伝説の暗部@

月明かりに仄かに照らされた森の中を、一群の男達が駆けて行く。

黒を基調とした動き易い装束。身に付けた幾多の武具。

そして何より…その頭上に掲げられた、額宛。

それらが男達の生業を示していた。

 

凡人には目にも留まらぬ速さで、男達は駆け抜けて行く。

この森を抜ければ国境はもう、目の先であった。

 

だが。

 

声も無く殿を務めて居た男が地に伏す。

 

「な…」

 

反射的に足を止め身構えた男達の前に、ふわりと一つの影が降り立った。

それに気付いた男達が襲い掛か…ろうとして、刹那動きが止まる。

一瞬の、その当にほんの一瞬の隙を突いて。影は一息に男達の真っ只中に跳び込むと、

一切を寄せ付けぬ動きで周囲に居た全てを叩き伏せた。

 

「八卦掌回転。」

影が小さく呟く…

 

 

 

「怪我はありませんか?」

完全に意識を失った男共を回収しにやって来た拷問・尋問部の人間達が声を掛けた。

男達を捕縛した上で、その監視を行っていた『影』は、それに僅かに首を振る。

 

「いや、大した相手では無かった。それに…」

淡々と応えた影が、少しだけ俯くと口篭る。

 

「どうかなさいましたか?何か気になる事でも?」

心配そうに言葉を続ける相手に別に、そっけなく答えた影が。

しかしポツリとこう、呟いたのを…男はしっかりと聞き止めていた。

 

「何で俺を見た瞬間、皆動きが止まるんだ…??」

 

 

 

 

「では、先に失礼する。」

「はい、お疲れ様でした。」

男の声を聞いてふっ…と姿を消した相手に、男は小さな溜息を洩らす。

 

『何故皆、動きを止めるのか』

 

 …そんなの、決まってる。

 

闇に浮かぶ白い獣面。

それを彩るはぬばたまの黒髪。対照的に首筋は白く華奢で。

鍛えてあるとは言えまだ線の細さを残している身体は、

若枝のしなやかさと瑞々しさとを宿している。

 

 

だから、つまり…

 

 

「あんなモン、何の覚悟も無しに見ちまったらなぁ…」

 

しかも『獲物』を狙ってギリギリまで張り詰めた、その一瞬なのである。

気もチャクラも最高に高められたその瞬間、

あの身体から放たれる物が殺気だけでは無い事を。

皆…当人以外は…良く、知っている。

 

「…っ、さぁ撤収だっっとっとと帰るぞ!」

思い出して、少し前屈みになってしまった男の呼び掛けに。

 

「「「「「おうっっ」」」」」

同じく微妙に前屈みになっていた仲間達が、少し上擦った声を上げた。

 

 

 

 

木の葉暗殺戦術特殊部隊上忍 日向ネジ

姿見の前で何処か可笑しな所が無いか必死で確認する彼は、自分に

 

『木の葉の里のお艶気暗部』

 

 の二つ名が与えられつつある事を、未だ気付いていない…

 

 

 

 

 

このお話は「天手古舞」のちゃきっ様より頂きました

本当は第三話のみフリー小説だったのですが、ぜひ全作欲しいですと

お願いしたら快く承諾頂けました。ちゃきっ様ったら太っ腹♪

ありがとうございます。



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