うちはイタチと対峙したとき、カカシは、こいつ里に戻ってきて
再就職してくれないかなあと思っていた。
イタチが戻ってきたら、写輪眼関係の任務もサスケの育成も全部押し付けて、
自分は楽に過ごせるのに。
大蛇丸の木の葉崩しのせいで、里の力が落ち、カカシの勤務時間はエライことになっていた。
せっかく両思いになった愛しいイルカとも、もう1ヶ月もすれ違い状態で、
心も体も干からびきっていた。
カカシの思いを他所に、イタチは写輪眼剥き出しで敵対してきた。
本家本元の意地を見せたかったらしい。
しかしイタチの攻撃はカカシにとって屁でもなかった。
「月読」とかカッコつけな名前の術もしょせんはただの催眠術。
カカシにとっては子供だましだ。
そんなものにひっかかるほどのピュアさは欠片も残っていなかった。
逆にこっちから瞳術をかけて、里のために働くように洗脳してやろうかと、
写輪眼を回し始めて、ふと、思った。
チャンスだ、これは。
カカシは内心でニタリと笑い、うわーっとかぎゃーっとか適当なことを叫んで、
イタチにやられたふりをした。
カカシがイタチにやられたと大騒ぎになって、意識のないふりをしたカカシは
上忍仲間の手によって自宅にかつぎこまれた。
早くそれをイルカに知らせろ、とカカシは焦れていたが、サスケが乱入してきて、
さらに騒ぎが大きくなり、上忍たちは右往左往して、それどころではなくなってしまった。
くそ。気が利かない奴らめ。
しかたなくカカシは影分身を自宅ベッドに寝かせ、自分でイルカの元に行くことにした。
イルカは自宅にいて、クナイをせっせと磨いていた。アカデミーは休校状態で、
イルカにも明日朝から里外の任務があった。
「あ、カカシ先生!どうしたんですか?」
「イルカ先生。俺、うちはイタチにやられたみたいで、気がつくとアナタのところに来ていました。
体は自宅のベッドで寝ています。俺、生霊なんですよ」
「ええっ!」
あんぐりと口を開けたイルカが可愛い。
その口の中に舌とかもっと熱い塊とかを捻りこみたいとカカシは切に願った。
「だ、だいじょうぶなんですか!」
「わかりません」
「そんな…」
うるうると潤む黒い瞳にするどく反応してカカシの腰が疼く。
もう1ヶ月もおあずけ状態だった。
「イルカ先生」
抱き寄せてキスすると、我慢などできなくなった。すぐに押し倒して、裸に剥く。
「だめです。カカシ先生。俺、明日任務だから。だめです」
「平気です。俺、いまは生霊だから。肉体的なダメージはないはずです」
「でも。あっ。やっ。カカシ先生。なんか熱いです。熱い」
「気のせいですよ。俺、生霊なんですから」
「でも。あっ。ちょっと痛いかも」
「気のせい気のせい」
そのままカカシは朝までたっぷりとイルカを可愛がった。隅から隅まで1か月分。
翌朝はイルカを背負っていっしょに任務に行った。
影分身を適当に寝かせておいて、本体の方のカカシは生霊だと周囲にも言い張って、
イルカにぴったりとくっついていた。もちろん夜も。
受付所の事務方は意外とちゃっかりしていて、
イルカにAランクやSランクの任務をバンバンふってきた。
イルカとらぶらぶ任務ならまあいいかと、適当にこなす。
あんまり忙しくて夜の素敵生活に響きそうになると、生霊の呪いを持ち出して
事務方を脅しておいた。
幸せいっぱいの日々だったのに、せっかくのイルカとの蜜月もあっという間に終わってしまった。
ナルトが綱手を連れて戻ってきたからだ。
カカシは「わ!やばい。仮病がバレる」と慌てた。
「たったふたりの賊にやられるなんて」
たっぷりと嫌味を言われた。綱手の目がそんなわけねーだろ!と口ほどにモノを言う。
やっぱり、バレた。
「お前も人の子だったんだねえ」
ナルトからイルカのことを聞いていたらしく、目をかまぼこ型にしてぷぷぷと笑う。
ちえっ。ババアめ。馬に蹴られるぞ。
また任務に明け暮れる忙しい生活に戻って、カカシはがっかりした。
もう一度イタチが戻ってきやしないかと期待したけれど、その気配はない。
どこでどうしているのものやら。
格下の三下にやられたふりをするのは沽券に関わる。
イルカに「カカシ先生ってたいしたことない」と思われるのは絶対いやだ。
せめて火影とか伝説三人クラスくらいでないと。
そういえば大蛇丸はどうしているのだろう。木の葉崩しと息巻いていたけれど、
一度の失敗であきらめるようではあの人もたいしたことない。
ちょっと手紙でも書いてみるか、とカカシは筆をとった。