この曲も聴きましょう! Part1

 クラシックをこれから聴こうという方には毒になるかもしれません。クラシックを長く聴いておられる方にはよくわかっていただけるでしょう。
 私が日本の学校教育、特に音楽教育に対する不満というのは、「画一的な印象を強制する」という一点に尽きます。
 でも、それはおかしい。例え作曲家が意図したことを明確にしようとも、その曲が天から与えられた瞬間の印象を他人に強制できることは出来ますまい。「田園」に焦燥感や不安感を感じ、「運命」に安らぎを感じたとしても何の問題があるのでしょうか。
 そこまでいかなくても、音楽を素直に受け取り、心から楽しめる自由さを大事にして欲しいと思います。第一、音楽を「教える」などという考えが間違っているのではないでしょうか。

 さてさて、話が重くならないうちに、私がこれまで聴いてきた曲の中で、あまりよく知られていない名曲を御紹介させて下さい。またほんの参考程度に、私がどういうシチュエーションで聴くのかということも併記します。もちろん、こういう時に聴いて下さいと強制するつもりは毛頭ありません。どう感じるかは、皆さんが決めることですから。



 家具の音楽 エリック・サティ

 大体、この題名、「家具の音楽」とはなんでしょうか。サティは、今でいえばBGMとしての音楽、「意識せず聞き流して楽しむ音楽」というものを求めていたようです。この曲も、もともとコンサートの幕間にステージの片隅でそっと演奏していたのですが、気づいた聴衆が席に戻ってきてしまうので、たいそう憤慨したとか。

 この曲の基本は、リフレインによる刷込み効果でしょう。短いメロディあるいはモチーフを蜿々と同じように繰り返すものです。終わりはありません。多分、ちょうどよい頃合いを見計らって終わればよいのでしょう。ヨハン・シュトラウスの「常動曲」という同様の曲がありますが、それはまだ変化に富んだ曲を繰り返すから良いものの、「家具の音楽」は短い曲の繰り返しなのでさらに単純極まります。
 それでもいつのまにか繰り返しの魔力に浸ってしまう、なんとも不可思議な効果をもつ曲です。 

 この曲は、あてのない考え事をするのにいいかも。


 コーカサスの風景 イッポリトフ・イワーノフ

 静かにさざめく響きの中で、クラリネットのゆるやかな歩みが聞こえてきます。この曲は日本から遥かに遠いコーカサス地方の風景を表したものでありながら、同じアジアだからでしょうか、何とは無しに懐かしく身を委ねることが出来るのです。

 全体的に、歌謡的なのんびりした調子です。終曲は「酋長の行進」なのですが、なんともゆったりと始まります。それが終盤には素晴らしいクライマックスに達します。この辺の盛り上げ方は、『アッピア街道の松』(by レスピーギ)にも通じるでしょうか。もっともレスピーギほど大上段にはかまえてはいませんけれど。
 実は、私はこの曲をNHKの「名曲アルバム」で初めて知ったのです。改めて全曲を聴くのにCDを探しましたが、なかなか見つかりませんでした。買ったのは最近のことです。 

 この曲は、日曜日の昼間にでも芝生に寝転がって聴きましょうか。


 寄港地 イベール

 これは船での航海の印象を交響詩にまとめたものだとか。ローマからパレルモ、チュニスからネフタ、そしてアンダルシアまでの異国情緒に満ちた変化に富んだ曲想です。

 ローマからパレルモ。弦のトレモロの中をフルートが低音で物憂い夜明けの表情を演出します。やがて朝になり活気を帯びます。総じて爽やかな印象です。

 チュニスからネフタ。がらっと変わってアラビア風の変拍子ののんびりとした曲です。4拍子と3拍子が1小節ごとに入れ替わりながら、オーボエがとぼけた旋律を歌います。リズムもどこか間が抜けた感じです。この曲は間奏曲のようなもので短く終わり、輝かしい終曲につなぎます。

 アンダルシア。木管の律動に低音から弦が走り出します。これまで鬱積していた思いを断ちきるような素晴らしい曲。中間部で少し瞑想風になりますが、やがてはオーケストラが大いに吼えながら凄まじいコーダへと向かいます。

 全部で15分位なものですが目先が変わって面白いです。ちょっとした仕事の合間にでも気晴らしに聴きましょうか。



フランスの山人の歌による交響曲 ダンディ

 名前からしてお洒落ですな。ダンディと来ましたよ。しかしてこの曲もなかなかの出来栄えではないでしょうか。

 低音からクラリネットがクレッシェンドで山人の歌を導き出します。イングリッシュホルンのなんとも田園的なメロディ。軽く確保されるとアルペジョのさざめきの中から低音弦によりメインテーマが現れてきます。しかしこの交響曲自体が一つの変奏曲のようなもので、この主題もさきのメロディを変奏したものなのです。ロ長調で現れるまことに美しい旋律も汽車の窓辺の風景に他なりません。

 第二楽章もピアノと弦楽のささやくような会話で始まります。この主題も先の山人の歌の変奏に他なりません。中間部の哀しげなメロディは次のフィナーレの伏線になっています。

 第三楽章は、ピアノの急速な変奏リズムに乗って、管楽器が民謡風な息の長いメロディーを吹き上げます。これが勢いよく確保されると、端正な律動になり、やがて第二楽章の中間部のメロディを激しく変奏してゆきます。それからはこれまでの楽章を回想しながら自由に変奏が続き、最後は強烈な和音で終息します。

 洒落ていながら、どこか泥臭いこの曲。ちょっと元気になりたいときにどうぞ。


いかがでしょうか。皆さんの御存知の曲はありましたか。クラシックもまだまだ隠れた名曲があるでしょう。今度是非お試し下さい。

 また機会がありましたら第二弾も試みてみたいと思います。どうぞお楽しみに。