サバイバーその後 3

サスケに突っかかるナルトをなだめ、周囲と砕けた会話を交わしながら、

イルカは心の底からこの懐かしい空気を楽しんでいた。

(やっぱり来て良かった)そう思う。

この集まりに来るにあたって、イルカは二人の同居人――特にカカシの方と少しばかり揉めていた。

そもそも最初にOB会のお知らせの手紙を見つけたのがカカシで、

それをカカシは丁寧に裂いて、イルカの気付かぬ内に燃えるごみに出してしまったのだ。

今も交流のある友人からOB会の事を聞き、

カカシが勝手に手紙を捨てた事に気が付いたイルカは流石に怒った。

 

 

 

「人に来た手紙を捨てるなんて、何考えてんですか!」

「………」

「都合が悪くなるとそうやって黙り込むんだからもう……って、ちょっとっ、何やってんですっ」

 

いくら今が夜であり部屋に二人きりとはいえ、問い詰めている最中に

いきなり目の前で服を脱ぎ始めたカカシに、イルカは顔を赤くして怒鳴る声を高くする。

こんな風に二人が喧嘩する事は普段から決して少なくはない。

その度にきちんと話し合い、最後は肌を重ねて自分達かどれだけ必要とし合っているかを確かめるのだが。

しかし話し合いなどの様々な手順を抜かして、いつもカカシは一気に行為の方に持ち込もうとしてくる。

 

「イルカ……」

 

その奇跡のように整った顔を、愛しげに緩ませて。

 

「いつもいつも、そうやって笑えば誤魔化せると思ったら大まちが――んっ」

 

憤る唇を巧みに塞いできたカカシに、当然イルカは抗いを強くした……が。

 

「あっ、ちょっと、駄目……っ、ですって……」

 

カカシはその細身の身体からは想像出来ぬほど力が強い。

元プロボクサーである事はイルカも聞いて知っていたが、それだけでは納得できないものがある。

ボクシングには寝技など無いはずであるのに、イルカの抵抗をふさぐその巧みさはなんなのかと、

いつもイルカは息も絶え絶えになりながら思うのだ。

イルカの弱い所を知り尽くしたカカシは、こうやって言葉の変わりにいつも身体で

イルカの文句を押さえ込もうとする。

耳元に熱い息を吹き込み、頬から喉、そして鎖骨へと濡れた唇をしつこいくらいに這わせて。

気が付けばその手も、イルカのはだけた服の隙間からじわじわと隠された場所に侵食し、

何時の間にか下穿きの中にまで潜り込んで、柔らかな下生えの感触を確かめ始めていた。

あらぬ場所を揉みしだかれる感覚と、ズボンの布を盛り上げる手の動きが酷く卑猥だ。

再び塞がれていた唇が開放され、長く透明な糸が互いの唇を繋いだ時にはもう、

中心を握られる感触と羞恥に、イルカの目は無意識に潤みだしていた。

 

「………ふ」

「ほら……濡れてきた」

 

掠れた声、何より雄弁な熱い瞳。色違いのそれは、

イルカを暴こうとする冷静な探究心と、獣の本能が表す熱情を、それぞれに表現しているかのようだった。

だが、熱に浮かれて思うツボに嵌っている場合では無い。

 

「――俺の話を……聞きな、さいっ」

 

ゴンッ

 

「っ――」

 

イルカ必殺の頭突きが、カカシのチン(顎の先端)に見事に決まり、カカシはベットの上に撃沈した。

 

 

 

「――で、どうして手紙を捨てたりしたんですか。ダイレクトメールだと思ったなんて言い訳は無しですよ」

 

居間のソファーに正座させられたカカシと、それを見下ろすイルカ。

部屋で勉強していたサクラも息抜きだといって顔を見せ、

今もイスに反対向きに座って二人の様子を眺めている。

一向に喋ろうとしないカカシに代わってイルカの問いに答えたのもサクラだった。

 

「つまり、行って欲しくないっていう意思表示よね。カカシ先生ったら、

ホントやる事がいちいち正直なんだからー、堪え性ないし」

「たかが一食外で食べてくるだけでしょう? それに何か言いたい事があるならちゃんと

口で説明してください。俺だって話くらい聞きますから」

「……でも、結局行く癖に」

 

ボソリとようやくカカシも言葉を吐き出す。

 

「カカシさん……」

 

はぁ――と小さく息をつき、イルカは言う。

 

「今の俺にとって一番大切なのは、貴方とサクラ――それは絶対です。

でもたまには昔の友人とだって会いたいし、馬鹿騒ぎなんかもしてみたいと思うんです」

「俺はあんたとサクラがいればそれでいい」

 

嘘のない真っ直ぐな瞳。カカシは本当に言葉通りにイルカとサクラを大切に思ってくれている。

イルカもそんなカカシの想いが嬉しくない訳ではない。

でも一番は一番だし、カカシが心配するような事など何もないのだから、やはりたまには……と思うのだ。

しかしそんなイルカの当然の要求に、不満を見せたのはカカシだけではなかった。

 

「イルカ先生がどれだけ私達の事大切に思ってくれてるかは知ってるけど、

私もカカシ先生と同じだな。私達の知らないイルカ先生がいるのはなんか嫌」

「サクラ……」

「それにもしかしたらその会合に、例の昔の彼女だって来るかもしれないんでしょ? 

もし大勢の前でよりを戻したいって迫られたら、イルカ先生ちゃんと断れる?」

「当たり前だろ。第一そんな事は有り得ないって」

 

今度はサクラとカカシが溜息を吐く番だった。

 

「分かってない、ほんとイルカ先生何も分かってない。

敵はきっと周りを味方にして攻めてくるわよ。集団の勢いってのは恐いんだから」

「敵って……」

 

二人に反対されて怒りの気力も萎え始めたイルカを見て、素早く目配せを交わすサクラとカカシ。

何故かこういう時に限って、二人の息は見事に合う。

 

「行ってもいい」

「え?」

 

いきなり態度を変えそう言い出したカカシに、思わずイルカが呆けた所をついて、

すかさずサクラが「ただし……」と条件を並べ立てた。

 

――二次会には行かない事。

――九時までには帰る事。

――絶対に変な言質(?)を取られない事。

 

「ご飯食べて話をするだけなら二時間もあれば十分な筈よねーカカシ先生」

 

当然といった顔をしてそう言ったサクラに、一つ大きく頷いてみせるカカシ。

こうしてカカシが手紙を捨てた事はしっかり有耶無耶になった上に、イルカはいい歳をして門限付きで、

何とかOB会に出掛けることを許される事となったのだった。



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