受験時の年齢について(2006年1月追加)
たまにいただく問い合わせに「私は今○○歳です。医学部に編入すべきかどうか悩んでます」系の質問が散見されますので、これに対する個人的な意見をまとめてみました。
なおこの質問に対する唯一の最適解というものが存在するとは思えませんので、参考程度にどうぞ。
今現在、10代後半または20代前半で大学在学中である方
- 1年生または2年生
- 編入ではなく、医学部を再受験するのも方法の一つでしょう(いわゆる仮面浪人状態になるわけですね)。単位は持っていけないと思います。
- 3年生または4年生
- 現在在籍中の大学をちゃんと卒業する事には、大きなメリットがあります。卒論を書くという経験が得られる事です。
なにしろ医学部では論文を書きません。卒論は参加することに意義があるといわれるレベルのものではありますが、それでも論文の書き方すら判らない人(医学部を出ただけならこの状態です)と、曲がりなりにも論理的な文章を組み立てることやってみた人では、だいぶんと差がつきます。
また何らかの資格が取れる学部なら、しっかりとその資格を取ってみるほうが良さそうです。
- 薬学・獣医学・歯学の各学部学科にいる方(おまけ)
- 国家資格はアルバイトする上でも重要ですよ^^;
医学部在学中の飯の種になりますから、資格ゲットにむけて頑張ってください。
学部卒業後3年程度しか経過していない方、または20代半ばまでの方
- これまでずっと無職の方
- とりあえず就職してみてはいかがでしょうか。考え方も変わるかもしれません。
就職したら勉強する暇がなくなるから嫌だ?だいじょーぶです、ワタクシは働きながら受験しましたよ。
- 大学院生の方
- ドクターコースにいるなら、博士を取ってしまったほうが良いような気がします。なんだかんだ言っても、Ph.Dは別物ですから。
- 社会人の方
- 専門分野を変更せず、
という方法を検討してみてもいいと思います。第二新卒という扱いで転職できるのは若い間だけです(30を過ぎたらポテンシャル採用はありません)。
医学に首を突っ込むより、そちらのほうが建設的な結果を生む人も多いと思います。医学分野に貢献するのに必要な人材は、医者や薬剤師ばかりではありませんからね(具体例:日本光電の青柳氏など。その他の分野ももちろんあります)。
じっくり考えてもまだ医者のほうがいいや、という方は、お若いのですからぜひ挑戦してみてください(でもお金の問題、家族の問題は考えないといけませんがね)。
学部卒後五年以上、または三十路までカウントダウン中の方
- これまでずっと無職の方、仕事をすぐにやめてしまう方
- 受験よりもまず、どこかに就職し、一年以上継続することを考えてください(キャリアアップのための転職と、「嫌だからすぐやめる」は全く別物です)。
医者は過労死しやすく、自由時間もあまりなく、一人前になるまでに何年もかかる職業です。一人前になるまでだいたい10年くらい見ておけば良いと思いますが、下手をすればもっとかかる可能性もかなりあります。
修行期間の長さに耐えられますか?週当たり就業時間100時間に耐えられますか?
まずその点を考えてください。世間に出る苦労を嫌ってモラトリアムで入ってきても、いずれ挫折するだけです。
- 社会人の方
- ポテンシャル採用はそろそろ厳しい時期ですが、卒後3年程度の方と大体同じかな。
30代の方
- これまでずっと無職の方、仕事をすぐにやめてしまう方
- ……一般企業ですら採用したがらない人材を、人気企業と同じくらい人が殺到する医学部が採用すると思いますか?
