綿矢りさ

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(河出文庫)登校拒否という一見シリアスな事象から物語に入るが、それに至る心の闇といった深刻な話は描かれず、あくまでコミカルに進んでいく。「他の何百人もの人間が乗り越えてきた基本的でありきたりな悩み」や「騙しあいっこ」といったあたりをさらりと触れる程度にとどめ、ストーリーテリングに入っていくところは正解であろう。主人公と少年のやりとりには飄逸なリズム感がある。子供の妙に大人ぶった話し方も劇画調だ。登校拒否、他人の家に上がりこんでの風俗チャットのバイト、という「冒険」をあまり深刻にならずにさらりと描いたもので、終りはあっけないが、面白く読める。併載の「You can keep it」はどちらかというと「蹴りたい背中」に通ずる、キャンパスを舞台にした心理的なやり取りの一こまだ。(2005年12月5日)



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