ケセラセラ 4

鬱蒼と茂った常緑樹の森の中。小結界を張ると、髭の上忍は気配も音も一切を遮断した。

これ位はやらないと『覗き』もなままならない奴等、なのだ。

まだまだ嘴の黄色い3匹は兎も角、残りの2人は此れでも危うい。

…最も、一方は気にしないだろうけれど。

と、ギリギリ準備は間に合った様子で。

 

『あんた、何で此処に居るの?』

傲慢不遜なボケ野郎の、寝惚けた様な声がした…

 

『俺が話したんだってばよっ』

相変わらず元気な金色の子。

背こそグングン伸びて、恩師に追い付かんばかりになってはいても。

中身はまだまだ悪ガキのままだ。

とは言え二人の師の…特に相棒の影響を最も強く受けたこの…新米同僚は、

「仲間を大切にする」「意外性No,1」としてコツコツと仲間を増やしていた。

『そしたらイルカ先生も見たいって。』

大好きな「先生」に成長した自分をどうしても見て貰いたいらしく、

何処か嫌そうな元「上忍師」に対し大声で説得している。

『な、サスケとサクラちゃんも良いだろっ』

どうせだったらイルカ先生にも見て貰いたいよなっ クルリと振り返って矛先を変えた仲間に、

『そうね、先生とも随分久し振りなんだし。』

『…折角だ…』

残りの2人も賛同した。何だかんだ言ってチームワークの良い班なのだ、

相棒にも良く懐いてるし。…癖は強いが。

上忍が自分処の奴等を棚に上げてそう、思っていると。

『ま、良いでしょ。…邪魔になんないでよね。』

やれやれとでも言いたそうな風情で。銀の同僚が、頷くのが見えた。



一回戦。

今回は、双方の腰に「鈴」を付けての奪い合い…と言う形態になったらしい。

勿論、術・技使い放題…だが

『良識の範囲内にいろよっ』

と男が釘を刺していた。…確かに、子供達の方は熱くなるだろうから、

正しい判断である。

そして。ジャンケンに勝利したのは、先刻から頑張っていた金色坊主だったらしい。

「順番待ち」の見学者を脇に避けさせるとすぐに、戦闘開始となる。

パワーとスタミナは特一級。技も、破壊力だけなら里でも屈指と言えるだろう。

加えて、その有り余るチャクラを用いてスピードの方も研鑚したらしい。

典型的な白兵戦向き、だ。

だが

 

『っ畜生!』

どれだけ速かろうと、強かろうと。当たらなければ意味は無い。

実戦経験豊富な銀色は、見事に紙一重で全ての攻撃を躱し続けて。

一撃必殺を狙って大技を練ろうとした瞬間を突かれ…終了した。

中々の見物だった。あれだけ動けるなら安心して組めそうだ。

だが、精神的には幼い様なのでその辺りは考慮すべきだろう。

「上官となる者」の眼で合格点を出しながらも、髭の上忍は冷静に考える。

楽しみに来たのは事実だが、良い機会なのだ。

今後の為にもしっかり彼等を観察して置きたかった。

そして。そうこうしている間に選手が交代した。


序で二回戦。

写輪眼同士の戦いは、当然の如く経験地の差を顕わにした。

同じように眼を使い、チャクラで加速した動きで戦うのならば。写した「術」の数と

それを使うタイミングを良く知っている方が当然有利な訳だ。

よって、早い展開で終了してしまった。

…とは言え、あれだけ出来るなら充分使える。

言葉にこそ出さないものの、酷く悔しそうな正血統の持ち主を見ながら上忍はそう、分析した。

金色とは逆に隠密行動向きだろう。少数精鋭…といった任務向きか。


そして、三回戦。

合図と共に行き成り煙玉を使ったくの一は、その間に幻術印を組んだのか

…此れまでの二人と違って気殺した二人の、静かなる戦いから始まった。

静かに仕掛けられた幻術を影分身の様に利用して時に暇無く、

また唐突に何一つ動かない状態に…と目まぐるしく状況を変えて行く。

そして、これは離れた場から見ているからこそ判ったのだが…

多重に幻術を掛けて「場」そのものを偽りへと変えようとしている。

ちょっとやそっとの幻術破りでは効かないだろう、術。

…かなりの高レベルだ。紅にこそ及ばぬものの、相当な使い手と見て良いだろう。

それに確かあの少女は医療忍術も学んで居た筈、チームに一人欲しいタイプと言えそうだった。

髭の上忍がそんな事を考えている間にとうとう「写輪眼」が使用され。

それでも、幻術を破られた瞬間に見事なチャクラコントロールで動いた少女は

結局…「元上官」に伸ばした手を捕らえられて終了した。

最後まで諦めない辺りが益々好み、だったりする。…部下として、だが。

 

 

 

『三人共、腕を上げたなぁ…』

感慨深く呟く声に、意識をそちらに向ければ。

にこにこと「受付の笑顔」を作って、男が銀色に勝負を申し出ていた。

折角だから一度位自分もやって見たいのだ、と。

だが。

 

『でも先生…』

ありありと見える困惑に。「中忍なんかじゃ…」と書かれていた。


そして、それを敏感に感じ取る「新米上忍」達が居る。

『じゃ、先生っ俺とやるってばよっっ』

叫ぶ金の子供に対し。

『…俺も良いぞ。』

『あ、私でも…』

可愛い元教え子達が願い出た。

 

