『メタルブラック』が発売された頃、私は対戦格闘ゲームに夢中だった。シューティングは
息抜きでプレイするだけのもので、まともにプレイしたくなる対象ではなかった。
『メタルブラック』も、発売後すぐに行きつけのゲーセンに入荷されたが、私はほとんどプレイ
しなかった。いや、私だけでなく、あの頃はゲーセンに来ている連中のほとんどが格闘ゲームの
対戦に夢中で、他のジャンルは息抜きでしかなかったものだ。そういう時代の中で
『メタルブラック』は、稼動後1年もしないうちに行きつけのゲーセンから消えていったと
記憶している。
『メタルブラック』発売から2年ほど経った頃、私は格闘ゲームの対戦をやる気が失せて、
駅から少し離れたニチイ
(百貨店)のゲームコーナーに入り浸るようになっていた。そのゲームコーナーには格闘
ゲームの対戦台がなかったので、駅前のゲーセンのような殺伐とした空気が一切なく、まったりと
ゲームを楽しむには最適な空間だった。そこで私は『メタルブラック』と再会した。
ニチイで久し振りに『メタルブラック』をプレイしてみて、かつてゲームでは味わった
ことのないような心地良さを私は
覚えた。ニチイのゲームコーナーは、駅前のゲーセンと違って客が少ないせいか、自分の
プレイしているゲームの音が良く聴こえる環境だった。駅前のゲーセンではほとんど聴こえ
なかった『メタルブラック』の曲も、実に鮮明に聴こえてきた。その曲が、ゲーム内の演出や
ステージ構成等と絶妙に絡み合い、えも言われぬ味わいを醸し出していたのである。
ニチイで『メタルブラック』をプレイしている時の私は、「芸術作品」を鑑賞している時と
同じような気分になっていたのかもしれない。通常ゲームをプレイしている時は、上手く
いくと嬉しくて、上手くいかないと悔しいのだが、あの頃『メタルブラック』をプレイしていた
時は、上手くいっても上手くいかなくても、とにかく心地良かった。ただ「『メタルブラック』
をプレイしている時間」が経過すること、それが心地良かった。
だいぶ後になって『メタルブラック』の稼ぎプレイもやるようになったが、このゲームの
稼ぎはそれほど面白くない。いや、冷静に考えてみると、そもそも『メタルブラック』は
ゲームとしてはそれほど
面白くないと思う。複雑なギミックが随所に用意されているわけではなく、
緊張感たっぷりの敵の猛攻があるわけでもなく、漫然とした
「憶えゲー」なので、先へ進むための「攻略する楽しさ」はそれほど味わえない。だから、
ゲームにそういうものしか求めていない人間には、このゲームの魅力は解りづらいかもしれない。
「攻略したい」という気持ちをほどほどにして、曲や演出の魅力が存分に味わえる環境で
プレイすれば、心地良い「『メタルブラック』の時間」は、きっと訪れる。
2006.9.22記
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