心に優しさを持って
副校長 樋口 正次
54期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
皆さんは、私が副校長になって2年目に附属高校に迎えた学年です。皆さんが楽しい高校生活を送れるように、陰ながらお手伝いをさせて頂いて3年がたったわけです。
皆さんの附高での3年間はいかがだったでしょうか。勉学、部活動、附高祭、修学旅行、国際交流など、さまざまな舞台で、皆さんの高校生活が充実したものであったことを心から願っています。
さて、今世界を眺めてみますと、経済的・政治的に閉塞感が漂っているように思います。EUヨーロッパ連合の経済危機は、ギリシャからイタリア、スペイン、フランスへ広がる様相を見せています。中東では民主化運動が盛んにおこなわれています。アメリカでも格差社会是正を求めてデモが行われています。一体世界はどうなっていくのでしょうか。
昔ドイツの社会学者が、人間社会が近代化すると共に、地縁や血縁、友情で深く結びついた共同体である「ゲマインシャフト」から、会社組織のような利益社会である「ゲゼルシャフト」へと変遷していき、人間関係は希薄になっていくと言いましたが、まさにその通りになっています。
現代は、ひとりひとりが携帯電話を持っています。携帯電話は英語でcellular-phoneやcell-phoneと言いますが、語源は、「地域を数キロ程度の小さなセル(cell)に分割し、それぞれに周波数を割り当てて、中継局を介して通信を行う電話である」ところから来ています。細胞もcellと言います。一つ一つが分かれた部屋になっているからでしょう。この携帯電話に象徴されるように、近年はひとりひとりがバラバラな「個」の時代と言えます。
こういう現代社会にあって、私たちはどのように生きていけばいいのでしょうか。人間は社会的な動物なので、ひとりでは生きていけません。まず家族がいります。そして助け合う仲間も必要です。そういう人たちとの間の「絆」を丁寧に構築していくことがとても大切です。そして人は最終的には、社会と繋がらなければなりません。自分のやっている仕事などが自己満足で終わっていては、満足度は少ないでしょう。辛いことでも人のため社会のためになることであれば、満足度は大きいはずです。
ある塾の講師をしていた方から聞いた話です。小学生から「何のために勉強するのですか」と質問を受けました。どう答えていいか分からずに「みんなはどう思うか」とアンケートをしたそうです。そして何年か経ち、リーマンショックのあとにその塾の卒業生からよく電話がかかってきました。「給料がものすごく減りました」「リストラされました」など困っている人からの電話でした。そういう人たちの小学校当時に塾でとったアンケートが残っていて、それを見てみると、このような人たちは皆一様に「お金のため、名誉のために勉強する」と答えていました。それに対して「人のため、社会のために勉強する」と答えていた人たちからは、一度も電話はかかってこなかったそうです。
昨年の「今年の漢字」は「絆」でしたが、これからの世の中、他人(ひと)や社会との「絆」を特に大切にしなければなりません。他人(ひと)に対して「優しい気持ち」を持ちましょう。他人(ひと)のため社会のために役立つ人になれるように、自分を磨き続けましょう。
皆さんは、これから各分野でリーダーとして活躍していかれることと思います。今年の干支は「辰(龍)」です。皆さんが、将来「龍」のように大空を悠々と飛び回られることを心から祈っています。