フライマン、読書で対話!
町田康 「夫婦茶碗」(新潮文庫)

元パンクロッカー、町田康さんが書いた作品。全体的にシュールな感じの話です。怠惰で貧乏で神経質で、妄想癖な男が、メルヘンを書いて生計を立てていこうと奮闘するというストーリーなのですが、現実の中でメルヘンが暴走し、自分が書こうとしていた物語の主人公と自分自身を混同し混乱していってしまうというもの。非凡な発想力が一人歩きをはじめ、卵の配置で神経をすり減らし、自分の息子に「靴」と名づけ、ポルノ映画の女を妻と勘違いし、冷蔵庫を壊して、最後は一人自宅で茶柱を立てようと夫婦茶碗に茶を注ぎまくるという奇妙な終わり方です。まったく意味がわかりませんでした。しかし笑わせてくれます。馬鹿馬鹿しさもそこまでくるともはや美しいです。
奥山文弥 「ソルトウォーターフィッシング・マニュアル」(山と渓谷社)

ルアーとフライでやるソルトウォーターフィッシングが紹介されています。マニュアルというだけあって内容は多岐に渡り、たくさんの図と写真でわかりやすく紹介しています。私のソルトウォーター入門書でもあります。
漁港で狙うスズキから、海外のボーン・フィッシュ、トレバリーまで、また道具もロッド・リーダーからマニアックなものまであらゆることをルアーとフライそれぞれの観点からていねいに解説してあります。とても参考になります。ソルトをやろうと思っている人はコレを読め!!
町田康 「くっすん大黒」(文春文庫)

仕事もせず、酒ばかり呑み、だらけきった毎日を送っていた男が、自宅に置いてある、バランスが悪いのかいつのまにか倒れてへらへら笑っている大黒を不快に思い、今日こそ捨ててこます、と大黒を捨てにいくという話。笑えます。登場人物がとりあえず変人です。古着屋の「チャァミィ」やタコ芸術家の「上田」など。さらにそれを取り巻く人間が狂人的にこれらの人物を愛しています。アツイ取り巻きと主人公の冷静なツッコミ。ホントに笑えます。
町田康 「屈辱ポンチ」(文春文庫)

元パンクロッカーが、見たことも聞いたことも、そいつがなにをしたかもしらない相手に嫌がらせをし、破滅に陥れようとする話。「跋丸」という男に復讐を誓う「浜崎」にかわって、「帆一」とともに嫌がらせをたくらむ主人公は、無言電話をかけまくる、白紙ファックスを100枚送りつける、肉を送りつける、などするものの、まったく効果がありません。跋丸の苦手なマスを自宅へ届けようとするのですが・・・。町田節炸裂の作品。志同じくして上京してきた跋丸(バツマル)に復讐をたくらむ帆一(ハンイチ)とか、そんなことっていいのかしら、というような展開。最後も謎な終わり方です。同書に収録されている「けものがれ、俺らの猿と」もおもしろいです。
町田康 「へらへらぼっちゃん」(講談社文庫)

町田康の雑記というかエッセーというか、よくわからないんですが、日記があったり映画評が入ってたり、いろいろ。でも著者の考え方がよくわかる作品でした。”遊んで暮らす”とはどういうことか、とか、ビートとして見る世界とか、結構興味深い話があったりします。また、塗装業とか卵並べとか、池に落ちたら池中の亀が集まってきて気色悪かったとかそういう実体験も書かれてたりします。これは小説の元ネタでしょうね。全体的にギャクタッチなので結構親しみやすい本だと思います。
町田康 「浄土」

町田康の短編集です。数編入っていますが、どれも興味深い内容でしたね〜!!私のお気に入りは「どぶさらえ」と「あぱぱ踊り」です。「どぶさらえ」は、町内を流れるどぶの流れが淀み、それを町内会で村八分にあった主人公が一人でどぶさらえをする話なのですが、適当な世間話ばかりして一向に議題の核心に迫ろうとしない町内会議の、”言語の通じない狂騒の異人種”のなかでただ一人、主人公を気の毒に思っている”はず”の富久縞さんに裏切られてしまうという内容です。はっきりいって自意識過剰や妄想にもホドというものがあるのですが、期待通りに推移しない現実や、味方がいると思い込みたい心理、及びそれが発展した心理などがうまく描かれていて素晴らしかったです。「あぱぱ踊り」は、ひょんなことから”俺はすごいんですよ”と、具体性に乏しい”すごさ”をアピールする柄月という男と”エケメ”という店を探すことになった主人公の話が書かれています。しかし人間はみんなどこかで、自分がすごい人物なんだと思い込みたいものだと思うので、そこらへんの心理描写が巧みでした。にしても柄月はカッコいいですね。センスがなさすぎるのです。”俺は月光の中に立つスター”には大爆笑しました。
町田康 「きれぎれ」

町田康の芥川賞受賞作品です。ランパブ通いが趣味の絵描きの”俺”が、母親が死んで会社も潰れてしまい、家も貧乏だというその状況を打開するために、大嫌いな吉原に金を借りに行くのですが、キャンバスに描いた空想と現実がしだいに溶け合い、抽象的な世界に陥り狂騒とするのですが、最後はスッキリまとまります。ちょっと難解な読み物でしたし、町田節がちょっと欠けていたのが残念ですが、面白かったですね。相変わらず。本作品のほかに「人生の聖」が収録されています。そっちもおもしろいです。
町田康 「パンク侍、切られて候」

町田康の長編時代劇です。ストーリーは、牢人の掛十之進が、黒和藩士に、”腹ふり党”という新興宗教の危険性を説き、自分が腹ふり党対策についてエキスパートであるかのように装い、騙して、藩に仕官するのですが、一向に腹ふり党はやってこず、掛十之進と同様、腹ふり党の危険性を唱えていた内藤帯刀が失脚を恐れてネオ腹ふり党をでっちあげるのですが、ネオ腹ふり党の党首の茶山半郎に裏切られ、藩内は混沌としてしまうというものです。喋れる猿の大臼延珍や、エスパーマンのおさむなどが登場し、最後は人間と猿が入り乱れて爆発、空から奇妙な生き物が降ってきたり、地面が飛んでいったりと、段々ワケのわからないことになっていくのですが、最後は綺麗にまとまります。世界は嘘であって、現実なのだ、世界の前提を問わない私はパンク侍、という内容のものだと思います。ちょっと他の町田康作品とは雰囲気が違いますが、面白いです。読み出したら止まりません。
A・ヘミングウェイ 「老人と海」

最高でした。ストーリーは、キューバの孤独な老漁師のサンチャゴが、沖へ出てカジキをかけ、3日もカジキと死闘を繰り広げた後、ついにカジキを釣り上げ、港へ帰ろうとするのですが、帰路、サメに釣り上げたカジキが襲われ、最後は骨だけになってしまう、というものです。出来事が中心に描写されているのですが、出来事のなかに、老人がカジキを釣りながら見た夢や、カジキと航海をともにする中、段々と沸いてくるカジキへの愛情、港にいて自分を待っている少年への愛情といった感情が感じられます。星と風だけで方角を知り、大海原へ小さな船で出て行く老人の強さ、最後までサメを相手に戦うのですが、カジキの肉はすべてなくなり、それでも港へ骨だけを持って帰る。そんな老人を支える少年。すべてに深い悲哀があり、しかしさっぱりとしていました。感動しました。