コーラスも美しい

ボストン (BOSTON)

 トム・ショルツ率いる、プログレ・ハードロックバンド、ボストン。プログレとはプログレッシブ・ロックのことを指し、元々はブリティッシュから生まれたものです。それのアメリカ版が"ボストン"というわけです。彼は100回を越える多重録音、イコライザーを駆使した独特のサウンドなど、あらゆる機材を用いて自らのスタイルを徹底的に追求しました。曲作り、レコーディングからミックスまでトータルで行い、完全主義者の側面も見せますが、その姿勢は

"No Synthesizers Used
 No Computers Used"

という、クレジットに要約されています。MIT(マサチューセッツ工科大学)出身という肩書きにもあるように、エンジニア的な傾向が強い彼ですが、卓越したスタジオワークから放たれる音楽は新たなジャンルを切り開きました。彼の試みた"エレクトロニクスとハードロックの融合"はカンサス、フォリナー、スティクス、TOTO、ジャーニー、REOスピードワゴンなどの登場と共に、プログレ・ハード・ロックとして多くの若者の人気を呼びました。この頃からアメリカでは、ロックがポップ路線を歩み始め"産業ロック"という言葉が出現するようになります。

 

 

アルバム紹介 (BOSTON)

@BOSTON(幻想飛行)
ADON'T LOOK BACK(新惑星着陸)
BTHIRD STAGE

CWALK ON
DGREATEST HITS

BOSTON(幻想飛行) / BOSTON

1. More than a feeling
(宇宙の彼方へ)
2. Peace of mind
3. Foreplay/longtime
4. Rock & roll band

5. Smokin'
6. Hitch a ride
7. Something about you
8. Let me take you home tonight

EPIC/SONY <1976年作品>

produced by John Boylan, Tom Scholz
トム・ショルツ(g.key.)、ブラッド・デルプ(Vo.)、バリー・グドロー(g.)、
フラン・シーハン(b.)、シブ・ハッシャン(ds.)

 トムはMIT(機械工学修士)卒業後、ポラロイド社の開発チームに勤務していました。仕事の傍ら、自宅の地下スタジオでブラッドと共にデモ・テープを作ってはレコード会社に送る日々が続きます。75年にEPICが目をつけ、そのデモ・テープに出演していたメンバーでバンドを結成。76年に出身地であるボストンをバンド名とし、この『幻想飛行』をリリースしました。全米3位、800万枚のセールスを記録し、華々しいデビューを飾ります。@ABがシングルカットされヒット。
 ボストンの魅力は何といっても、ギターのオーケストレーションと絶妙なコーラスですが、このデビュー・アルバムは”ジョン・ボイラン”がプロデュースしているせいもあって、ウエスト・コーストの雰囲気が随所に見られます。ジョン・ボイランはリンダ・ロンシュタット、イーグルスなどとの関わりの中でウエストコーストでは名のある人です。ほどよくギターソロが入り、スケールの大きなものにしている@やプログレ要素が強いB、オルガンのソロが光るDなど聴きどころは多いです。ボストンがリリースした4枚のアルバムの中で比べた場合、いちばん自然に”サラッ”と聞こえるような気がします。アメリカからの”新しい波”は、後ほど大きな影響を及ぼすことになるなど知ることもなく静かに放たれました。宇宙船ボストン号の長い旅が始まったのです。

 

DON'T LOOK BACK(新惑星着陸) / BOSTON

1. Don't look back
2. The journey
3. It's easy
4. A man I'll never be

5. Feelin' satisfied
6. Party
7. Used to bad news
8. Don't be afraid

EPIC/SONY <1978年作品>

produced by Tom Scholz
トム・ショルツ(g.key.)、ブラッド・デルプ(Vo.)、バリー・グドロー(g.)、
フラン・シーハン(b.)、シブ・ハッシャン(ds.)

 幻想飛行に出発したボストン号は1年2ヶ月後には新惑星に着陸し、世界で600万枚のセールスをあげ、全米1位を獲得します。全体的に、トムとバリーのツインリードのギターバリエーションが増えていて、前よりも表現の幅が広がっているのがわかります。ハードなリフにオーケストレーションが加わり迫力のある仕上がりになったタイトル曲@。この曲には強いメッセージが込められているような気がします。6分を超え、ピアノとギターがうまく絡み合いメロディアスなC、二人のギターの掛け合いが心地いいF、ギターを前面に押し出したハードなナンバーGなどがあります。
 ボストンを初めて知ったのはこのセカンド・アルバムからですが、”ドント・ルック・バック”のメロディーは強烈で刺激的でした。しかし、このことは次のサード・アルバムと出会うことによって一蹴されてしまいます。

 

THIRD STAGE / BOSTON

1. Amanda
2. We're ready
3. The launch
(a.countdown b.ignition c.third stage separation)
4. Cool the engines
5. My destination

6. A new world
7. To be a man
8. I think I like it
9. Can'tcha say (you believe in me)
10. /Still in love
11. Hollyann

MCA <1986年作品>

produced by Tom Scholz
トム・ショルツ(g.key.)、ブラッド・デルプ(Vo.)、ギャリー・ピール(g.)、ジム・マスデア(ds.)

