人の育て方

 
 私は新人が例会に顔を出すと、できるだけ早く山へ誘いました。
守門岳や浅草岳、二王子岳など、初心者でも気楽に登れる山へです。
自由に歩かせて話を聞けば、その人がどの程度の体力や技術かがわかります。
山に対する思いや、何に興味を持っているかも知る事ができます。
それを元に、どんな山行に誘うかを決めて行きました。
そんな中でも伸びそうな人には、その人に合わせた山行を企画して行きました。
無理する事なく、その人に合った山行を続ける事が、一番その人を伸ばす事だと思ったからです。
 
 初心者には初心者の学ぶべき事が有り、中堅者には中堅者の学ぶべき事が、そしてベテランにも。
このように無理なく≪段階を踏んで育てる≫事こそ、一人前の登山者に育てる事だと思います。
しかし 『段階を踏んで育ててまともに育った例がない、山とはこう言う物(キツイ)だと思い込ませなければダメだ』 と言われました。
≪思い込ませる≫ など ≪自分で考える事≫ を否定するような育て方は最低です。
 会社でも ≪いかに内容を理解して仕事をさせる≫ かが大切なポイントです。
毎日 同じような仕事でも、その時その時の内容を理解していなければミスは起き易いし、品質の向上など望めません。
その為には、自分で考えさせる事です。
自分の職場を見まわして下さい。
こんな物だと思い込み、自分で考えない人の仕事内容を…
 
 『ヒロタンはあまり教えない』 と言われた事があります。
確かに細かな事をアアしろ、コウしろとは言いません。
その代わり 『どうしようか?』 と良く聞きます。
稜友会の中でも最もハードな山行を単独で続けてきた私が、決断力がなくて聞くのでは有りません。
『どうしようか?』 と考える事で、身に付けさせて行くためです。
 
 稜友会の沢登りでは 『足はそこ、手はここ』 と言う具合に、矢継ぎ早の指示が飛び、レベルの高い沢を早く登らせる事に専念している。
ヒロタンは簡単な滝なら 『どこを登ろうか?』 と聞きます。
その人の実力で登れそうなら、そのまま登らせます。
そうでなかったら私が言われたルートを登り、ザイルを付けて登らせます。
それで登れなければ、私の目で見たルートを登らせる事も有ります。
  私が沢に連れて行った人が 『他の人と行った時は足元しか見ず、無理やり登らされていた』 と話していました。
『今回は滝を見て自分で登った実感が湧き、沢の楽しさを知った』 と言っていました。
他の人なら見向きもしない簡単な滝だからこそ、初心者でも簡単なアドバイスで登れるのです。  
 滝も見られないベテランなんて…
何年も沢をやっている人が、『見ていないうちに登ったから、わからなくて登れない』 と言っていました。
 
 稜友会の育て方は、スキーの初心者を突然上級者コースへ連れて行くようなものです。
ギャァギャァ喚きながら数m刻みで滑らせる。
そしてハイレベルなスキーに連れて行ったと自己満足している。
 それより初心者は初心者コースで学ぶべき事も多いはずです。
スキーの中心に乗る事やエッジの切替え、エッジングなどの基礎を身に付けなければなりません。
そして何よりスキーの楽しさを味わわなければネ。
それがスキー上達の、一番のポイントです。
 
 『こんな物だと思い込ませなければだめだ』 をそのまま実行したエピソードが有ります。
新人の体力も考えずに無理な山行をやり、吹雪の中の雪上訓練はヘッデンで帰って来ました。
その後、その新人に声を掛けても一緒に行く事は有りませんでした。
寅さん曰く 『雪上訓練は成功だったんだ』 と。
わずか2〜3回に山行で新人を潰しておいて、何が≪成功≫だったんだ !!
 
 ≪天の声≫ と称し、リフトの上からも怒鳴っている人が居る。
どんな技術にしろ、最後の先生は自分なんだから…
常に自分自身で反省し、自分でより良い方向を模索して行かなければなりません。
一日中怒鳴られて居たのでは、自分で考える力など育つはずが有りません。
教えると言う事は、その人自身が考え、自分で技術を高めて行く手助けに他 有りません。
育てると言う事は、その人が自ら考えて判断する力を養う手助けだと思います。

 

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