- 「本当はもっと出来るはずの自分」を証明するために受験したい方
- 会社から逃げても意味は無いですよ。
一般企業では、ポテンシャル採用の対象外となる年齢であることを自覚したほうがいいでしょう。つまり、すでに「本当に才能があるなら、これまでに実績があるはず。実績が無いのは才能が無いからだろう」とみなされる年齢に達しているのです。
貴方に必要なのは医師免許ではなく、貴方の現在の職種(業界ではない)でのキャリアであり、実績です。
- 研究職・開発職など、専門性の高い仕事をしている方
- 先にも書いたとおり、医学分野に貢献するのに必要な人材は、医者や薬剤師ばかりではありません。
率直な話をしますと、「医者に自分の専門分野について教えるより、自分が医学を学んだ方が早い」という他分野専門家の言葉があります。……社会人の方なら、こう言われてしまう事がどういう意味であるかはお分かりでしょう。
というわけで、他に専門をお持ちの方は、現在の専門を主軸に据えて医学を齧る方が、良い結果が出せるのではないでしょうか。医学部に行くとキャリアに最低でも6年間のブランクが出来ますから、これは避けたほうが良いかも知れません。
医学を「かじる」だけなら、教科書を読めば良いわけですし、これだけでも医師との共通言語は獲得できます。あとの詳細は、ベテラン医師と組んで情報提供してもらえば良い事です(自分が修行するよりも、ベテランの経験に頼る方が早いですよ)。
- それ以外の方
- 今お持ちのキャリアをゼロにリセットする行為ですよ。それでもいいですか?
医学部編入ではなく、転職した方が良くないですか?
構わないのであれば、まずは自己分析を。
目標大学の分析は皆さんおやりになると思いますので、今さら私が触れるようなことは無いと思います。しかし「己を知らず」のまま挑戦しても百戦百勝はありません。勉強に取り掛かるより先に、あるいは取り掛かると同時に、自分に向いた方法論が無いか考えたほうがいいでしょう。
闇雲に受験勉強するにしても、昔と同じ方法で成功する保証はありませんから(記憶力の減退という、三十代の現実がありますからね^^;)。
それ以上の方
- 40代〜50代の方
- 体力はありますか?
はっきり言いましょう、精神科医になるから体力がなくても大丈夫、などと考えてはいけません。
最終的にどの科を希望するにしても、免許取得直後の2年間は初期研修スーパーローテーションに加わる必要があります。この期間中には外科修行がありますから、否も応もなく、若者と互角に働ける体力は必要です。
とはいえ体力が衰えているのも事実でしょうから、それをカバーして同じだけの働きができる能力が必要ということになるかと思います。体力と気力と時間の配分を上手くやっていける方でないと辛い、という事になるでしょうか。
ちなみに腕力は大して必要ありませんから、ご安心を。
- また家庭をお持ちなら、無収入で4年+月給20万以下で5年間過ごすくらいのシビアな資金計画を立ててください。
マッチングに年齢制限はなく、よって採用募集対象者の年齢制限もないと明言する病院がほとんどですが、年齢制限がないと言っても同じ能力があれば若い者が先に採用される、という現実を忘れてはいけません。ま、これはどの業界でも同じことですが……
条件の良い職を確保できる保証はどこにもありません。将来もらえるだろう給料の額面に夢を見ないことを強くお勧めします。
最後に、この頃はご両親が介護を必要とし始める年代でもありますから、そこを考慮する必要もあると思います。
- 60代〜の方
- さすがに、この年代の方で自分のような若造に質問なさる方はいませんが、念のために付け加えておきましょう。
年齢的には高齢者ですし、卒業したあと何をなさるつもりでしょうか。
これは面接で絶対に突っ込まれるポイントだと思いますので、しっかり考えておかれるべきかと。答えはいろいろあっていいと思います(白状しますと、なにが良い答えなのか、私には全く判りません)。
以上は年代別に切ってみたものですが、このほかにいくつか。
- 何回受験しても落ちている人の場合
- 落ち続ける原因は大きく分けて二つあるんじゃないでしょうか。
- 成績が出せない。
そもそも分野的な向き不向きもあります(具体例:私が音大や美大を目指しても、入学するのは無理)。
適正を見極め、撤退の時期を見計らって社会復帰することも重要です。N氏のように一年で撤退と事前に決定している例もありますが、1年は短いにしても、考え方は見習うものがあるでしょう。
永遠の医学部浪人では、ちょっと洒落にならないですしね。
- 学校との相性が悪い。
これは誰が悪い何が悪いという問題ではなく、単にご縁が無かったというだけのケースです(故にかえって凹むかもしれませんが)。なんとなく馬が合わないとか、そんな感じで髪一筋の差で落ちるのがこのパターンじゃないでしょうか。
評価が真っ二つになった当方も、危うくこの集団に入るところだったようです。
aはもうどうしようもないですが、bについては対応可能です。
そもそも医学部に入るのは、医師になるためですよね?