 CDのタスキには「驚異のサウンド・ファンタジー」と書いてありますが、これは間違いなく”驚異”だと思います。600万枚のセールス?6000万枚の間違いじゃないのか(それは無理?)、全米1位?そりゃそうだ!と思うくらいです。それほど私はこのアルバムを気に入っています。

 『ドント・ルック・バック』がリリースされてから8年を経過してから、このサード・アルバムである『サード・ステージ』は完成しました。EPICと契約を守らなかったことで訴訟問題となり、MCAからのリリースとなりました。おそらくトムの納得のいく作品は契約通りにはできなかったのでしょう。実質6年もの歳月をかけて『サードステージ』は作られたのですが、どの曲が何年に作られたかというのがジャケットに書かれています。トムはこのアルバムがリリースされる日を夢見て、日々スタジオワークをこなしていたに違いないでしょう。まさに驚異です。
 このアルバムにはスキがないです。曲の中身はもちろんですが、イントロやフェードアウトする部分にも予断を許さない緻密さがあります。またアルバム全体に”静と動”が繰り返され、そこに美しいメロディーと共にコーラスが絡み合い、幻想的な空間を作り出しています。逆に言えば、トムのカラーが出過ぎているということになるのでしょう。メインに使っているギターはレスポールwithディマジオ(おそらく自作?)らしいですが、どのようにすればこのような音が出るのでしょうか?
 @の「アマンダ」はシングル・カットされ全米TOP10ヒットとなり、一般的にボストンと言えばこの曲をさすようです。カラオケにもしっかりとあるので、自信のある方はぜひ挑戦してみてください!

 

WALK ON / BOSTON

1. I need your love
2. Surrender to me
3. Livin' for you
-walk on medley-
4. Walkin' at night
5. Walk on

6. Get organ-ized
7. Walk on (some more)
8. What's your name
9. Magdalene
10. We can make it

MCA <1994年作品>

produced by Tom Scholz
トム・ショルツ(g.key.)、フラン・コスモ(Vo.)、トミー・ファンダーバーグ(Vo.)
ギャリー・ピール(g.)、デビッド・サイクス(Vo.b.)、ダグ・ハフマン(ds.)

 前作リリースから待つこと8年・・また8年です。4枚目は壮大なメドレーを引っさげての登場です。ボーカルのブラッド・デルプが曲作りには参加していますが、歌を入れる段階でメンバーから抜けたため、バンドの印象が少し変わったような感じがします。というよりも、オリジナルメンバーはトムのみとなりました。しかし、ボストンサウンドのスタイルは変わり無く、トムの頑固さも健在です。巷ではデジタル録音が主流ですが、今回も断固としてアナログ録音で臨みました。ノイズ・ジェネレーターやサンプラーを使わずに、風の音なども実際に木の前で録音したものを使用しています。ボストン・フィルも参加し、スケールの大きな美しいバラードB、ハードなナンバーEなど相変わらず聞きどころは多いです。
 ライナー・ノーツの後半に「ボストンはあらゆる暴力と残虐行為に反対する」と英語で訴えていて、その団体への連絡先が示されているのも見逃せないところです。

 

GREATEST HITS / BOSTON

1. Tell me
2. Higeer power
3. More than a feeling
4. Peace of mind
5. Don't look back
6. Cool the engines
7. Livin' for you
8. Feelin' satisfied

9. Party
10. Foreplay/long time
11. Amanda
12. Rock & roll band
13. Smokin'
14. A man I'll never be
15. The star spangled banner
/4th of July reprise
16. Higher power (kalodner edit)

EPIC/SONY <1997年作品>

produced by Tom Scholz (John Boylan, Tom Scholz)
トム・ショルツ(g.key.Vo.)、フラン・コスモ(Vo.)、ブラッド・デルプ(Vo.)
カリー・スミス(hca.)、デビッド・サイクス(Vo.) etc..

 アルバム的指向が強いボストンにベストアルバムは必要ないように思いますが、新曲が入っているし70年代、80年代を思い返すという意味で、または新たなファンを獲得するために必要なのかもしれないのでしょう。@、A(O)、Nが新曲ですが、アルバムとして順番に聴いた場合、年代の区別がはっきりつかないような感じがします。つまりどれをとっても斬新なのです。Nの「星条旗よ永遠なれ」でもジミ・ヘンに負けることなくボストンらしいアプローチを見せています。

 結局、20年間で4枚のアルバムをリリースしました。つまり、赤ちゃんから成人するまでの間に4回写真を撮ったに過ぎないのです。ですが、その写真はあらゆる技巧と独創的なスタイルで現像され、この世に放たれました。それをこのベストアルバムは見事に証明しているような気がします。

 トムの完璧主義には恐れ入ります。