飴と鞭…
目の前の人に向かって差し出された手の中は今だ空っぽのまま・・・
「今日は特に冷えますよね〜」
「そうですねぇ まあ此の雪じゃあ仕方ないですよ」
「こんな寒い日はおでんで一杯とかいいと思いません? イルカ先生」
「ええ温まりそうですね カカシ先生早く報告書下さい」
「報告書なんて後でもイイじゃないですか それでねイルカ先生」
「良くないです 早く出して下さい!」
「あ〜〜 まだ終わってないんで・・」
ピキッ・・・ こめかみで何かが引きつる音がした
「終わってない? では子供達はどうしたんです?」
「だ〜いじょうぶv 影分身置いてきましたから〜」
「大丈夫じゃありません! とっとと任務に戻りなさい!!」
「あれくらいの任務子供達だけでも楽勝ですってば ねえイルカ先生今晩一緒に・・・」
ガララッ ピュウ〜〜〜
「そういう話をなさるんなら仕事の邪魔です 早く子供達の所に戻って下さい!」
「ウワォッ さむっ!! ちょっとイルカ先生?」
カカシは窓から放り出されてしまった
「イルカよ・・ アレを何とかせんかい!」
「何とかって仰られても・・」
火影が暗に示すのは受付所の窓の外・・・
受付所に入るといの一番で依頼人や任務帰りの忍び達の目に入る場所
そこには言わずと知れた『写輪眼のカカシ』がヤモリのように張り付いていた。
「えへへへ〜 イッルッカ先生〜 早く終わって一緒に帰りましょ〜」
イルカによって現場に戻れと放り出されてもそのまま居残ったまま
等といかにも頭の悪そうな事をほざきつつ窓の外にへばりつき
室内のイルカに背に向かって、それはそれは熱い視線を送っていたのだ
その熱視線に辟易した受付勤務の同僚達は
「おい イルカ〜 いっくら何でも放り出すのはさ・・・」
「そうそう拙いんじゃねえ? オレたち全然気にしないから」
「イルカ先生 外は雪も降っていますし いくら畑上忍でも風邪をひかれますよ・・・」
「そうですよあれじゃあ可哀想だわ」
ムカッ これにはイルカも内心むかつきました。
カカシは子供達だけにこの雪の中で任務をさせて自分は受付所に来たのです
それに仕事が遅れて残業になった場合カカシに絡まれるのもまたイルカなのですから
「俺は今仕事中だから、邪魔だし任務に戻って下さいって言いましたよ!」
「そりゃ そうなんだけどさ」
「あんなに懐かれたらさ〜 ちょっと可哀想な気も・・・」
「はい次の方どうぞ」
イルカは同僚達の言うことなど聞こえない振りをして仕事を進めます。
「オオ イルカ今日も元気よく仕事してるな!」
「あっ ガイ先生 お疲れ様です」
「はっはっはっ これしきの任務で疲れるような鍛え方はしておらんぞ!!」
「いいえ、此の雪の中での任務です 子供達はどうですか?」
「んっまあ 大量の雪下ろしは中々体力とテクニックを必要とするからな
だが今日でコツは掴めたようだし明日はもっと手際よく進めることができるだろう!」
「そうですか あっガイ先生 これをどうぞ・・」
イルカは受付所の隅に置いてある鍋からなにやら紙コップに入れてガイに手渡した
「ん? おお甘酒だな! これはいい冷え切った体がポカポカ温まる」
「今回の依頼人の方々が持ってきて下さったんですよ
依頼したとはいえ大変な仕事ですし、これを皆さんに差し上げて下さいって」
あああ〜 イルカ先生〜 オレには甘酒なんてくれなかったのに〜〜
そんな男の手から報告書なんて受け取っちゃダメです〜 亀臭くなりますよ〜〜
外から響いてくる声には耳を傾けない! 無視無視無視・・・
「では また明日頑張るかな! ではなイルカ」
「はいお疲れ様でした また明日も宜しくお願いします」
次々と任務を終えて戻ってくる上忍師達に甘酒を振る舞っていると三代目が声をかけてきた。
「ふうっ イルカよ」
「はい何でしょうか? 三代目」
「このままでは受付処理に支障をきたすでな ワシが許す!」
「はい? 何をです」
「さっきから言うておる。隣の会議室を使うがよい アレに言い含めて仕事の邪魔をせぬよう躾けよ」
「はあっ? あっ失礼しました! あの躾け? ですか」
