人間同士のやりとりの中で、正しく情報を得るとか、正しく認識をするというのは、本当に難しいものだなとつくづく思った。
というのは、先日、ある小説がベストセラーになり100万部を突破したという話を私の同僚としていた時の事だ。
その方は非常に頭の回転が速く、仕事もできる女性だ。仮にT子さんとしておこう。
T子さんは、どこぞの営業の課長さんだか、部長さんだか(要はエリート)に著者印税の計算方法を教えて貰ったと言ってきた。
その計算方法とは、【売り上げ部数×本の値段×0.8%】なのだそうだ。
この小説に当てはめて見ると、【100万部×1000円×0.8%】となる。
金額を求めるために、%を数値に置き換えてやらねばならない。
そこで、その課長だか部長だか(面倒なのでK部長とする)は0.8%を0.08と置き換えた(そうだ)。
【100万部×1000円×0.08=8000万円】となる。
T子さんは、私にそう報告してくれた。
勘の良い方はお気づきだろうが、私は勘が鈍いので、漠然と『そうなのかぁ』と頷いてしまった。
しかし、そんな面倒な計算をする必要も無いなという事には気付いて、頭の中でもっと単純に計算して見た。
0.8%というのは半端で計算しづらい(私は馬鹿なので)と思い1%で考えて見る。
1000円の1%は10円であり、それが100万部なのだから1000万円。
0.8%に戻せば800万円となる。
『あれれ?』
私はその単純な計算方法をT子さんに示してやり、間違いを指摘した。
ところが、T子さん。頭からご立腹である。
「私はK部長から、聞いてきたのだから間違いない」と言い張るのだ。
困った私は「いや、でも・・・・・・・・」と繰り返し説明した。
しかし、T子さん。譲らない、譲らない。
かくしてT子さん。何度もK部長の計算公式を盾にして、私の言う事を否定し続けたのであった。
めでたし。めでたし・・・・・・・・・・・・・・・・・
勘の良い方、はい、どうぞ?
そう、そうなのですよ。先ほど、半端な数字は解り辛いと言いましたが、K部長もこのトリック?に引っかかっていたのです。
1%は0.01というのは、直ぐに思いつくのに、0.8%となると、途端に間違い易くなる。
簡単な計算ではある筈なのに、人間の思考というのは不完全なのですね。
思いつきで、0.08としてしまった。
実際には0.01より小さいのだから、小数点以下の桁は増える訳です。つまり0.008が正解です。
これを公式に当てはめれば、もちろん正しく800万円となります。
K部長が間違っていたにも関わらず、何故こんなすれ違いが起こったかと言えば、
それは恐らくK部長に対する信頼ということなのでしょう。
逆に言えば私には信頼がないと・・・・・・・・・・・・・・・・
誰が書いたか解らない文章を読むとき、人は冷静にそれに対して判断を下す事が出来る。
もちろん、無条件に信用してしまう人も中には居るかもしれないが、
少なくとも、書かれた文章に対してのみ信用云々を言う。
だが、面と向かって話すとなると、途端に複雑さを帯びてくる。
その人との人間関係、社会的地位、しゃべり方や態度、ファッションやルックス。
様々な要素と照らし合わせて、信頼関係というのが生まれてくる。
つまり、会話する前に判断が下されているのだ。
全てがそうだとは言わないが、ほとんどの場合『戦う前に決着がついている』。
上記の例で言えば、信頼の度合いでK部長に遥かに劣る(であろう)私がどんなに説得力を持って説明したとしても、無駄なのである。
信用とか信頼といったものが、いかに怖いか、理解して頂けただろうか。(同時に私の信頼の無さも)
やはり、人間。正しく認識するためには自分で考えないと駄目である。
考えるという事は、疑う事とも言える。
疑うという言葉を使いたくなければ、単に『考える』と言えば良い。
裸の王様になりたくなければ、日々疑う(考える)ことをしなければ、いけないのだ。
最後に『疑う精神』にのっとり、本の印税の計算方法を調べて見た。以下に記す。
一般的な印税の計算です。多少の誤差はあります。
【定価1000円の本の場合】
※出版社からの卸値 : 700円(70%)
著者印税 : 100円(10%)
紙代 : 60円(6%)
写植・製版代 : 120円(12%)
製幀料・イラスト料・写真撮影料 : 20円(2%)
印刷・製本代 : 70円(7%)
出版社の取り分 : 330円(33%)
取次ぎ会社の取り分 : 80円(8%)
書店の取り分 : 220円(22%)
【補足事項】
写植・製版代は固定費用です。
印刷部数が増えると1部あたりの単価は安くなります。
増刷を繰り返すほど、利益率が上がります。
何処をどう間違えたのやら・・・・・・・・・な結果である。
※上記の小説の場合1億円となる
戻る