ケセラセラ 3

「まぁだ、頑張ってやがるな。」
 

ちびちびと、秘蔵の『岩』の酒を舐めながら呟く上忍に。

「そうですね、本当根性だけはあるみたいです。」

肴の皿を並べながら男は小さく笑っている。
『賭け』の勝者は、敗者の為に腕を揮ってくれたのだ。

「あれから、結局『代用』も使ってないみたいだな。」

好みの肴に目を細めながら箸を取れば

「『里』に居る、と言ったからですよ。下手にアソんで、
それが理由で振られたら
と考えたみたいです。」

くつくつと笑いながら杯を乾す、男。

「今更の自粛か。阿呆だな。」

やはり含み笑いで応じてやると、男の笑みが一層深くなる。
本当に、今更
なのだ。 取り繕ってどうなるものでもない。

「三代目は何も言ってねぇのか、アイツもそろそろ三十路だろうに。」

と、『火影の秘書』の二つ名を持つ相手に水を向けて見ると

「『あの人だけが欲しいんです。女なんて押し付けても無駄です。
って言うか変な噂が立つ前に刻みましょうか』だそうです。

実際、里が斡旋してきた女とは3ヶ月間『添い寝』だけ、だった見たいですし。」

 三代目も匙を投げられました。あの人が其処まで入れ込むんなら仕方ない、と。
 手酌で酒を注ぎながら男が内情を暴露する。

「ま、婚姻させなくても血を残す術はありますから。」

あっけらかんと言われて。

「お前の方はどうなんだ?三十路近いのは同じだろ。」

 と矛先を男自身に向けて見る。

「だから。此処まで入れ込んでるのが、無駄に実力のある上忍な訳ですから。」

下手に結婚して。うっかり正体がバレでもしたら

「自分だけならまだしも、妻子の身に危険が迫りますから。
怖くて『無理』も出来ません。」

 それこそ血だけならどんな手段でだって残せますし 『里』からも無理しなくても良いと言われてます
 にこにこと。世を果敢無みたくなる様な事を言う相棒に

「それで良いのか?」

と訊ねて見る、上忍。

彼の方はちゃんと、悪からず想う相手との間にそれなりの関係を築いていたり、する。

「余り良くも無いんですけど。この間、あの人と顔を合わせたんで。」

三代目から見合い話が来たって言ってみたんです そうしたら

「好い人だと良いですね、お幸せにって。あからさまにホッとされてしまいました。」

笑う顔に妙な凄みを感じて、僅かに肩を竦める。

あんな奴でも『捨てた』相手が何時までも一人身なのは、やはり居心地悪いらしい。

「そう言えば。とうとう元7ナルト達が全員、上忍に昇格したんですよ。」

嬉しそうに本心から笑う相棒に。

「そりゃあ目出度いな。」

杯を掲げる。ウチの奴等も頑張っちゃ居るがまだ『全員』では、無い。

「それで昇格記念として、全員が一対一での『鈴取り合戦』やるんだそうです。」

ナルトがね、良かったら見に来てくれないかって 自分の『成長』を見せたいらしくって
綻ぶ笑顔は、嘗ての教え子の心根に対してだけではないだろう。

「演習場の貸切の申請も出てましたし、丁度良いかなと。」

これなら被害も最少で済みますし 

そう言う男の「被害」が何を示すのかは敢えて訊かない方が良いのだろう。

「ほぅ。で、遂にアイツと直接対決か?」

元生徒の前で挑まれちゃアイツも拒めねぇだろうしな
そう、呟く上忍に。応えの代わりに男の壮絶な笑みが向けられた。
どうやら本気、らしい。

愉しそうで何よりだ。」

だから。嗤って日時を訊き止める事で、上忍もこの話題を終わらせたのだ。





数日後。気殺して『覗き』を敢行した上忍は。

初めて見る同僚の強烈な間抜け面に、人知れず腹を抱えてのた打ち回ったと言う。
そして彼は、愉し過ぎる見世物から数日後。
額宛を地に擦り付けて、中忍相手に願い奉る銀の同僚という。
更なる道化をも目にする事が出来たのだった。






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