「そうじゃ! このままでは里の士気に拘わるでな、お主にまかせるゆえ とにかくアレをなんとかせい!」
何とかせい? 何とかって言われても・・・ 俺にどうしろっていうんですか 三代目
そうっと外を見ると 目があった途端にピンッと立った耳と勢いよく振られる尻尾が見えた気がした
「犬は喜び庭駆け回り〜」って雪が好きならあのままでもいいじゃんかと思うんだが
周りの人間はそうは考えてくれないらしい しかたがないか
コップに甘酒入れて タオルをもつと
「悪い・・ ちょっと抜ける・・」
イルカが受け付けを出ていき暫くすると隣の会議室の窓が開けられる音が聞こえてきた
「カカシさんここから中に入って下さい あっこらっ 飛びつくなっ!!」
「ん〜〜 イルカ先生あったか〜い!」
「俺が温かいんじゃありません アンタが冷え切っているだけですよ」
隣の部屋・・ 通常ならば聞こえない音量の会話だけど
あいにくと受付に居るのはみな耳のいい忍び達・・・小さな音でも拾ってしまう
『壁に耳あり障子に目あり』隠し事は出来ないってばっ(byナルト)
「ほらっジッとして ああもう雪まみれじゃないですか ほら拭いてあげますから
さあここへ座って下さい、いいからちょっとだけ大人しくしていてくれませんかね
とにかく先にこれ飲んで下さい 温まりますから」
「ん あ〜これいいね〜 甘くてポカポカします〜」
「甘酒ですよ 本当はちゃんと任務を済ませた方々に差し上げるんですよ
あのですねカカシさん 俺は懐いて貰えるのは嬉しいんです
決してイヤってワケじゃないですよ だけどね仕事の邪魔をされるのは困るんです。」
「え〜 オレ邪魔なんかしてませんよ〜」
邪魔してるだろう・・ 任務に影分身使って受付所にくること自体おかしいって気づけよっ!
「俺は仕事をキチンとするひとは好きですけどね 怠け者は嫌いですから
とにかくアナタに受け付けでうろうろされると処理が滞るんです」
「そんなことくらいで滞るっておかしくない?」
「みんなアナタに気兼ねして報告書出せないからですよ」
現に俺の机の前には並んでないのに他の同僚の前は長蛇の列になるんです
「カカシさん? そんなに俺と一緒に帰りたいんですか?」
「そりゃ勿論ですよ」
「時間どうりに帰りたいですか?」
「一刻も早く 早ければ早いほどいいですね」
「じゃあ ここで大人しく待っていて下さい
7班の報告書が提出されたら早めに帰るように頑張りますから ねっ?」
「イイイルカ先生っ 今の! 今のもう一度やって」
〈〈〈〈 何だ!? イルカッ〜! いったい何したんだ!!! 〉〉〉〉
「待て! ですよカカシさん ちゃんと待てたらご褒美あげますから ね?」
「はいいいっ〜〜〜 待ちます待ちます待ちますぅ〜〜 でも先にちょっとだけっ・・」
ゲシイッ・・
「ハウッ・・ イルカ先生〜〜」
「アナタって人は〜〜! 今すぐ外に放り出されるのと、この部屋で大人しく待っていて
一緒に帰って飯くうのとどっちがいいですっ? さあサッサと選びなさい!」
「ごめんさない ごめんなさい 終わるまで待ちます〜
でも甘酒よりイルカ先生の飲みたいっ うわっもう舌入れたりしません〜〜」
〈〈〈〈 イルカの 飲む? 舌? 舌入れるって・・イルカああ〜〜 お前えぇ〜 〉〉〉〉
「大人しく待っていることができたなら 考えますよ
いいですね 大人しくしてるんですよ これ以上仕事の邪魔したら容赦しませんからね」
その声を最後に暫くするとイルカが受付に戻ってきた
「悪いな もう大丈夫だと思うから」
バツが悪い・・ みんなイルカの顔が見られなくて下を向いたり上を向いたり
先程まで聞こえてきていたイルカとカカシの会話が思い出され
イルカと視線が合った途端に真っ赤になったり前屈みになるヤツまで出てきたが
女子に到ってはやけにキラキラした視線を向けていた
「あっああ その そうだなっ」
「イルカよ・・・ そのワシは余り無粋な事は言いたくはないのじゃがのう
いや 何でもない 仕事に戻るがよい」
三代目グッドです! ここで突っ込みはナシにして下さって・・
でもご褒美あげるって・・・ いったい何?
