楽器あれこれ
マニアックな管楽器の話題
Unknown topics of wind instruments
現代の管楽器は構造がかなり複雑であり、楽器のグレードによって
違いがあったりして調べてみるとなかなか面白い
このことは時代による楽器の変遷を辿ることにもなる
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オクターブキー
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オーボエのLow B♭ レゾナンスキー
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フルートのEメカニズム
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オフィクレイド
■オクターブキー
木管楽器で高い音を出す場合は、倍音を使うために特別なキーを押して
管の途中に振動の「節」を作る場合が多い
振動の節というのは、外気と通じることでその部分が振動しないようにする
ことで、弦楽器の弦を押えてハーモニクスを作るのと同じである
普通はオクターブ上になるのでオクターブキーと呼ばれるがクラリネット
だけは管が円筒であるために12度上となりレジスターキーと呼ばれる
フルートにはオクターブキーはないが一番上側の指穴を開いたり、更には
トリル用のもっと上側の穴を開いたりして同様の効果を得ている
リコーダーでは左手親指をずらして隙間を作るが(サミング)これらも
機能的にはオクターブキーであろう
振動の節を作るという意味では、その時の有効な管長の半分(1オクターブ
上なら)の箇所にオクターブ孔を開くのが理想的だが、全ての音に対して
オクターブ孔を開けては大変なので数個で妥協することになる
サクソフォーンではネックと本体のHigh F 孔付近の2箇所にオクターブ孔
があるが、奏者はどちらを使うか意識することはない、一つのキーを押すことで
A以上では前者、G#以下では後者を使うように自動的に切り替わる
ところが1840年代にアドルフ・サックスさんが発明した直後はどうも奏者が
意識して使い分けていたようだ
これは1861年製のバリトンサックスだが
サムレストの上が低音用、右が高音用のオクターブキーのようである
(Low A キーはない)
これがオーボエになるとかなり事情が変わる
オーボエは楽器のグレードによってキーの構造が変わるが、セミオートマチック
というシステムについて言えば通常オクターブキーは2つあり奏者が使い分ける
ものによっては第3オクターブキーを備えるものもある
またC#、D、D# を吹く時には左手人差指を下にずらしてカバーにある小さい穴
(ハーフホール)を開くのでこれも一種のオクターブキーである
結局オーボエ奏者は4つのオクターブキーを使い分けることを要求される
■オーボエのLow B♭ レゾナンスキー
オーボエの最低音はB♭でサキソフォーンと(楽譜上)同じである
この音を出すには左手小指の操作で管の一番下にあるキーを閉じるのだが
高級な楽器にはLow B♭ レゾナンスキーというものが備えられている。
左が低級な楽器(私のもの!)でこれがないもの、右が付いているものである
というか現在は殆ど全ての楽器がこの仕様になっておりLow B♭ レゾナンスキー
なしのものを探すのは難しい
写真で分かるように右側ではB♭キーを閉じた時に少し下にある小さなキーが開く
従って管の全長を使わないことになる
これはちょっと考えると奇妙なことで、左側の低級品やクラリネットやサキソフォーン
ではこのようなことはない
なぜこんなキーがあるのかについて書かれた資料はあまりないが私が唯一読んだのは
「木管楽器とその歴史(アンソニー・ベインズ著音楽之友社)」に載っている以下の
ようなものである
・1939年にA=440Hzと国際的に決められる前はA=435Hzであり、このピッチで作られた
楽器にはLow B♭ レゾナンスキーはなかった
・その後440Hzに合わせた全長の少し短い楽器が作られた
・しかしこの楽器ではEの音に不安定な影響を与えることが分かった
・そこで全長は435Hzと同じ長さとし、そのままではB♭が低過ぎるので小さなキーを