『お、有難うな。…そうだな、皆の動きも間近で見たいし。』

ポンと手を打った男は

『良し。…幸い鈴も3個あるし、お前達が「カカシ先生」の役でどうだ?』

愉しげに提案され。子供達が疑問を顔に出す。

『お前達の「鈴」を俺が取りに行くって事だ。つまり俺が鬼ごっこの鬼だな。』

場所をこの演習場内って区切って置けば良いだろう。

『サクラの隠行はさっき見れたけれどサスケとナルトのはまだ見せて貰って無いし、な。』

 

片目を瞑って笑う師の姿に、「お前等苦手だっただろう」と言う心の声を聞き付けたのか…

新米上忍達は戸惑いながらも頷いた。

『バッチシ俺の成長を見せてやるってばっ』『…ウスラトンカチ』『頑張ります。』

元気な子供等に対して

『あ〜でもそれじゃあイルカ先生が鈴取れなかったら終わんないんじゃあないの?』

…水を注す銀色である。が、それには

『それは、カカシ先生が適当な処で終了宣言して下さいませんか。』

俺も熱くなると止まらなくなる性質ですし

相棒の言葉に。

 

『はぁ…ま、良いでしょう。』

やる気の無い返事をする銀が居た。

新米とは言え上忍は上忍。万年内勤中忍では相手にならない…と思って居るのだろう

あれだけ覆面その他で顔を隠していながら内心がダダ漏れってのも問題な奴だった。

『では。…宜しくお願いします。』

腰に鈴を付け。用意が整った処で、男は言葉を正して頭を下げる。

元教え子とは言え上忍は上忍、こう言うケジメの付け方はコイツらしい処だ。

 

『あ、はい!』『お、おう。』『…宜しく。』

「師」に頭を下げられて、一瞬戸惑った3人だったが。

直ぐに頭を切り替えたらしく個々に散る。

そして。 3分の『待ち』を終えて、男が行動を開始する。

足元に在った枝を何気無く拾い… 広場を取り囲む樹の一本に投げ付けた。

忍の力で放たれたそれは幹に突き立たん勢いで飛んで行き。

 

『!』

刺さる寸前、黒髪の忍が身を翻した。

躱した勢いで、そのまま逃げ去ろうとする。が

 

『「跳」ぶ時は気を付けろ。空に居る時は無防備だからな。』

一息に。大樹の上の方に上がって隠行する気だったらしい…黒髪を追って、男が跳ぶ。

「師」の囁きに、慌てて小枝を足掛かりにして体勢を整えようとするが…もう、遅い。

チャクラで瞬間加速した男が横からぶつかると、「教え子」の身体を足場に向きを変え

再び木々の密集した辺りに飛び込んで…消える。

その、触れ合った一瞬に鈴を奪われたのだろう。

脱落した少年が蹴り飛ばされて落ちた先で唖然としているのを、

俺は内心の笑いを堪えて眺めていた。

何より。敗れた少年以上に、思った以上の動きをした「中忍」に銀色が驚いているのが判る。

でも、まだまだだ。

戦って居る3人が隠れてしまった為、全ての騒動が消え…行き成り周囲が静まり返る。しかし

 

『…っ…』

隠れていたくの一が、転がり出て来た。そして素早い、印。再び少女の身体は、森へと消えた。

その判断は正しかったらしく、一拍遅れて彼女が居た場所に男が現れる。

死角から静かに忍び寄って来ていたのだろう。

それに気付いただけでも大した物である。しかし、

 

『「綺麗」な結界だな。だが』

男が大地に拳を向ける。強く叩いた様には見えないのに、一瞬地が揺れ。

チャクラによる浅い亀裂が波紋状に周囲へと広がって行った。

そして

 

『幻は幻 現実の事象には敵わない。』

亀裂の、不自然な歪みに向けて男が駆ける。

それを悟って咄嗟に動いた少女の、脇をするりと…駆け抜け。

気付いた時にはその手には二つ目の鈴が握られていた。

 

『確かに良く出来た「気殺」だな。』

離脱した少女が、他の仲間の傍に移動して行くのを尻目に、男が呟く。

 

『だが。』

タン、と。地を蹴ると同時に一息で、進む。

『静と動の差が激し過ぎれば、それに寄って動きが見える。』

飛び込んだ先から金色の子が、弾け跳ぶ。それに寄り添う様に男が動いた。

速さは、確かに金髪の方が上だろう。

だが、まるで先を読んでいるかの如くするりするりと男が回り込む。

動きが激しく荒い金色に対し、一見ゆったりと優雅に動く男だが。

全く遅れを取らない処が、次第に相手を追い詰めて行っているのが判る。

状況を変えたくても、下手に「跳べ」ば黒髪の二の舞となり…

大技を放とうとすれば上忍師の時と同じになる。

それを学習しているからこそ、焦って来ているのだ。

確かに、中身も昔に比べると成長している様子だった。

 

『…!…』

と。ふわりと男が動いた。

男は滑らかに身体を流しただけだが、多分金の子の眼には突然消えたかの様に見えただろう…動き。その一瞬の隙に。

 

『はい、終了。』

にっこりと。三つの鈴を手に下げて…男は鮮やかに笑って見せる。

 

『負けたってば…』

『イルカ先生…』

『アンタ、一体…』

 

 わらわらと。その声に、手玉に取られた新米「上忍」達が集まって来た。

 

『…階級は、「目安」ではあるが「絶対」じゃない。その事を心に刻んで置けよ。』

これが俺からの「昇格」祝いだ

リン…と鈴を振りながら語る…恩師。声を改めて「教師」の顔での言葉に。

元「教え子」達は一様に顔を引き締め。

 

『『『はいっ。有難う御座いました!』』』

と頭を下げたのだった。




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