約 束 5
「イルカただいま〜! 元気だった〜!?」
聞こえて来た声にイルカはダッシュで玄関に向かって走っていた
「カカシ兄ちゃんお帰りなさいっ! 兄ちゃんその包帯!怪我してるの!?」
「ああ大丈夫だよ これ医者が大げさに巻いただけだから」
「でも でも・・ 」
「ほら大丈夫だから家の中に入れてくれないの? オレとっても寒いな〜」
「あっ ごめんなさい 俺ね今日帰るって式もらったからご飯作ったんだよ」
イルカはカカシの手をひいて居間に向かって歩き出す。
九尾の災厄あとカカシは若いながらも部下を引き連れ任務にでており、
イルカに会うのは久しぶりの事だった
「はやく入って 外寒かったでしょう
ストーブ入れてあるから座って待っていてよ 俺すぐにご飯暖めてくる」
「イルカ? いいからちょっとここにおいでよ」
「なあに カカシ兄ちゃん」
「ご飯よりさきにイルカをギュウってしてもいい?」
「へっ? えっ えええっ?」
硬直しているイルカを抱きしめてカカシはポロっと言ったものだ
「ん〜〜〜 イルカも大きくなったかね〜 でももうちょっと肉つけないとなぁ」
「んもう! いい加減はなせよ 俺だってちゃんとでかくなってるよぉ」
「い〜やまだまだだぁね だってオレの肩までしかないもんなあ」
「カカシ兄ちゃん大きくなりすぎ! 俺は普通なの 今度中忍試験うけるんだからな」
「えっ 中忍試験? イルカが」
「そうだよ! そしたらもう一人前なんだからな」
一人前と胸をはっても、いまだ13才のイルカはどこからどうみても子供だ
今頃中忍試験? あれから一年がすぎ里の忍びの数が足りないのは確かだが
でもこんな子供を昇格させても任務で生き残る可能性は極めて低いといえる。
しばらく離れている間にどういう事になっているのか
早めに里の情報を集めておかねばならないようだな
「何ボンヤリしてるんだよ ほら早く座ってよ 一緒にご飯食べるんだろ」
「あ〜 うん食べる食べる」
「うん 美味しい イルカ料理の腕前あがったなあ」
「そんな事ないよ だってサンマ焼いて大根おろしただけだもん
それにこっちの漬け物は隣のおばちゃんがくれたんだよ」
「いやいや ご飯もふっくら炊きあがってるし、
サンマのこの背中の焦げ具合がまた・・」
「うわわっ! だめだめ〜 焦げたのは俺が食べるから
カカシ兄ちゃんはのはこっちの皿だよっ」
「月日がたつのは早いもんだね本当に上達したよ
最初はご飯も水加減がわからなくて固すぎたりベチャベチャだったり」
「あのね 俺だって学習するんです。」
「うんうん わかってるよ イルカは頑張ったもんねぇ
このみそ汁もちゃんと出汁がきいてるし」
「にいちゃん・・・ からかうんならお代わりあげないよ」
「え〜〜 そんな事いわないでお代わり下さい」
「はい たっくさん食べてね」
イルカがよそってくれたご飯はてんこ盛りだった。
オレ腹八分目に押さえときたいんですけど
まあイルカの笑顔が見られるなら頑張って食べましょう!
そう一人暮らしを始めた頃は酷かった・・・
ガスを使うことを知っているだけまだよかったのかも知れないけど
味噌汁は沸騰したお湯に味噌をぶち込んだだけだったし
ご飯もお米を洗わずに水を入れたり 分量も一度に炊飯器一杯炊いたり
辛うじてできたのは母親の手伝いで覚えていたサラダくらいだった
仕方ないとはいえ、まだまだ両親の元で庇護される年の子供なんだ
料理だけじゃない 掃除も洗濯も失敗しながらも一生懸命だった
アイロンかけやボタンつけまで自分でやっていたのをオレはしっている。
だからオレは自分のアパートには帰らずにイルカの元に帰ってくるようにしていた。
ちょっと目を離すと孤児って事でイルカを差別する馬鹿もいたからな
「カカシ兄ちゃん 一緒に入ってもいい?」
風呂場を覗くとカカシはタオルを頭にのっけて湯船に浸かっていた。
「いいよ入っておいで ついでに背中流してほしいなぁ〜」
「えへへ〜 そのつもりだったんだ ちょっとまってね俺すぐにすませるからさ」
ザパッ・・ ゴシゴシゴシ・・・早く早く 早くしないと
「イ〜ルカ〜? そんなに慌てなくてもいいよ」
「うぷっ うえ〜〜 口にシャンプーが入ったぁ〜〜」
「あ〜あ ほら耳押さえていな 水かけるから」
シャワーでシャンプーを洗い流して顔を上げようとすると目の前にカカシの足が見え
必然的にイルカの目線はカカシの下半身にいってしまい・・・
『ええっ なななんでぇ? 兄ちゃんと俺 色も形も全然違うっ 』
「はい一丁あがりっと・・ どうしてあんなに慌てたりしたんだい?」
「・・・・・・・・」
「イルカ? イルカどうしたの」
「えっ あのあの だってカカシ兄ちゃん いつもお風呂すぐ上がっちゃうから・・・」
「イルカが背中流してくれるっていうのに 待ってるに決まってるでしょ」
「ホントっ!?」
バッと顔を上げてイルカはしばし固まってしまった
カカシは風呂にはいるために顔の左半分に巻かれていた包帯をほどいていたのだ
イルカは額から頬にかけて縦に走る傷そして真っ赤に染まった瞳に目を奪われていた。
「お兄ちゃん その目・・ 傷痛くないの?」
「ああこれね 大丈夫もう痛くないんだよ」
「でも凄く痛そうだよ・・・ 」
「傷は痛くないんだ だけどねオレのミスで友達を亡くしちゃった」
お兄ちゃんは左手で傷を撫でながらポツリと話してくれた
「この目はね友達が俺に残してくれたモノなんだよ
イルカが大好きっていってくれた青い目は無くしちゃったんだ
気味悪い? イルカはこんなお兄ちゃん嫌いになっちゃうかな?」
大きくて いつも強いお兄ちゃんがなぜだか泣き出しそうで俺よりも小さくみえた
「そんな事ない! お兄ちゃんはお兄ちゃんだ!」
こみあげる涙を押さえてカカシに背中に回ってタオルで力一杯背中を擦ってあげた。
父ちゃんよりは細いけど俺よりも大きな背中が目の前にある
この前見たときに比べて新しい傷跡が増えていて上忍としての任務の激しさが伝わってきた。
それでもイルカの元に戻って来てくれる・・・ 傷があっても左目がもらいものでも
イルカにとってカカシはカカシでしかないんだ
「ちょ痛い 痛いよイルカぁ もちょっとゆっくり擦ってよぉ」
「なんだよこれくらい痛くないよ 上忍だろぉ」
「そうだね これでも上忍なんだよね 兄ちゃんもっともっと強くなるよ」
もう大事な人を二度と無くさないためにもっと強くなる。
「ありがとイルカ・・・ さて 次はイルカの背中を流してあげようか」
「え〜 いいよ カカシ兄ちゃんに背中洗ってもらったら真っ赤になっちゃうから」
「何をいうんだ お前何時も背中ちゃんと洗えてないからな」
「キャ〜〜 くすぐった〜い ちゃんと洗ってるよぉ
ほんのちょっと背中に手が届かない場所があるだけだもん」
「こぉら逃げるんじゃない オレがいる時ぐらいはちゃんと洗ってやるからな」
悪ガキ二人 その日は逆上せるまで風呂に浸かっていたのだった。