のび太の宇宙開拓史
(映画公開1981年)

◆監督 西牧秀夫 作画監督 富永貞義  主題歌「心をゆらして」作詞武田鉄矢・うた岩淵まこと

◆◆ストーリー◆◆ のび太はSF映画のような不思議な夢を見た。男の子と不思議な生き物が宇宙船でさまよっているのだ。起きればジャイアンが急用だと訪ねてきた。ジャイアンズのホームグラウンドである空き地が中学生に乗っ取られてしまったのだ。仕方なく変わりの空き地を探せねばならない。その夜、のび太が寝ていると突然夢の中の生き物が出てきた。驚くべきことにのび太の部屋と夢の中の宇宙船の倉庫の扉は超空間のねじれによって偶然にもつながってしまったのだ。宇宙船の男の子ロップルくんと不思議な生き物チャミーは宇宙船が故障して困っていたのだ。のび太とドラえもんはタイムふろしきで機械を修理。無事元に戻り二人は別れを告げる。
 翌日、再び畳をめくればまだ扉はつながっていた。畳をくぐり、宇宙船から出ればそこは見たこともない惑星であった。どこまでも続く広い世界、やがて春が来て美しい自然があらわれた。そこはどこまでも続く広い空き地、楽しく遊べる世界であったはずだが・・・突然謎の宇宙船があらわれた! 

◆オープニング&エンディング◆ オープニングの主題歌は前作に続き「ぼくドラえもん」、エンディングはどういうわけか主題歌の「心をゆらして」ではなく「ポケットの中に」です。前作に引き続きドラえもんの秘密道具が登場する愉快なドラえもんワールドが描かれています。

◆◆城主の戯言◆◆ 映画化第二段、こうしてドラえもん映画のシリーズ化が始まりました。今回のテーマは「友情」です。運命のいたずらで偶然知り合った、遥か遠い星の人間と知り合う。SF的なテーマですが、畳という非常に日常的な部分を入り口にするなど藤子流SF(すこし・ふしぎな)の世界が感じられます。地球ではジャイアンやスネ夫から仲間外れにされ良いことなしののび太ですが、その星では温かく迎え入れてくれる友達がいてスーパーマンとなって大活躍できます。もちろんラストではジャイアン、スネ夫も駆けつけてくれて仲直り。後半のガルタイト鉱業の動きや不気味な迫力のギラーミンも見せ場の一つです。
 主題歌「心をゆらして」は岩淵まことがしっとりと歌っています。初期ドラえもん主題歌を通して言えることですが、短編のテレビアニメでもBGMとしてたびたび使用されています。


◆ストーリーの裏◆ 今回は悪役としてガルタイト鉱業という悪徳企業が登場します。この作品が発表されたのは80年代初頭。ちょうど第二次オイルショックから経済が上向きになってきた時代です。道路工事やマンション建設のため悪徳不動産業者が暴力団を背景に反対する住民に脅迫まがいの嫌がらせをするといったことはよく耳にします。

◆◆ゲストキャラ◆◆

 ロップル・・・コーヤコーヤ星に住む少年。亡くなった父の意思をつぎ悪徳企業から星を守ろうと勇敢に立ち向かう。偶然のび太の部屋と畳がつながったことで、のび太たちと知り合い親友になる。

 チャミー・・・ロップルの友達の不思議な生き物。性格はお転婆な女の子といった感じ。ドラえもんが出したどら焼きが気に入ったようだ。

 ガルタイト鉱業・・・トカイトカイ星に本社を置く大企業。開拓移民を無視し周辺の星々を強情に乗っ取り利益をあげており、コーヤコーヤ星を狙っている。

 ギラーミン・・・ガルタイト鉱業がのび太たち「スーパーマン」対策にコーヤコーヤ星に派遣したプロ。銃の名手でもありのび太と対決する(原作)。

 ブブ・・・ロップルの家の隣に住む男の子。ロップルの妹・クレムが好きでのび太が活躍することにヤキモチを焼いている。

◆キーワードとなる道具◆

「タイムふろしき」

◆◆原作との比較◆◆

 この作品では原作と映画とではラストが大幅に変更されていることが話題になりますが、その他細かい変更も多く中々興味深いです。チャミーのデザインも原作と映画では少し違いますね。