ならば特定の大学に固執する必要もありませんし、固執しても無意味です。免許取れればいいんですから。
というわけで落ち続けるような大学のことはさっさと忘れて、受かる大学を探すほうが建設的じゃないでしょうか。
落とされたあそことは相性が良くないんだなと考え、別の大学をあたってみることをお勧めします。
- リストラされたので医学部の夢よもう一度、の方の場合
- ……再就職にむけて活動しましょう。
人生設計が大きく狂った、という人も多いでしょうし、こんな状態では夢を追ってる場合じゃないですよ。
だいたい、ろくな資金計画もなく、ただ会社にいられなくなったから医学部へ、なんていうのは無計画もいいところです。
- 効率よく金を稼ぎたい、だから医者を目指そうかな。という方
- 残業100時間オーバーのSEならばいざ知らず、そうじゃない方には全くオススメしません。ぶっ倒れそうになってる、あるいは点滴を受けながら仕事をしているエンジニアには、4年間の休養という意味を含めて考慮しても良い職かもしれませんが……
普通に夜20時退社可能な方にとって、労働条件はむしろ悪くなるはず。病院は現在の環境と比較して「効率よく」働ける職場ではないですよ。
……作業効率や品質管理という言葉が人手不足という現実で木っ端微塵にされ、根性論によって塵と変えられた、産業医を最も必要とする職場の一つです。
- 実は高卒なんですが、という方の場合
- ふつうに受験してください。ちょっと年を食った一年生なんて、どこの医学部にもゴロゴロいますよ。
- 群馬は年齢制限があるって聞いたから気になるんです、という方の場合
- 年齢制限疑惑のある『中堅クラス』の大学をわざわざ選んで受験する必要はどこにもありません。
自分よりも高い年齢の合格者を出した実績のある大学か、成績さえ良ければ合格できる東大(東大の面接は形式的なものだと言われてます)、あるいは私大を受験することをお勧めします。
悩むのも時間の無駄、教育サービスを金で買ってしまいましょう。さすがに、ある程度はお勉強ができなくては話になりませんが、お金で買える部分はお金で買ってしまってもいいと思います。
私は昔から経済的余裕という言葉に縁のない^^; ビンボー人ですから国公立限定で考えていましたが、私大も良い選択だと思いますよ。
長年医学部への夢を温め続けてきた方なら、私よりはお金も貯まってるでしょうしね。
- もっとも、群馬にも再入学者はいますけどね……現状を見る限り、「再入学・多浪は群馬を受けても無駄、絶対受からない」は嘘ですね。
まあなんだかんだ言っても、「事前に現実的でご本人に実行可能な計画を立てて、撤退時期も決定の上で、ご本人が強い意志を持ってアタックするのであれば、どうか頑張ってください。健闘を祈ります」という結論に落ち着くわけですけれどね。
そこまで準備されたのであれば、あとはもう運の問題だと思います。
- ※日本光電の青柳氏
- パルスオキシメータ(指先にくっつけて酸素含有量を測る機械)の開発者。
血を見なくても重要なデータが取れる、つまり患者さんに痛い思いをさせなくてもいいというのは、非常に重要なことです。青柳氏はこの功績により紫綬褒章を受章しています。
- ※その他の分野
- 材料、情報(病院の情報化、医療の情報化は重要なんですが専門家が少ない)、センシング(測りたいものは幾らもありますよ)、制御(手術分野では「医師をサポートする機械」の開発は強く望まれているところです)、画像処理、ロボット(介護者、医師・看護師などをサポートするロボットが必要です)などなど。
元が工学部なので偏った紹介になっていますが、人海戦術など採りようもない人材不足の昨今では「医療提供者を確実にサポートする」ための技術が必要になっています(ここでは「機械オンチの人でも使えるサポート技術」であることも重要なので、ヒューマンインタフェースも考える必要があります)。
コンピュータとバイオテクノロジーの発展なくして、現代医療はありません。医療はそれ単独では存在できない、技術応用分野ですよ。

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