒否されたのだと思い、悲しくて悲しくて、 痛みも忘れてもっと近づこうとしました。 その時後ろに引き戻し、 火のついた腕に土をかけてくれた者がありました。 小さい生き物は訳もわからず、気を失ってしまいました。 目を覚ますと知らない匂いがします。 誰かの気配がして、腕には湿った土や、 きつい匂いの草の葉が巻かれていました。 なんとなく安心して、小さな生き物は動かずにいました。 |
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4 食べ物などを運んでくれながら、 その誰かは、通る声で話しかけてきました。 どうやら鴉たちに負けないくらいお喋りが好きな相手のようです。 しかしうるさいという感じでなく、風の音がするようなものでした。 小さなものが返事をしなくても、 また目があまり見えないことに気が付いても、 かまわず話しを続けました。 恐ろしい山火事が起こったけど、雨を呼んで火もおさまったし、 水場が潤ったことや、ツバメが巣立ってもう帰り支度を始めている事。 どれが火傷に良く効く草で、何処にどんな花が咲いたとか。 そんな話に耳を傾けているうちに、火傷も痛まなくなりました。 後は舐めていたらすっかり治ることでしょう。 でも小さい生き物は、もう誰かのお喋りが聞けなくなると思うと、 あまり嬉しくなかったのでした。 その日、声の主は思い出したように、 今度は自分の事について話し始めました。 |
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5 その誰かは”ハヤテ”というのでした。 そして、小さい生き物に名前がない事を知ると、びっくりして 「それじゃあ、これからなんて呼んだらいいのか困るね。」と言いました。 そうして小さな生き物に名前をつけて良いかと聞きました。 小さな生き物はどうして良いか分からず、黙っていました。 ハヤテはあいかわらず気にしないで、話し続けます。 「君は小さくて、きらきらした目をしているから、 ヒバナというのはどうだろう。」 小さな1人の生き物は「ヒバナ」と心の中で繰り返して見ました。 すると消えてしまったはずのこころの火が、 ぱっと灯ったのを感じました。 あたたかく、美しく、消えない小さい火です。 ”ヒバナ”はやっと自分だけの火を手に入れたのでした。 |
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6 それからのことは、あまりお話しすることはありません。 ハヤテはヒバナのところを度々訪れては、 またいろんな話を聞かせてくれました。 時にはヒバナの方から、匂いを頼りに出かけたりもします。 自分だけの火を手に入れたと思った、一人ぼっちだったヒバナは、 その火はけして1つきりではない、ということにも気付いたのでした。 お し ま い |