世界に40種いるといわれるカラスのうち、日本で見ることができるカラスをイラストで主観的に紹介。


■カラスにも種類がある
 カラスなど、どれをとっても同じように真っ黒でカアカアやかましいだけ、あんな連中に種類なんぞあるのかいな…と思われる向きもあろうが、我々が普段日常的に目にしているカラスも、よくよく見れば見た目も性質も異なる、数種類のカラスに分かれている。

 そもそも、どういう鳥を「カラス」と呼んでいるのかというと、分類学上は「スズメ目カラス科カラス属に属する鳥の総称」ということになる。これに該当するのが世界全体でおよそ40種類いて、そのうち5種類を日本で見ることができる(亜種を除く)。

 また、カケスやオナガなど、カラスではないが比較的近い親戚筋(同じカラス科)がいる一方で、種的に近くないのに、色黒が災いしてカラス呼ばわりされている鳥もいる(カワガラス、ウミガラス等)。
 ここでは、日本でみられるカラスとそれらの特徴をご紹介しよう。


■日本でみられるカラス
●年中無休の連中(一定の地域内で生活し、繁殖するカラス:留鳥)
ハシボソガラス corvus corone

 クチ「バシ」が「細」いのが名の由来。日本全域を含むユーラシア大陸のほぼ全域に分布する(どちらかというと北方系)。下のハシブトガラスに比べると田舎モンで、東京等の都心部には少なく、開けた農耕地や、周囲を田畑で囲まれた市街地で多く見られる。

 体長は約50cm。ハシブトガラスより若干小さく、華奢な体つき。額に出っ張りがなく、滑らかなフォルムを見せる。鳴き声は普通ガアガアと濁ることが多い(カララとかカゥオとかその時々で色々な声を出すが)。雑食性だが、ハシブトに比べるとややベジタリアン傾向の穏健派である。

 性質は、警戒心が強く、ビビリ屋。田舎モンなのであまり人馴れしていない。田園都市部などハシブトガラスと生息域が重なるところでは、よく餌を横取りされている。そのためか、生きるために創意工夫する能力や学習能力が高く、クルミの殻を車に轢かせて割ったり、紐で吊り下げられた餌を手繰り寄せて食べる等の行動が確認されている。(それらの面白行動が管理人をひきつけ、カラスの世界へ飛び込ませるきっかけとなった)
英名:Carrion crow(腐肉を食べるカラス、嫌われ者のカラスの意 あんまりだ)



ハシブトガラス corvus macrorhynchos

 クチ「バシ」が「太」いのが名の由来。日本全域を含むユーラシア大陸東・南部に広く分布する(どちらかというと南方系)。英名はJungle Crow(密林のカラス)。その名のとおりもともとは森林に生息していたと考えられているが、大都会のコンクリートジャングルも彼らにとってはジャングルに相当するらしく、餌が豊富で天敵の少ない都市部を生活の場と見定めて久しい。多分、目下の天敵は某都知事くらいのものだろう。

 体長は55〜60cmくらい。嘴は太く湾曲し、額が出っ張ってモヒカンっぽいフォルムを見せる。澄んだカアカアという声で鳴くことが多く、濁った声を出すときもハシボソより声量がある感じ。雑食性だが、ハシボソより身体が大きい分アクティブで、小動物や他の鳥の卵や雛を食べたりもする。ごみのあさり方も力強いのでヒトへの印象が悪い。

 性質は、好奇心が強く、大胆。ネオン暮らしが長いのでほとんどヒトを恐れない。とはいえ、本質は警戒心が強いので、ヒトに捕まるようなヘタは滅多に打たない。時折戯れにヒトにちょっかいをかけたりするので、益々嫌われる。



●冬季限定の連中(秋に渡って来て越冬し、春になると去るカラス:冬鳥)
ワタリガラス corvus corax

 カラス属最大の種。日本で見られるカラスのうち、唯一英名にcrow(カラス)ではなくraven(大ガラス)の名がつく。北半球の温帯以北に広く生息し、アメリカやヨーロッパでは極めてポピュラーなカラスで、神話や物語にもしばしば登場する(そのため英名がCommon Raven:一般的な大ガラス)。日本では、冬季、ごく少数が北海道の一部に渡来する。

 体長は65cmくらい。嘴は太いがハシブトほど曲がっていない。顎の下のボサボサ感と楔形の尾羽が特徴。鳴き声は色々だが、「カポッカポッ」などと妙な声を出すので、それで「あ、ワタリ」と判断することができる。大型動物(エゾシカ・海獣・魚等)の屍骸に集まるためか、北海道では近年のエゾシカの増加に伴い、渡って来る数が増えたともいわれる。



ミヤマガラス corvus frugilegus

 つるむのが大好きの小型種。ユーラシア大陸中北部に広く分布し、これまたヨーロッパではかなりポピュラーなカラスである(英名のRookは俗語で「インチキ野郎」をも意味する)。日本では、冬季、群れを成してドンガラドンガラ農耕地等に渡来する。かつては西南日本でしかみられなかったが、近年渡来域が北上し、ついには北海道の南西部でも毎年コンスタントに観察できるようになってしまった。これは温暖化の影響だろうか?

