登山の四季        ヒロタンの独断と偏見の雑学講座 NO10

 5月の連休を過ぎると、そろそろ山スキーも終わりです。  低山にはイワカガミなど早春の花が咲き、雪の山にばかり行っていた私達には、新緑と共にその色彩がとても鮮やかで新鮮です。
 春山の特徴は≪日の長さ≫≪豊富な残雪≫です。
日が長いと言う事は一日の行動時間を長く取れると言う事ですし、豊富な残雪は、夏場ならヤブで行けないような所へも行けると言う事で、上越国境稜線などのベストシーズンです。
越後三山から巻機山、谷川岳や荒沢岳、あるいは平ヶ岳を越えて尾瀬へといろんな縦走が考えられます。 (どのコースもヒロタンのお奨めです)
 『長い縦走コース』『長時間の行動時間』が可能なのがこの時期の特徴ですから≪体力を付ける≫のにもってこいの季節です。
 『体力』は登山の基礎です。
大チョウナ沢やオツルミズ沢を日帰りで登れたのも、技術だけではなく『体力』と言う基礎が有ったからこそです。
体力は上越国境稜線などを暗くなるまで歩き続けて養いました。 時には夕食を食べる元気も無く、甘い紅茶などで食事のためのエネルギーを補給してからの夕食でした。
そうした努力の甲斐有って、二王子岳を越えて門内岳まで一日で歩けたり、山菜やキノコを採りながらもみんなと一緒に歩けるのです。

 春山は体力を養う絶好の季節です。ぜひ長い縦走にチャレンジし、体力を養って下さい。

 梅雨の山は雨ばかり降り、みんなに倦厭されそうですが、意外と晴れ間も多いものです。
雪の消えた後からハクサンコザクラなどの可憐な花が咲き、ヒメサユリの香りに蒸せるのもこの時期です。 また雨に煙る尾瀬も静かで良いものです。

春山から夏山への過渡期として捕らえるのではなく、季節の移ろいを感じてください。

 色鮮やかな花々が咲き競い、いよいよ夏山本番です。
初心者でも3000m級の山を満喫できるこの時期、新人をどんどん山へ連れて行き、素晴らしい景色や色とりどりのお花畑など山の魅力をたっぷりと体験させ、会に定着させるようにしましょう。
 ≪感動≫が有るからこそ、苦しみに耐えて山へ登るのです。
山は≪自分の意志≫で登るもので、決して他人に押し付けられて登るものでは有りません。
感動によって≪山へ行きたい≫と言う意志は増幅され、より高度な山行を望めばレベルも上昇して行きます。

個人のレベルも他人に押し付けられて上がるものでも有りません。  また個人のレベルは、その人がどんな山行をやりたいかで決めるべきもので、他人がとやかく言うものでも有りません。

 そして夏山の一番の楽しみは≪沢登り≫です。
沢登りの魅力を書き綴ったらきりが無いので止めますが、新人も誘われたらぜひ参加して下さい。
私も一時期は夢中になり、単独で沢へ通い詰めました。
雪の降る頃まで沢登りを続け、東不動沢を登った時には八海山からの縦走路にアイゼンの足跡が有ってビックリした事も有ります。 さすがに地下足袋では冷たく、足にオシッコをかけて一時の暖を取りました。
沢はそこまでしても登りたいほど魅力的です。
 今は会の維持のために『自分のやりたい山行だけをする』と言う訳には行きません。
しかし私も山岳会に入り、いろんな人達と山行を共にし、いろんな楽しみ方を学びました。  おかげで自分の山行の幅が広がり、いろんな登り方ができるようになりました。
 オニギリと缶ビール(350ml)1本で沢を登ったり長い縦走に夢中になり、知らず知らずのうちにレベルアップしてきました。
しかし、一輪の花や朝日に輝く草の露、一枚の落葉にさえ感動する『心』を郁ちゃんから学びました。
おかげで夜勤帰りの車を停めたり、鍬を持つ手を休め、見なれた日常の景色にさえ感動して見入ってしまいます。  日常の景色の移り変わりに感動できる事はとても幸福な事と思います。 これほど豊かな心になれたのも、いろんな人と山へ行き、多くの感動を体験できたからだと思います。

夏山は初心者でも簡単に山へ登れ、感動を味わえる季節です。さぁ〜山を始めましょう !!

