デジ絵本15 +風の手紙

故郷の空


 ある美しい山裾の村に、一人で暮らす女の人がいました。
近隣の人々と仲良く、元気で暮らしていましたが、
自分がすっかり年老いた事に気がつきました。

 彼女には1人息子がありましたが、都会へ出たまま、
どこにいるのか、どうしているのかわかりません。


 気持ちよく晴れた昼下がり、青い空を見上げて、
彼女は息子の無事を願わずにいられませんでした。
『どうしているだろうか、
苦しんではいないだろうか。
小さな村に戻らなくても良い、元気でいることさえわかれば…。』

 その時、昔なじみの西風が彼女を見ていました。
元気のないその様子に、
小さい小さいつむじ風をよび寄せました。

 『私は重たい雨雲を運ばなくてはならない。
どうか私の代わりに、彼女の願いを叶えてあげてくれないか。』

 小さなつむじ風は張切って街へと出かけました。
無限とも思える窓をのぞいてひとつひとつと探してまわりました。
たくさんの窓、たくさんの人の中から、
あるビルの一室にやっと彼女の息子を見つけました。


窓



 つむじ風の子は、息子の住む部屋の窓をそっと叩きました。
しかしその音は小さすぎて誰の耳にも届きません。
小さいつむじ風は、そこで力尽きてしまいました。

 春になって少し力を取り戻したつむじ風は、
村に咲いた花の、薄い花びらをひとひら届けました。
しかし、息子はそのことに気付く事はありませんでした。
そしてまた力尽きて、風の子はやっとの事で村へ戻りました。

 夏の日、暑い大気に力をつけたつむじ風は、
村中で鳴いている蝉の声を集めて、息子に届けました。
しかし彼が一瞬振り向いた時には、外の喧騒にかき消されてしまいました。


思い出



 やがて秋が来て、少し大きくなったつむじ風は、
村の山を彩る美しい紅葉の落ち葉をひと抱え、息子の住む街へ届けました。
しかし不意に飛びこんできた突風に、彼は窓を閉めてしまいました。

 窓を閉めた息子は、その足元に光るものをみつけました。
拾い上げてみると、それは小さなドングリでした。
風の子が抱えてきた木の葉の中に、1粒だけまぎれ込んでいたのです。
見つめていると彼の心に、
小さい頃の思い出が懐かしく浮かんできました。

 その夜、息子は久しぶりに母親にあてて短い手紙を書きました。
その手紙は郵便配達員が遠い故郷に運びました。
届けられた1通の手紙に喜ぶ母親の顔を見て、
西風も小さいつむじ風も、大層うれしく思いました。

                               

届けられた手紙
                               お し ま い

2003-10-10

戻る 次へ