 体長は45〜50cm程度。ハシボソに似るが若干小さく、嘴が尖っている。成鳥は嘴の根元の羽毛が抜け落ちて嘴全体が灰色っぽく見える。鳴き声は細く、しわがれているが、何しろ日本で見かけるときはほとんど何百羽レベルの大集団なので小うるさい。



コクマルガラス corvus monedula

 カラス属最小の種。東アジアの中高緯度に分布する。動物行動学の始祖ともいえるコンラッド・ローレンツ氏に「永遠に変わらぬ友」と愛され、氏がその道に飛び込むきっかけをつくった。…のは実はヨーロッパに生息する類似種である(ニシコクマルガラス)。
 日本では冬鳥というより迷鳥で、ミヤマガラスの群れに混じって少数が冬季渡来する。ミヤマ同様、現在渡来域北上中で、運がよければ北海道でも見ることができるようになってしまった。

 体長は30cm少々でハト程度。ツートンカラーが目に鮮やかであるが、中には色黒な(ツートンがはっきりしない)ヤツもいる。鳴き声はキョンキョンしてるらしい。



カラスの親戚筋(カラス科)で、「カラス」の名を持つ連中
ホシガラス nucifraga caryocatactes

 褐色の身体に白い斑点が散っているので「星」ガラス。ユーラシア大陸の高山帯に多く生息し、低地ではほとんどお目にかかれない。「カラス」の名を持ってはいても、都市にも降りずごみもあさらぬこの鳥に悪印象を持つヒトは少ないだろう。
 彼らはハイマツが大好物で、「冬の食糧にと岩陰やくぼみにハイマツの種子を蓄える→それが芽を出してハイマツ林が栄える」という持ちつ持たれつの間柄を形成している。ハイマツの実が不作の年の冬は、低地まで降りてくることがある。

 体長は35cm程度。ガーとかケケッなどと鳴くらしい。彼らのハイマツ好きは万国共通のようで、英名はNutcracker(ナッツ割り野郎)。



カササギ(別名:カチガラス・コウライガラス・ヒゼンガラス) pica pica

 青みがかった光沢のある長い尾羽が美しい鳥。ユーラシア大陸の中南部・北アメリカ西部に生息する。日本では九州の一部のみに分布するが、どういうわけか、近年ごく少数が北海道で繁殖しているらしい。定着性の強い鳥なので、自分で渡ってきたのではなく、飼育個体が脱走したのかもしれない。
 中国や韓国ではかなりポピュラーな存在で、韓国の国鳥でもある。七夕には天の川に集結して架け橋となり、牽牛と織女の再会に手を貸してやる物好きである。

 体長は長い尾を入れて45cmくらい。コクマル同様ツートンが鮮やかであるが、そこに青の強い光沢が加わり花を添える。見目麗しけれど性質は荒く、電信柱の占拠権を争ってトビとタイマン張る向こう見ずでもある。



カラスの仲間じゃないのにカラスと呼ばれてしまう連中

北海道の某行楽地に現れたカワガラス
(2004年5月管理人撮影)
 一般のヒトはカラスのことをあまり知らぬものだし、そもそもカラスになど興味を持たぬ場合がほとんどである。

 そのためか、ヒトによっては黒い鳥は全部カラスに見えてしまうらしく、以前管理人が行楽で海に出かけた折に、横にいたどこぞのお母さんが、海辺の岩場で羽を広げるウミウを指差して「ほら、カラスよ〜」とお子さんに教えていて、思わず仰け反ったことがある。

 この、「色黒=カラス」の呪縛を肌身で感じられるのが、「カワガラス」や「ウミガラス」などの、全然カラスじゃないのに色黒ゆえにカラスと呼ばれてしまっている難儀な連中である。ま、そんなことを言い出したらウミスズメは全然スズメじゃないし、ウミネコは全然ネコではないのだが…