 華やかで色とりどりだった花も紫など落ち着いた色に変わり、朝の冷え込みにを感じる。
登山者で賑わっていた山々も、いつのまにか人影が減っている。
山頂の草原に寝転ぶと、草の葉先がキツネ色へと変わり、赤とんぼが群れている。 夏の射すような陽射は和らぎ、やわらかな陽射を浴びて昼寝をすれば、赤とんぼが羽を休めに来る。

華やかだった夏の賑わいが終わり、人生の最盛期を過ぎた自分のようでチョッピリ物悲しい。

 やがて紅葉が始まると、山も再び賑やかさを取戻し、飯豊や朝日の山小屋も超満員になる。
この時期は天候も安定し、青空の下、錦をまとった艶やかな山を満喫しましょう。
ただ、もうこの時期の山には冬が静かに忍び寄っています。  寒気の南下と共に吹雪きに見まわれ、山小屋を一夜で真っ白な御殿に変える事も有ります。

赤く染まった葉っぱに白い雪もきれいですが、寒さに対する用心だけは忘れずに…

 下界にはまだ紅葉の残る晩秋の山も、山頂部には雪が積もり、冬山気分を味わえます。
晩秋から初冬にかけての山の特徴は≪日の短さ≫≪中途半端な積雪≫です。
日の短さと共に時雨模様の天気が続き、さらに中途半端な積雪は登山道を雪で隠し、かと言ってヤブまでは埋まっていないく、登山には不適切な時期です。  そしてこの時期の雪の降り方、積もり方は、その年によって変動が大きく、予測も困難だし、同じ山でも雪の状態によっては困難度が大きく違います。
 11月下旬の菅名岳を雪のために山頂も踏めなかったし、同じ時期の燕岳〜餓鬼岳では雪が無いために水に苦労した事も有ります。  降雪予測が難しいため、会報に載せるような山行計画は立てにくくなります。
 こんなふうに書くとこの時期は欠点だらけで「山など行かないで忘年会で飲んでいた方が良い」と思われそうですが、とんでも有りません。
冬山に比べ、はるかに簡単に、安全に冬山気分が味わえます。
1、2月に比べれば晴れ間も多く、たいしたラッセルも無くて雪の山頂を踏め、青空の下に白く輝く山々、木々に咲く真っ白な雪の花を見れば感動に震え、思わず銀マットを敷いて≪雪見酒≫と行きたくなります。
この頃ならピッケルだ、アイゼンだ、雪上訓練だなどと騒ぐ必要も無く冬山の≪良い所取り≫が出来ます。

たしか田沢さんの文章にも「長靴で良いからと二王子岳に誘われ…  無理無く冬山へ導いてくれ…」と冬山を始めるきっかけを書いて居ました。 新潟山岳会に入って2年くらいは年に数回の山行しかしなかった彼女ですが、その後の活躍は目を見張るばかりでした。

 そしての美味しい季節です。
夏なら山へ生物は持って行きにくいが、この季節なら大丈夫です。
そして登山者の激減するこの時期は山小屋も貸切り状態が多い。
これだけ好条件が揃えば当然≪宴会山行≫です。
白鳥山宴会山行では、すき焼き鍋を持ち上げて本格すき焼き。 冷凍にして持ち上げた刺身の一部はまだシャリシャリ状態で、とても夏山では考えられない食事です。

みなさ〜ん、ヒロタンと宴会山行に行き、山で美味しい御馳走を食べましょう !!  

