ゴーゴリ

狂人日記 他2篇

(岩波文庫)表題作の「狂人日記」は、書き手が徐々に精神に異常をきたしていく過程を日記の形式で表したもので面白いが、特に主人公が狂っていくバックバーンが深く描かれているわけではなく、深刻さはない。小咄という感じで、作者の代表作とされているのも肯けない。むしろ他の2作の方に充実した描写力を感じる。「ネフスキイ大通り」は、冒頭の大げさなまでのネフスキイ通りへの賛美、感極まった語り口調に閉口するが、続く二人の人物のエピソードは面白く、エンディングの文章も美しい。特にどうということもない話ではあるが。「肖像画」は3作中最も充実した読み応えがあった。第1部、第2部ともなぞめいたストーリーに引き込まれ、「芸術」というテーマが扱われているので深みがある。(1996年1月17日)

外套・鼻

(岩波文庫)「外套」はどうということもない物語で、ドストエフスキーによって賞賛されているのが肯けない。推測するに、英雄でなく、一人の小市民、小役人を小説の主人公として登場させ、そのささやかな喜びや悲しみといった感情のゆれ動きを描出するということが、当時としては画期的だったということか。現代においては特に珍しいことでもなんでもなく、当時におけるその斬新さの程度が想像できない。心理描写の詳しさが、ドストエフスキーによって受け継がれているような気がしないでもない。「鼻」は、日本で言えば漫才の台本か。こちらもどうということもない話だが、軽妙な筋運びやユーモアにセンスが見られる気もする。(2003年3月3日)



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