理屈で説明できない言い回し

理屈では説明できないが、慣用として、必ずそのような言い方をする言い回しがある。外国語を学ぶ者にとっては最も厄介な事柄である。それはそういうものだ、としか説明しようがないし、そういう言い回しとして覚えるしかない。思いついた数例を挙げる。

薬で散らす

胃潰瘍は、以前は手術で治療するのが普通であったが、医療の発達により薬で治るようになった。胃潰瘍を薬で治すことを「薬で散らす」ということが多い。なぜ「散らす」のか。凝縮していた潰瘍を拡散させるイメージか。この言い回し、胃潰瘍を治す場合以外にはあまり聞かない。

DVDに焼く

DVDやCD-ROMなどの記憶媒体に情報を記憶させることを、「DVDに焼く」、「CD-ROMに焼く」という。なぜ「焼く」なのか。「焼き付ける」というイメージなのだろうが、物理的に焼き付けているわけではない。考えてみるとヘンだ。

仁義を切る

もともとの用法はよくわからない。ヤクザ用語か? 現在一般には、例えば、仕事上、ある問題に関し影響力のある人物に対し、その問題に関連する事柄についての了承を事前に取り付けておく、というような場合に、「○○さんに仁義を切る」などと言う。「仁義」はわかるが、なぜ、「切る」なのか。これもよくわからない表現だ。

高速が走ってる

「○町から○町にかけて高速(道路)が走ってる」というような言い方をする。走っているのは高速道路上の車であって、高速道路ではないのだが・・・。

愛人を囲う

よく使われる表現だが、なぜ「囲う」なのか。「囲う」というと、どこか閉鎖的な場所に閉じ込め、外部との接触を禁ずる、というイメージだが、実際に以前はその通りだったのかも知れない。

(2005/3)


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