あっちでもこっちでもヒソヒソコソコソ囁き声があがっていた
「そりゃアレだろ?」
「アレしかないわよね」
「イルカ〜〜 お前の犠牲を無駄にはしない」
ブッ!
「うわ キタネッ お前何鼻血吹いてんだよっ」
「済まんっ つい想像しちまって 何だよお前だってなに前屈みになって・・」
「あっこれはそのっ・・」
「えっ おい あれ見ろよっ」
いきなり受付所が騒がしくなった
そりゃそうだろ 隣で待っているはずのカカシが子供達を引き連れて入ってきたのだから
「イルカ先生〜〜 任務おわったってばっ 寒いってば〜〜」
「ナルト? サスケ・サクラも・・・」
『はいイルカ先生これ報告書です』
「カカシ先生?」
『あ〜 はい オレは『カカシ”』ですけど・・・』
「そ そうですよね 本体は隣にいましたっけ」
子供達には聞こえないように小声で囁くと 報告書にさっと目を通し
「はい受領致します お疲れ様でした
お前達もご苦労さま 寒くて大変だっただろう 良い物が有るぞ」
酒って言っても甘酒だし ちょっとだけなら大丈夫だろ?
飲んで温まってから早めに家に帰るんだぞ!
「うわ〜 あったか〜い 美味し」
「イルカ先生もっとくれってば〜」
「結構美味い・・・・」
『はいはい お前達 早く帰りなさいね 明日も同じ仕事だから風邪ひかないようにね』
「「「 イルカ先生 ごちそうさまでした! カカシ先生明日は遅刻しないで下さいね 」」」
子供達を先に帰したが問題は『カカシ”』・・・ めんどくさいから 『かかし』と呼ぼう
『どうですイルカ先生 今日一緒に飯食いませんか?』
「はい あ〜 いいですけど でもどうして影分身とかないんですか?」
『え〜 だって任務すませたのはオレですし イルカ先生と食事する権利はオレにありますよね〜』
「それは たしかに・・・ でもどっちもカカシ先生じゃないですか」
『オレはイルカ先生と一緒におでん食べて甘酒飲みたいなあ』
「くすっ おでん・・ ね いいですよ それに甘酒飲み放題ってことで」
おいおいイルカはどっちのカカシと夕飯食べるつもりなんだ?
