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「マイスター選びは試食から」と
思い、リストと地図を見比べながら
近所のマイスターのいるパン屋を探しました。
夜が明けない早朝から仕事になるわけですから、
家の近所がいいと思ったので、自転車で10分以内で通える範囲を探したところ、
4軒のマイスターパン屋さんをみつけました。
早速翌朝、うち一軒にパンを買いに行ったところ、店内にはマイスターの資格証明書が飾ってありました。
今までだって手作りっぽいパン屋さんでパンを買っていたのですが、
マイスター印のパン屋さんのパンはさすがに美味しいような気がしました。
最後に訪ねてみたお店には、資格証明書のほかにも沢山の賞状が飾ってあって、
売り子のおばさんは笑顔でとても感じの良い人でした。
そこで買った黒パン、翌朝朝食で食べてみて「美味しい!」と本当に思いました。
あのパン屋さんに弟子入りしよう!そう思ったのです。
註:
ドイツを訪れたことのある方ならお分かりとは思いますが、
日本のコンビニくらいの割合で町の中には本当に沢山のパン屋さんがあるのです。
しかし、その大部分は大量生産のチェーンのパン屋さんです。
ドイツではマイスターの資格を持つ人でなければパン屋を経営することが許されないので、
チェーンを展開する大元はマイスターということになります。
その他には、実際にはマイスターは存在しないものの、
店を開業する許可をマイスターから借りて営業しているお店もあります。
組合では、パン屋に電話しろって言われたけど・・・
最初のコンタクトを電話でするのは、私にとってはかなり勇気のいること。
マイスターが電話を取るとは思えないし、
第一印象を売り子さんに邪魔されてはやってられない。
と思ったので、手紙を書いて持って行くことにしました。
マイスターへ手紙を書きました。
私がどうしてパン作りを習いたいのか、習った後どうしたいのか、
ドイツでの仕事の経験はないけど学生時代二夏、東ドイツのお城修復のボランティアをしたことを書いて、
チームワークで仕事ができるということをアピールしました。あいにく、翌朝マイスターは早く帰ってしまっていて、会うことはできませんでしたが、
売り子のおばさんの対応からして、門前払いにはならないような気がしました。
月曜日にまたおいでと言われました。
最初はやっぱり断られました。
「やっぱり」というのは、なんとなく日本のドラマのイメージで、
「弟子入りとは簡単なものではない」と思っていたのと、私が外国人で女だからです。
もう他に弟子がいるから、というのが理由でした。
「毎年3ヶ月くらい日本のパンの会社からの研修生を受け入れているところを知っているから、そこに電話をしてあげようか」
と言ってくれました。
はじめこそ、カルチャースクールを探していた私ですが、その時には「やるからには、ドイツ人と同じ修業がしたい」
と考えが変わっていましたので、
物静かなマイスターに熱意の眼差しで、とりあえず無駄なことは言わず、ポツリポツリとここでやりたいという旨を伝えました。
そのうち、マイスターは更衣室を見せてくれて、言いました。
「うちは男の子しかいないから着替える場所がないよ」
「皆より早く出勤します。」
別にマイスターは何も言わず、こんどは工房を見るか?
と聞いてきました。オーブンや大きな冷凍庫を見せてくれました。
工房では、2人の18歳くらいの男の子が発酵した生地を計っていました。
私 : 「弟子は2人ですか?」
マイスター : 「そうだよ。」
私 : 「9月からの弟子はもう採らないんですよね」
マイスター : 「100パーセント決めたわけじゃないよ。」
私は、まだチャンスはあるんだ!と思いました。
「弟子にするかどうか、一度試しに働かせてもらえませんか?」
勇気を出して、もう一度お願いしました。
マイスターは、7月の中ごろから交代で弟子が夏休みを取るから
その時に来るか?と言ってくれました。
それから、服装のこと、自転車置き場のことを教えてくれて、
最後に材料倉庫を見せてくれました。
そして、大きな小麦粉の袋を指して、
「こんな重いものも運んだりするんだよ。」
私は、「大丈夫、大丈夫!20キロの花の土を買った時も、
家までかついで帰りましたぁ!ほらぁ」と言って、
よっこらしょっ!と持ち上げようとしましたが、アレレ?重たーい。
二度目の挑戦でなんとか少し浮き上がりました。
マイスターも、「まあ、荷車もあるし必要量だけ運べばいいから・・・」
と言ってふたりで顔を見合わせて笑いました。
店先でお別れするとき、マイスターが売り物の大きなケーキを
二切れ包むように売り子の人に指示をして、
「こんどは、あなたが作るんだよ。これはパン作りよりおもしろいよ」
と言って、私にくれました。
私は、ケーキよりパンの方が楽しみなんだけどな、と思いましたが、
とりあえず、
「やったー!!!第一関門、突破だ。」と意気揚揚とおうちへ帰るのでした。
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