●原作23ページからワープの説明

 原作ではロップルくんが紙と点を用いてのび太にもわかりやすいように説明してくれていますが、映画ではドラえもんがどこでもドアを例に出して説明しています。空想科学の理論としては原作の方がしっくりきます。

●原作52ページのガルタイト鉱業登場シーン

 原作のガルタイト鉱業の宇宙船は四角いデザインでしたが、映画では原作で後半に登場する牛のような形の宇宙船に統一されているようです。

●原作53ページのロップルの父について

 映画ではもう少し後のシーンでロップルくん自身が語っていますが、原作ではチャミーが喋りかけてロップルくんが止めています。「証拠のないことをいくらいってもしかたがない」と原作のロップルのほうが少し大人びた感じです。

●原作106ページから楽しく遊ぶシーン

 原作ではいくつか描かれていますが、映画では主題歌をBGMにサイレントムービー風に流れます。映画では多少の加筆があるようです。ほのぼのとしていて見ていてとても心が温まります。

●原作114〜115ページのカット

 地球の友達からは仲間はずれにされたが、遠い宇宙の友達は温かく迎え入れてくれたという対照的なシーン。のび太ではないが「ジワ〜」でありますが、このシーンは映画では見られません。

●原作116ページからガルタイト鉱業の嫌がらせ

 原作では毒を流すということになっていますが、映画では円盤から熱線を発射し実った作物を燃やしています。悪役二人のキャラクターや、ドラえもんが何度も道具を出し間違えたりと映画ではコミカルに描かれています。

●原作123ページギラーミンの登場シーン

 映画ではギラーミンはマスクをつけています。また単に「殺し屋」としか紹介されておらず、不気味な迫力を持った原作とは違い残念です。

●原作141ページのドア爆破シーン

 原作ではのび太とドラえもんが気になって開けてしまい爆発しますが、映画ではチャミーが爆弾を解除しようとしてうっかり爆発させてしまうことになっています。

●原作148ページからしずちゃんの対応

 原作ではのび太に「女はゆうずうがきかない」とまで言われるほどですが、映画ではさほど強調されていません。またチャミーが助けを求めに来てからも映画では素直に事態を受け止めています。

●原作165〜166ページのカット

 離れた超空間を恐れるスネ夫にジャイアンが「のび太さえいったんだぞ!!」と強く言うシーンは、今まで意地悪していてもジャイアンは友達なんだと再認識させてくれる良いシーンなのですが、映画では見られません。

●原作170ページからのクライマックス

 ここがこの作品の原作と映画の最大の違いです。まず原作173〜179ページの宇宙船が襲ってきて駆けつけたジャイアンたちが撃墜するシーンは映画では後回しにされています。映画では相手の混乱に乗じて基地内に侵入しようとしたのび太、ロップルくん、チャミーが出てきたギラーミンと遭遇します。原作では最後の戦いとしてのび太とギラーミンの一対一の勝負を西部劇風にじっくりと描いていますが、映画ではドラえもんが道具を使って援護しロップルくんが撃った弾がギラーミンの眉間に命中し、ギラーミンはあっけなくやられてしまいます。
 また原作では偶然出してしまったタイムふろしきが被さりコア破壊装置を止めたことになっていますが、映画ではロップルくんの機転ということになっています。原作ではこのシーンをさらっと流しているのに対し、映画ではここをじっくりと描いています。個人的な評価ですが、相対的に見るとのび太の活躍やクライマックスとしての迫力を考えると原作の方がおもしろいですね。

●原作189ページの別れのシーン

 原作ではわずか一ページのシーンですが、映画では主題歌「心をゆらして」をBGMに手を振るロップルくんたちと楽しく遊んだコーヤコーヤ星の風景が回想シーンのように流れます。このシーンでは映像になっているという映画の強みで、映画版に軍配をあげることにします。

 
 全体的に見ると、ストーリー(特にラスト)は原作の方がおもしろいのですが、細かなギャグやセリフ回しは映画も負けていません。特に「悪知恵はコンピューターじゃ出せないぜ」「ワハハ、違ぇねぇ・・・」のギラーミンと主任の掛け合いは妙に印象に残ります。


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