またしても我が社で品質事故が起こってしまった。
毎度の事ではあるが、作業者がマニュアルの一つをすっ飛ばしてしまった事が原因であった。
こう聞くと、それは作業者の怠慢であり、手抜きであると思われるだろう。
確かにそれは否定出来ないし、マニュアル通りの作業さえしていれば防げた事故であったのは事実だ。
しかし私に言わせれば、そのマニュアル自体の複雑さに問題があると思っている。
我が社は数十社という得意先をかかえている。
得意先から受注した製品を加工して商品にするのが我が社の仕事である。
得意先は各社各々の環境で製品を作成してくるのだが、昨今のコンピュータというものは
総じて、早い周期で新しいバージョンのコンピュータを流通させる。
我が社も出来る限り、それに対応出来るように環境を整えているのだが、
それぞれの製品を作成したハードとソフトの組み合わせまでを完全に一致させる事は不可能である。
経済的な理由が筆頭に挙げられるが、それだけではない。
理由を挙げればキリがないので割愛するが、はっきり言ってムリなのである。
しかし、何とかしなくてはならない。
そこで技術スタッフが検証に検証を重ねて、複雑なマニュアルを作る事になるのだが、
そのマニュアルが数十社ある得意先の一つ一つに対して、それぞれ異なるのだ。
これでは当然、現場は大混乱する。
そこに輪をかけて、このマニュアル通りに作業をしても、拾い切れない問題点をも現場でサポートしなければならないのだから、
事故など減ろう筈もないのである。
先日起きたJRの事故を思い出して欲しい。
会社は無茶なダイヤを組んで、運転士に多大なプレッシャーを与えて置きながら、
ミスを起こそうものなら、厳しい懲罰が待っているというではないか。
まるで人間はミスなど起こさない生き物であり、ミスを起こすのは運転士の怠慢であるのだから、
罰を受けるのは当然である。といった態度である。
もちろん、ミスに対する教育というか処置は必要だろう。(罰といってもいいが)
だが、そもそもミスを起こしづらいシステムを構築することの方が重要であり、会社としての当然の責務である。
そこの所があの会社。解っていなかったのである。
(解っていたとして、やらなかったのであれば、なお罪は重い)
話を我が社に戻す。
我々現場の人間は、会社に替わって、ミスを起こしづらいシステムを構築した。
確かに技術スタッフが作り上げたシステムより、額面上は精度が劣る部分もあるが、極めてシンプルで解り易い。
人間が行う事を考えれば、余程効果が見込めるシステムだ。
(本当に苦労して作り上げた)
JRの例で言えば、ATS(自動列車停止装置)に当たるシステムと考えて貰って良い。
これを会社に示して、安全を強化するように訴えた。
答えはNOである。
現場ごときの考えなど、受け入れる気はないといった態度であった。
結局、とられた対策はというと、只でさえ複雑な従来のマニュアルを更に複雑化しただけである。
このマニュアルに対して、個人個人がさらに真剣な態度で望めといった、およそ馬鹿馬鹿しい結論だった。
私が思うに、JRでも現場の運転士と会社側でこのようなやり取りは行われていたのだと思う。
会社というものは、事故が表面化して大きなニュースとなり、マスコミにでも叩かれなければ解らないのであろうか。
恐らく日本中の会社の多くは、こんなものなのだろう。
まだまだ、JRのような悲惨な出来事は後を絶たない。
そんな気がしてならない。
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