吉田修一

パーク・ライフ

表題作はこれといったストーリー展開のない、身辺雑記風の小説で、全編を貫くテーマのようなものについて、ほんの示唆程度の事柄がちりばめられているものの、それは結局連関されずにさらりと終わる。より現代的な形を採った私小説のようにも思える。巧みで安定した筆致は評価されうるのだろうが、芥川賞レベルまで行っているか? 宮本輝や連城美紀彦のような直木賞系の作品という気もする。
「flowers」は、一応ストーリーらしきものがあり、過去と現在とが交互に立ち現れながら進行していく。終末の事件で文体を村上龍風に乱れさせているが、それほど高い効果をもたらしているとは思えない。独特のゆったりとした語り口に心地よさはある。(2002年9月3日)

最後の息子

(文春文庫)「最後の息子」、「破片」、「water」の3編収録。いずれも整然とした文体の純文学。ストーリー性を適度に絡め、さりげなく現代的な事象を織り込む。「最後の息子」は、日常撮りためたビデオの映像を見ながら、同居相手との出来事や自分の過去を語っていく風変りな手法だ。淡々として気取らない語り口の中に、仲間が殺されるとか、同居相手との突然の暴力沙汰といった戦慄をまぎれこませる。滑稽だがそれゆえに悲しさを誘う結末はきいている。「破片」、「water」は長崎を舞台にして、どこかに心の闇を抱えた家族の姿を描く。さわやかな中上健次といったイメージだ。もっとも「water」はさわやかな青春小説の色彩が濃い。(2007年12月20日)



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