開いて補正するようにした
つまりLow B♭ レゾナンスキーというのはB♭の音の響きを改善するものではないのである
しかしこれを備えない私の楽器で「不安定な影響」を感じたことはない
奏者の腕が悪すぎて分からないのであろう
■フルートのEメカニズム
私はフルートは持ってはいるがフルート奏者ではないのでこのことについて書くのは
適当でないかもしれないし、手許に楽器がなければ何を言っているのか全く理解不能
かも知れないが構わず書く
前述のオクターブキーの項で述べたように、フルートは特別なオクターブキーを
持たないので第2オクターブのD、D#では有効管長の1/2にあたる左手人差指を開け、
第3オクターブでは1/4に当たる穴を選んで開ける(D はG の3倍音を使う)
第3オクターブのEで1/4に当たるのは左手薬指のG の穴なのだが、この指を上げると
隣のG#も同時に開いてしまい、弦楽器のハーモニクスで言えば一点だけで押えたのでは
ない状態となり、このことがE の演奏を困難にしている
このG のキーは良く見ると実に奇妙で隣のG# キーとロウ付けで繋がって一つの部品に
なっている
しかもG# 位置には管の裏側にもう一つの穴がありG# キーを押すとこちらが開く
してみれば表側のG# 穴は埋めてしまえばよさそうなものだがそれではA 以上の音の抜けが
悪いということなのであろう
しかしG# 穴を紙片で無理やり塞いでA を吹いてみても私には音色の違いが判らなかった
下手過ぎて音色を云々する以前の話なのだろう
まあともかくこのためにG とG# のキーを分離し、第3オクターブのE の運指の時だけに
表側のG# 穴を閉じるようにレバーやリンクの機構を設けたものがE メカニズム(正しくは
スプリットE メカニズム)である
下の赤矢印の縦長の小さなレバーがこの機構の一部であり外観的にはこれで見分けられる
テオバルト・ベームさんによってベーム式フルートが発明された当時はG# キーはオープン
キー(押すと閉じる)だったためこんな問題はなかったが、使い易さを求めてクローズド
G# キーが主流になったためこの問題が出てきた
現在でもオープンG# キーのフルートは特注で製造されている
ベームさんの最初の案ではE♭キーもオープンキーとする予定だったそうだ
■オフィクレイド Ophicleide
楽器はどんなものでもそうだが歴史的には実に様々な種類のものが考案されてきた
あるものは改良に改良を重ねて現代まで生き延び、あるものは廃れて忘れられた
最終的に現在生き永らえているのがオーケストラで使われている楽器ということに
なるのだろうが、どっこい世の中にはいろいろな人種がいる
とっくに死に絶えたと思われるような楽器を探し出してきて蒐集し、演奏して楽しんで
いるマニアがたくさんいる
バンドを組んでアンサンブルを楽しんだり特殊な楽器のクラブを作って情報交換する
WEBサイトは探せば実に多い
一つだけ紹介するのがオフィクレイドという金管楽器である
簡単に言えばサキソフォーンにトランペットのマウスピースを付けたような楽器だ
いろいろなサイズがあるがバスの楽器が多く出回っているようだ
Ophicleide という言葉はキー付のセルパンSerpentという意味だそうでセルパン
というのは18世紀頃に盛んに使われたこのような楽器である
Serpentは蛇の意味で、木製の管に穴を開けトランペット式のマウスピースで吹く
本題のオフクレイドは真鍮製でこんな形をしている。1821年に考案されたとなっている
発音原理は金管楽器でありながらバルブでなく木管楽器のように管の横腹に開いた
穴を開いて音を変えるところが妙だ
YouTubeで音を聞ける
Ophicleide Summit in Berlin
奇怪な姿に似合わず柔らかな音を出す
こんなおかしな楽器を愛好する仲間と演奏できて皆さん実に楽しそうだ
YouTubeの説明にあるように右端の人物はDouglas Yeo というボストン交響楽団の
トロンボーン奏者である
彼のWebサイト
を見ると前述のセルパンの方に深くはまっているようでたくさんの
写真がある
こういうのを見始めるとつい時間の経つのを忘れて見入ってしまう
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