  晩秋から初冬の山は夏山から冬山への過渡期ではなく、冬山の準備期として重要な時期です。

降雪予想が困難でどの程度の山へ行けるの か分らなければ、山頂にこだわる必要は有りません。 山頂にこだわれば安易な計画しか立てられません。 (山頂を踏む事が成功とも思いませんし、そんな事で山行の成功か失敗かなど考える必要も有りません)  雪景色を眺め、雪と遊び、思いっきりラッセルの真似事をして良い汗をかければ、美味しいビールも飲めて満足です。

 そして宴会山行は≪ボッカ訓練≫とも言う。
重い生物や飲み物をたっぷり持って雪山を登るのですから、十分に冬山の訓練になります。
ただ私は『訓練』などと称して強制的に人を集めるのは性に合いません。 呼称などどうでも、同じ重さの荷物を持って同じ所を登れば、中身が石ころであろうが何であろうが、同じ効果を得られる。 それなら誰もが気楽に参加できる≪宴会山行≫の方がヒロタンの性に合っている。
どんな山行をするかは個人の問題なので、宴会山行をトレーニングと位置付ければ重い荷物を担げば良いし、楽しむだけなら軽くしてもかまいません。
最初から荷物の平等な分担など眼中に無いヒロタンですから、個人の意識の問題で、担ぎたいだけ担げば良いし、個人装備だけでもかまいません。 たとえ個人装備だけでも、参加することに意義があります。 それだけでも、その人にとって何もしないよりは、ずっと役に立ちます。

 冬山の準備期として、新人の方や「冬山なんて」と言う人達も、この時期なら気楽に冬山気分を味わえます。 冬山入門として位置付け、本格的な冬山へと入って行くのも良いし、この時期だけの『気楽な冬山気分』を味わうのも良いでしょう。

 身体を突き抜ける寒さ、息苦しいまでの吹雪、雪面と空間の区別もつかないほどのホワイトアウトの中のルートファインデング、アイゼンの刃先だけで支えるアイスバーン、厳冬期の山は生と死が紙一重です。
しかし威厳に満ち、神々しいまでの真っ白な山に身を置く時、緊張感の中に、なぜか魂までもが安らぎと充実感を得る。 山へ登る時、困難が大きければ大きいほど、そこから得られる満足感は大きい。

充実した生活を送っている人も、欲求不満な人も、冬山では十分な満足感を得られます。

 雪煙を舞上げて滑る山スキーは、この時期の醍醐味の一つです。

 3月に入れば晴れ間が多くなり、雪も落着いてラッセルも楽になる。
4月になれば天候も雪も安定し、壷足でも自由に雪山を歩きまわれる。
 いよいよ山スキー本番です。  
夏なら行けないヤブ山も広大なゲレンデとなり、自分だけのシュプールを刻めます。
もう登りはTシャツでも汗ビッショリ。 でも心配は御無用、すぐに雪でビールは冷やせます。
 この時期になれば日中の陽射で雪は柔らかくなり、日帰りではアイゼンは不用です。  冬眠中のあなたもどんどん雪山へ行って、夏には味わえない雄大な景色を味わいましょう。
でも、雪上訓練は受けていないし… 心配ご無用。
アイゼンやピッケルの使い方は雪上訓練だけで学ぶものでは有りません。 実際の山行でも必要に応じて教えます。
初めての人や、雪上訓練を受けただけの初心者をほったらかしで歩かせ、『訓練』『訓練』と唱えるだけでは何の意味も有りません。
 アイゼンが無ければ、有っても技術が伴わないのなら、雪の状態が悪ければ引き返せば良いことです。
巻機山の山スキーで7合目から上はアイスバーンでした。  私達はアイゼンで登りましたが、ニセ巻の下から引き返したパーティもたくさん居ました。  壷足で登った人も、山頂からスキーで滑った人も居ました。
いろんなパーティが居ましたが『どうするか』は各リーダーがメンバーの実力や装備を見て、何をやりたいかを元に決断する事です。
 ニセ巻の下から引き返したパーティに「アイゼンを持って来なかったから(山頂を踏めなくて)失敗したんだ」などとほざいたところで、本人達は山スキーが目的で来たのなら失敗などとは毛頭思っていません。 ただの『要らぬお世話 !! 』と言われるだけです。
 この時期は、ハードなことを望めばいくらでもハードな山行も出来ますが、また、初心者でも安全で気楽に楽しめます。
冬眠していたあなたも『春眠暁を覚えず』などと言わず、雄大な景色を眺めて冷たいビールを飲みに行きましょう。
初冬の山とはまた別の雪山気分が味わえます。

