御御御付 前編
休みの日でもイルカの朝は早い。きちんと起きてぱたぱたと洗濯なぞ始めてしまう。
今までなら其処に掃除と言う項目も入っていたのだが、最近寝汚い居候(?)が
転がっている為侭ならなくなっている。
とは言え、イルカの日常に大きな変化はなかった。
「おはようごさいまぁす〜」
「もう今日は、ですよカカシ先生。」
ぼ〜と起きあがって来た銀色の毛玉に、イルカが挨拶を返す。
とは言え、上忍任務明けの人間に説教する程非道ではないイルカはそのまま
洗い上がった洗濯物を抱えて外に行こうとしていた。
中忍宿舎の裏手にはでっかい物干しが作ってあって、
汚れ物の発生率の高い忍達の洗い物が日々はたはたと揺れていた。
「机の上に朝御飯のお握りが作ってあります。味噌汁は瓦斯台の鍋ん中ですから
自分で暖めて下さい。」
言って、出で行ってしまう。
何せ、人口と洗い物の量に対して物干し場は少々狭い。
隙を見付けて素早く干さねば行けないのだ。
そして最近イルカ宅の洗濯物は(不本意ながら)倍化しているので、ある。
何事も戦いだった。
「はぁい…」
まだ半分惚けたままカカシは台所へと向い、火を着ける。
そして正気に成り切らぬままほけら〜と、カカシの入金のお蔭で新規購入された
小鍋の柄を握って立っていた。
さて、貴方は突沸という現象を御存知だろうか。
電子レンジ等が良く知られて居るのだが、鍋で味噌汁を加熱しても起こる場合がある。
但し@ステンレスの鍋で
A具の少ない
B豆味噌を使った味噌汁を
C掻き混ぜず一挙加熱した時、だ。
まず、滅多には起こらない。だが今
@ステンレスの鍋で
Aイルカが食べた残りで具の減った
B特売の八丁味噌で作った味噌汁を
Cカカシが混ぜずにバーナー全開で加熱していたのだ。従って…
「うわっっ!!」
突然、鍋が爆発した。火薬等とは違うのでどっかんとは行かないが、鍋蓋が吹っ飛ぶ。
鍋の柄を握って惚けていたカカシは咄嗟に鍋を放り出し…
「ギャッッ!」
「イ・イルカ先生っ」
折悪しく、戻って来たイルカにぶっ掛けたのであった。
「ごめんなさいっごめんなさいっっ」
「もう、良いですよ。避け切れなかった俺も悪いんですから。」
気温の高さに、Tシャツ姿だったのが災いした。
咄嗟にかわし切れなかった味噌汁を二の腕に受けてしまったのだ。
沸騰していた所為で、重度では無いものの右腕が赤く火傷してしまっている。
「とは言え、このままでは拙いですし。」
明日から水練の授業が在るんです。やはり水泳は傷にも良くないだろうし
「子供達に余計な心配かけそうですから。」
ちょっと忍医の所行って来ます。
「術を使えばこの位すぐ治りますからね。」
にっこり笑うイルカに
「俺も付き添いますっっ」
カカシが叫ぶ。しかし
「嫌です。子供じゃあるまいし付き添いなんて。」
素気無く却下されてしまった。そして目に見えて落ち込むカカシに対して
「その代わり『此処の』掃除お願いします。」
まさか病院帰りの俺に片付けしろ、なんて言いませんよね。
顔を微妙に引き攣らせての、イルカの言葉に
…カカシは全力で頷いたのだった。
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