2002年度もよろしく!

何も芸はできないけど、特別に短編を書こう!


年の暮れの深夜。残念ながら夜空には星どころか月すら見えなかった。 代わりに街灯がポツリポツリと夜の街を照らしている。
この街路は、車もほとんど通らず、既にこの時間――11時30分を少し過ぎた所か――、 点滅信号に変わっているといった主用道路では無い路地だ。
この辺りの人家同士はかなりの間隔を開けて離れているので、 家と家の間は静まり返り、殺伐とした雰囲気を与える。
そう言った所に男が二人歩いていた。 防寒着で着膨れした男とあまり防寒着を着ていないせいで、寒そうにしている男。 二人の年は同じぐらいだろう。若い男達だ。
「今年も良い事無かったな・・・」
ボソリと寒そうにしている男が一言。
「そう落ち込まずに・・・。きっと来年は良い事有るよ」
こちらは根が楽天家なのか、それともただの慰めか。
「去年もそのセリフ聞いた。確かその前の年も聞いた気がするけど・・・はぁ」
寒そうにしている男は溜息をついた後に、こう続けた。
「毎年毎年、良い事がなくなっていく。運が悪くなっていく気が・・・」
「気のせいだよ!世の中は世紀末不幸の中に――」
「今年から新世紀に入っているぞ・・・。」
もっともだ。しかし、世紀末不幸なる考えは何処から沸いて出るやら。
エッとした顔で着膨れした男が「そうだった。今年から21世紀だったんだ」
どうも思想が一年遅れの気がしないでもない。
「確か、去年はそんな事言ってなかったのにな。今年言っても意味無いぞ」
寒そうにしている男が、体を暖める為にランニングの格好をしながら言った。
「残念!じゃあ、新世紀不幸だね」
そういう問題か、と言った表情で寒そうにしている男がちょっと馬鹿にした目で彼を見た。
「ってことは・・・」
思わせぶりに楽天家思想だと思われる彼が口を開く。
「やっぱり来年も良い事無いね」
ガクッと、寒そうにしている男がよろめいた。多少は期待があったようだ。
「さっきの慰めは撤回かよ!あーあ、ホントに良い事無いな・・・」
「まあ、気を落とさずに。いつかは幸運も巡って来るよ」
一応、慰めの言葉なのだろうが、その『いつか』が問題なのだ。
「取り敢えず、俺が死ぬまでにはその『いつか』は、一回は巡って来るよなぁ・・・」
どうやら、とことん悲観的で不幸な男らしい・・・。
「ほら、何とかって言うでしょ。幸運は天下の回りものだって」
そりゃあ、『金』の間違いだ!哀れむような目で彼を見て、例の不幸な男は長い溜息を付いた。
「はぁー・・・。いいな、楽天家は。オマエ、将来は絶対来年度の景気の予想とかそういう類の仕事はするなよ」
絶対に当たりっこ無いぞ、とはさすがに言わなかったが。
「そんなに落ち込まずに。せめて明るく来年を迎えようよ」
根っからの楽天家と明るい性格の持ち主のようだ。
寒そうにしている男がふと時計を見る。知らないうちに明日、つまり、来年が間近になっていた。
何やら考えた挙句、彼が出した答えは、
「そうだね。せめて明るい話題の内に来年になって欲しいな」
と、明るい話題を考えてみる・・・。今年有った事・・・。
一つの結論が出た。それは――。
「はぁー・・・。やっぱり良い事無いから、明るい話題なんて無いよ」
「え、無いの?宝くじ当たったとか、賞状貰ったとか、新しい友達できたとか・・・」
「そりゃ、宝くじは当たらないけど、年賀状のお年玉なら当たったし、賞状は・・・無いか、新しい友達も増えたし・・・」
「なら良い事有ったじゃん。楽しい事も有ったでしょ」
確かに・・・と再考する彼。良い事よりも、悪い事の方が衝撃が大きすぎて記憶に残りにくいのかもしれない。
でも・・・。確かに、良い事は有った。小さい事だけど、たくさん有った。
「そうだ・・・。良い事は考えれば考えれるだけ出てくる。例え小さな喜びでも、それは良い事に変わりないないね」
悲観的になっていた彼は新たな事を身近な友から学んだ気がした。
「そうそう。そうやって考えれば、来年も良い事有るかなって思うでしょ?」
彼は深く頷いた。タイミングよく、時計の時報がピッと鳴った。
「ハッピーバースデー・・・じゃなかった。えーと」
「ハッピーニューイヤーだろ?新年明けましておめでとうございます」
着膨れした彼は自分の頭を軽く叩きながら、ペロッと舌を出して、
「そうだったね。新年明けましておめでとう!今年もたくさん良い事有りますように!」
と願った。本当に良い事が――小さくても大きくても――たくさん有る一年になりますように。


2001年の悪い事は2001年に置き去りにして2002年を生きましょうね。
皆さんの一年が良い年で有りますように&今年も当HPをよろしく御願いします。m_ _m
By FATE