 

 一年間の山行形態をヒロタンの独断と偏見で綴って見ました。
しかしこれだけではなく、角田山へ雪割草を見に行ったり、山スキーの練習にゲレンデへも行きます。また晩秋の『山の温泉ツアー』も良いですネ。
ハードな事ものんびり山行も幅広くやります。そうです、この許容範囲の広さがヒロタンの特徴です。
その時その時の気分により、いろんなレベル(いろんな人を対象とした)の山行を楽しみたいと思います。
『楽しい山行=楽な山行』では有りません。それなら山など行かないのが一番楽です。
『楽しい山行=満足感のある山行』だと私は思います。
思いきり汗を流す事に満足感を得る人も居れば、ピリピリの緊張感の中に満足感を感じる人も居ます。 素晴らしい景色やお花畑の中でのんびり過ごす事で満足感を得る人や、美味しい御馳走に満腹感、いや満足感を感じる人も居ます。 山の温泉に浸って満足感に浸る人も居ます。
『達成感=満足感』の人も居ますし『心の安らぎ=満足感』の人も居ます。
何によって満足感を得て、どんなことで幸福感に浸れるかは一人一人違います。  一人一人価値観が違うのですから、他人がとやかく言うものでもなければ、押し付けるべきものでも有りません。
いろんな価値観の人が、各自思い思いの、いろんな山行をすれば良いと思います。  いろんな山行をすれば稜友会の幅も広がり、いろんな新人が入って来ても対応できて、稜友会の発展につながると思います。

  許容範囲の広いヒロタンは、いろんな山行に価値観を感じ、満足感が得られる『幸福者』です。

 体力、技術力は個人差があります。特に稜友会はトップのレベルが高く、それに続く人達が少ないため『逆T字型』をしています。 本来ならピラミット型が理想で、それが会の厚みと言えます。
かといって、レベルアップだけをあせってもしょうが有りません。
越後三山を一日で歩く人から見れば駒ヶ岳など朝飯前でも、駒ヶ岳だけでも精一杯で、それだけで充実感に浸って満足する人も居ます。 そんな人をレベルが低いと批判しないで温かく見守って育てて行きたいと思います。 明日には越後三山を一日で縦走できるまでに育つかもしれません。
あせらず、ゆっくりと階段を上がるように… 
たとえ足踏み山行(同じ程度の山行)を続けても、必ず成長します。どんなに高い理想を掲げても、山へ登らなければ実力は低下します。

ヒロタンのリハビリ山行に付合ってくれた佳代ちゃんは随分とパワーアップしました。

 またいろんな山行を進めて行く上に≪訓練山行≫は必要なことです。
しかし大切なのは≪どんな山行をするか≫と言う『目的』です。
訓練とはその手段であって『目的』では有りません。
夏山しか行かない人に雪上訓練など不用です。 そんな人にピッケルを買わせても、コレクターとしては満足できるかも知れませんが、山行には役に立ちません。
せっかく雪上訓練を受けたのなら雪山へ行きましょう。 訓練を受けたからピッケル、アイゼン技術が身に付いたなどと思うのは間違いで、実際の山行で繰り返してこそ身に付くのです。
雪山へ行く気のない人に雪上訓練を受ける必要(資格)は有りません。 せっかく受けた訓練を活かすのは実際の山行です。 そうすれば山の世界も広がります。
 稜友会ではいろんな訓練を計画しています。 それを受けて実際の山行に活かし、自分のレベルを上げて行けば、山の世界もどんどん広がって行きます。 

                                    

 ヒロタンの山行記録