なにやら先程よりも受付所がざわめき仕事が進まなくなってしまったため
三代目は苦々しく宣言せざるを得なかった
「イルカよ 今日はもう上がってよい!」
「えっでも俺の勤務時間はまだ1時間も残っています」
「かまわん 真面目に任務を済ませたそやつに褒美じゃ 待っている駄犬はお主にまかせる」
「それは・・・ ありがとうございます三代目 では遠慮無く」
「言うておくが 今日だけじゃからの? アレにはよう言い聞かせておくのじゃぞ」
「それは重々承知しております ところで三代目・・・ ちょっとお願いが」
「何じゃ? なにっ いやそれは出来ないことはないが・・・」
「ではお願いします」
「ふむ・・・ まあよかろうて 気づかれぬように済ませておこう」
「ありがとうございます。では失礼いたします みんな後は頼むな?」
はい どうぞ もうお帰りになって下さい そりゃもうさっさと・・・
隣の会議室からは喜んでいるカカシの声が丸聞こえ・・・
「キャ〜 イルカ先生 終わり? もう終わったの? 一緒に帰れる?」
「はい三代目のご厚意で今日は早めに上がらせて頂きました。」
「あれ アンタいつまで居るの? さっさと消えちゃってい〜よ」
『オレは今日イルカ先生と一緒に夕飯食べるんだ〜よ』
「そうですよカカシ先生! 俺かかしさんと一緒に飯を食う約束しましたので」
「え〜 オレは一人いればいいの〜 オレがもう一人なんて邪魔じゃ〜ん」
「『かかしさん』はちゃんと任務済ませてきて下さいましたからね
どっちかっていうと俺は真面目に仕事する『かかしさん』のが好きだなあ」
「酷いですどっちもオレですよぉ〜 ねえねえ 待ってたオレにご褒美は〜 」
「はいはいお二人にちゃんと準備させていただきますよ」
声とともに足音は遠ざかっていった・・・・・・
そう言ったイルカは帰りに買い物を済ませ
「カカシ先生」へのご褒美は「サンマの塩焼き」
「かかし先生」へのご褒美は「熱々おでん」 を準備したのだが
カカシは食べ終わるなりイルカにサッサと玄関へと追いやられてしまった
「じゃあカカシ先生 明日はちゃんと任務にいって下さいね ではお休みなさい」
「ちょっと まってよイルカ先生 どうして「かかし」は帰さないでオレだけ帰そうとするんです!?」
「そりゃきちんとお仕事したかかしさんと一緒に甘酒飲むんですよ」
「そんな事させません! あれっ 消えない? なんで」
「ああ三代目にお願いして解印できないよう術を固定して頂きました
アナタのチャクラがなくならない限りかかしさんは消えませんから・・・」
「いやあぁ〜〜 やめてください オレと一緒に酒なんて飲んだら危ないです! 犯されますよ!」
『さっき約束したんですよね〜 イルカ先生の甘酒飲み放題って うふっ朝まで寝かせませんよ』
「だめえっ オレ以外の男となんて絶対ダメ〜〜〜!! そんなコトしたら殺しますよ!」
「いやだなあ カカシさんたら どっちも同じカカシさんじゃゃないですか 俺は全然構いませんから」
明日から任務しっかりこなしてチャクラを消費すれば「かかしさん」は消えますよ
それまで俺「かかしさん」と過ごさせてもらいますね
『そうそう 気にする事ないって お前が任務で頑張ってる間オレがイルカ先生可愛がってあげるからさ〜』
「何でお前が可愛がるんだよ それはオレの役目なの!!」
同じ顔して同じ格好して同じ声で言い合っているのも結構間抜けだなぁ・・・ どっちも自分なのに
イルカは無責任にもそう思って二人を見つめていた
暫くいがみ合っていても所詮は「カカシ」自分と押し問答していても埒があかないと気づくや
直ぐに考えを切り替えてイルカに迫ってきた
「オレは構います わかりました! 明日からお仕事優先にしますから
だからオレもここに残ります! 一緒に甘酒飲ませて下さい〜〜〜」
「・・? 俺たちの邪魔をしなければいいですよ」
『そうだよ 今日イルカ先生といられる一番の権利はオレにあるんだ〜よ』
ちっくしょう 影分身のクセに・・・ 明日の任務と言わず今夜でチャクラ使い切ってやる!!
パチッパチパチッ・・ 二人の間に火花が飛び散った
「あっもうこんな時間? 俺もう寝ますからお二人で心ゆくまで話し合って下さいね」
じゃあお休みなさいとイルカは二人のカカシを放りだしたまま寝室にいってしまった
さあどうするWカカシ! 夜はこれから 二人のイルカ争奪戦に軍配が上がるのははたしてどっちだ
お仕事する人にはイルカ先生からの熱いキスとイルカの熱くとろける甘酒が・・・
美味しいご飯も良いけれど 『飴と鞭』・・・ どっちが飴かなんて愚問な事
イルカの与える飴はイルカ自身 「カカシ」と『かかし』 どちらもその誘惑の前には抵抗なんてできなかったとさ