数年前のある日、あるゲーセンで私が『怒首領蜂大往生ブラックレーベル』
をプレイしている時に、右後方から頻りに『餓狼伝説SPECIAL』(シングル台)
の舞の「やられ声」
が聴こえてきた。「やられ声」が時々聴こえてくるのなら実に当り前のゲーセン
の日常的一場面だが、この時は明らかにおかしかった。とにかく「やられ声」ばかり聴こえて
くるのである。
延々と「アンッ…アンッ…アンッ…アンッ…」という悩ましい声がするので、私は右後方で
何が起こっているのか気になってしまって自分のゲームに集中できず、すぐに
ゲームオーバーになった。立ち上がって『餓狼伝説SPECIAL』の方を見てみると、
スーツ姿の若いサラリーマン風の男がプレイしていた。画面上では、ベアが舞に
ベアハッグ(抱きしめて締めつける技)を決めていた。
数回締めつけられて舞が離れるとベアが近付き、またベアハッグを
決めた。そしてまた離れるとまた近付きベアハッグ。延々とベアハッグ。・・・ってゆーか、
なんだそれ?最初、私はそのリーマン風の男がCPU戦をししているのだと
思ったのだが、画面上ではベアのステージで無抵抗の舞がベアハッグを決められていた。
それに、よく見ると1P、2P共にスコア表示がある。
以上の事実から導き出される結論は、彼が1人で2P対戦をしているということだった。
しばらくベアハッグを続けた後、舞が負けそうになると、彼は舞(2P)を操作し、
ベア(1P)に一方的な攻撃を浴びせて瞬殺。間髪をいれずにコインを投入して1Pで乱入した。
彼が次に選んだローレンスは、対戦が始まるとすぐにマントで舞を絞めつけ始めた。
そしてまた店内に響き渡る悩ましい「やられ声」。「アンッ…アンッ…アンッ…」
その異常な作業を、リーマン風の男は無表情のまま淡々とこなしていた。私は
何とも言えない気味悪さを覚えて、逃げるようにそのゲーセンを後にした。
2008.1.30記
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