![]() |
| 神話の昔よりヒトの語り継ぐ物語に登場してきたカラス。それほど昔からカラスはヒトにとって身近な存在であったことがうかがえる。昔話や寓話の中で、サルの尾はなぜ短くなっただの、エビの腰は何故曲がっただの、いろいろ |
| 珍説その1 重ね塗りの悲劇 熟年女性の話ではない。カラスの羽はフクロウにより染められて黒くなった、という説。この気の毒にも滑稽な説は、タイの昔話だとか秋田の民話だとか諸説ある中、童話作家の松谷みよ子氏の手により「ふくろうの染め物屋」の名で広く世に紹介されている。物語は以下のとおり。
荒唐無稽ではあっても、ところどころ微妙に筋が通っているこの説。フクロウがカラスを黒く染めた云々はともかく、カラスとフクロウの仲が非常に険悪であることは事実である。フクロウはカラスの数少ない天敵のひとつであり、それぞれ昼と夜の制空権を制する彼らは、互いの寝込みを襲い合うこともあるらしい。古のヒトビトは、そんな緊張感に満ちた様子を目にして、かような物語を連想したのかもしれない。 また、カラスの羽は、黒一色のようでいて、よく見ると光の加減で緑や紫の光沢が浮かび上がるのだが、それも解釈によっては「重ね塗りした地色が浮かび上がっている」と見えなくもない。誰が考え出したか知らないが、かなり頑張って理屈をつけたものである。その努力は買いたい。 |
|||
珍説その2 日焼けでこんがり 不思議なことに、地域を問わず世界中の神話や昔話において、カラスと太陽とは密接な関係にあることが多い(これについては「カラスと太陽の不思議な関係」にて後述)。 太陽あるところ日焼けあり、の発想からか、カラスが黒い理由を「日焼け」とする説がいくつかの神話にみられる。
アイヌのヒトビトの間でも、神話の昔からカラスはヒトのものをかっぱらうようなマネをしていたことがわかる貴重な話。それで「お咎めがない」というのがおおらかでいい。自然の恵みに感謝する心を忘れないアイヌのヒトビトらしい説である。
元祖逆ギレ物語。職務に忠実だったあまりに上司の理不尽な怒りをかい、子々孫々まで黒い姿になってしまったカラス。これだけだと単なるとばっちり物語だが、カラスに関するギリシア神話については、結果はこれと同じだが過程の異なるエピソードがある。
ことの真偽はいざ知らず、物語に出てくるカラスの基本性格「嘘吐き」「おしゃべり」を押さえた、ある意味オーソドックスなエピソードといえるだろう。 ところで、この神話の中でカラスはアポロンに世の中の出来事を報告する役割を負っているが、実は、これと同じ役割を与えられているカラスが別の地の神話にも存在する。それは北欧神話。北欧神話の主神オーディンの肩には、「フギン(思考)」「ムニン(記憶)」という名の二羽のワタリガラスがとまっており、世界中を飛んで、目にしたことをオーディンに報告している」のだそうだ。土地は違えど、カラスがよく似た位置づけとなっているのが興味深い。 …さて、諸説珍説省みて。古よりヒトが知恵を絞ってなんだかんだと(屁)理屈をつけてみても、よくわからない、カラスが黒い理由。21世紀の現在に至っても、はっきりとした科学的な説明はできていないのが現状だ(いろいろな説は出ているが)。結局のところ、ヒトは、未だカラスの羽色の謎については珍説続出の段階にあるといえるだろう。 |