おもしろい出来事があり、後日それを友人に話したとき、
「嘘くさい」
と言われるのはなんとも悲しいことです。
これを読む方々がそんな悲しいことを言わない、
できた人間であることを信じています。
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登場人物
| ライモ | 豊富な経験と馬鹿力を併せ持つ本格派。 頑固だが面倒見が良い。 |
| 空気清浄機 | 釣りの経験はほとんどない。 何事も八分目な男。 |
| オレンジ | アマゾン川でピラニアを釣ったと豪語するが 釣りは初めてに等しい。 いい年をしてオレンジが似合う男。 |
| ハチミツ(仮名) | 釣りの経験はそれなりにあるが これといって特徴が見当たらなかった。 |
ゴールデンウィークも終わりが近付きつつある5月4日、
舟券はライモから衝撃の告白を受けた。
ライモ 「この前釣りに行ってクロダイ釣りましたよ。」
これにより、その翌日の夜、舟券はライモ達と共に
クロダイが釣り上げられた名古屋港某所に向かうこととなった。
他のメンバーは空気清浄機(以下空気)、オレンジ、ハチミツ(仮名)である。
ちなみに実際にクロダイを釣ったのはハチミツ(仮名)だが、
タモが無かったためライモが命懸けで海面まで降りて素手で捕らえたらしい。
それにも関わらず、今回もタモを用意していないあたり、
全員が前回のクロダイは奇跡だったと思っているようだ。
オレンジ 「いやぁ、クロダイって言ってもそんなにうまいもんじゃ
なかったですよ。」
空気 「鍋にしたんですけどね、もういいって言ってるのに
ライモがむりやり食わせるんですよ。」
そう言えばクロダイは棲息場所によって味が影響されやすいって話があった。
しかし、白が聞いたら怒り出しそうな会話である。
「クロダイ釣ったら鯛めしだろ!」
と。
海は風が強く、昼間とはうって変わって体感気温がかなり低い。
しかし、ライモがいいちこを持ってきているので心配ないだろう。
さすがは本格派、しっかり心得ている。
だが、ライモ本人はかなり薄着なところを見ると、
どうやらいいちこの力を過信していたようだ。
早速前回クロダイが釣れた(捕れた)場所に陣取って
仕掛けを作り始める。
しかし、オレンジだけはイソメに触ることができずに
一人悲鳴をあげている。
さすがはオレンジ色が似合う男、
この辺りでもキャラ作りに余念が無い。
釣り始めて間もなくすると、
早くもライモの竿先が当たりを訴えた。
釣り上げてみると、わりと大きめのアナゴであった。
アナゴと言えば、
針を飲み込んで暴れる → 仕掛けがメチャクチャ → そではカピカピ
そんな嫌な図式を思い出している舟券にライモが尋ねた。
ライモ 「これ逃がしていいですよね?」
「いいんじゃない。」と答えた瞬間に
ライモは信じられない速さで針を外し、アナゴを海に返してしまった。
神業だった。きっと彼は
「最も人に自慢できることは?」
と聞かれたらこれだと答えるに違いない。
アナゴを釣っても大丈夫。
そう安心したからか、この後一同揃ってアナゴが大漁だった。
そしてついにオレンジも一匹目のアナゴを釣り上げた。
まともに釣りをしたことがないだけに
一匹目の感動はなかなかのものだったようだ。
しかし、所詮はアナゴ、二匹目を釣り上げたときにはもう飽きていた。
オレンジ 「あー、またアナゴだよ。」
わりと飽きっぽい性格である。
よくオレンジ色に飽きないものだ。
だが、この二匹のアナゴが布石であることには
この時誰も気付いていなかった。
しばらくするとまたオレンジの竿が当たりを示す。
ガードレールに立て掛けられたそれは、
オレンジの竿と言っても、実際は後輩から借りてきたもので、
リールはライモが友人から借りてきたものである。
空気 「おっ、また釣れたんじゃない?」
オレンジ 「どうせまたアナゴだよ。」
そう言ってゆっくりと竿に近付いて行く。
しかし、次の瞬間、
竿はガードレールを支点に鮮やかに一回転して
海へと落ちていってしまった。
オレンジ 「あーーっ」
真っ暗な海にケミホタルが虚しく姿を消していく。
あっけに取られるオレンジの周りで一同は大爆笑だ。
しかし、借りてきたリールを失ったライモは
慌てふためいている。
ライモ 「何してんだよ。」
そして、クロダイ仕掛けに飽きてきて
天秤を投げていた舟券の竿に目をつけると
ライモ 「これ、借ります!」
と強く断言し、竿を釣り上げようと真夜中の海底を天秤で探り出す。
ハチミツ(仮名)「もう最高のおちもついたし帰りますか。」
ライモ 「馬鹿なこと言うな。」
大うけの一同を尻目に必死なライモだが
一向に竿は発見できない。
少しずつ沈みだすライモを見かねた舟券が
表面上の優しさを見せ、仕掛けを投げ込んだ。
舟券 「この辺じゃないか。」
そして、ゆっくりとリールを巻き始めたが、
なにやらおかしな手ごたえが感じられる。
しばしの沈黙ののち、リールを巻き続けると、
なんと水中から緑色の光がぼんやりと浮かび上がってくる。
ライモ 「あっ!」
舟券 「(やった、…いや余計なことしたかな)。」
と、ささやかな葛藤の中リールを巻き続けたが、
途中で外れてしまったのか、緑色は再び真っ暗な海中へと
静かに沈んでいった。
これを見たライモが黙っているはずがない。
舟券からひったくるように竿を奪い取ると、
そのままの険しい表情で海底を探り始めた。
そして、その無謀とも思える行為を何度か繰り返すうちに、
ついにライモは失われた竿、もといリールを海面に引き上げた。
一同から歓声があがる中、冷静さと沈黙を保ったままのライモが
遂に竿を手元まで引き上げた。
空気 「ほんとに釣り上げたな。」
オレンジ「すごいな。」
ライモの必死な姿を楽しんでいた一同も、
この瞬間には小さな感動と感心を覚えていた。
しかし、ライモはそれに答えることもなく、
釣り上げた竿から引っ掛けた針を無言で外している。
一同が見守る中、引き続き真剣さを保ったままのライモは
針を外すやいなや、流れるように釣り上げた竿に持ち替え
勢い良くリールを巻き始めた。
なんと、竿を奪った魚はまだ竿とともにあり、
それを貪欲に釣り上げようというのだ。
まもなく海面に姿を現したこの事件の黒幕は
40cm ほどのセイゴであっただろうか。
その姿を見て全員のボルテージは最高潮に達した。
黒幕を仕留めようとするライモには
「とんでもないことしやがって!」
という怒りすら感じられた。
勢いに乗って竿を引くライモ。
しかし、その時、信じられない出来事がっ!!
なんと、竿が折れ、再び海中に持っていかれてしまったのである。
一度ならずも二度までも海中に引き込まれる悲劇の竿。
そしてむなしく鈍くなる緑色の光。
最後の望みである糸も切られた。
完敗。
絶句するライモのまわりでは
今日何度目かの大爆笑が巻き起こっていた。
終始必死だったライモの姿を見ていたことと、
一時は感心していたこともあって、
申し訳ないがこのときの滑稽さは
筆舌に尽くし難いものであった。
このまま釣りを続けてもこれ以上おもしろいことは起きない、
そう悟った一同は、クロダイを釣りに来たことなど忘れ、
大満足で釣りを終えたのであった。
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某局で放送したらやらせだとでも言われそうな
今回の一連の出来事は、紛れも無い真実である。