暖かい場所 

イルカが腰を下ろして箸を持ったときに違和感があった。

『あれ?コタツが暖かくない、スイッチが入ってないんじゃないか?

でもカカシさんそのまま座っているし寒くなかったのかな?』


おかしいとは思いながらも取りあえずスイッチは入れておいた。

 

「ああやっぱりイルカ先生がいるから暖かいんですね」

「はいっ?」

「さっきまでね寒かったんですよ、何でだろうって思っていたんですけど不思議ですねぇ」


そういいながらも饂飩にフウフウと息を吹きかけながら食べている。

それにしても何だって天麩羅よけて饂飩ばっかり食うんだよこの人?


「ひょっとしてカカシさん猫舌ですか?」

「ええ、お恥ずかしいですが。でもイルカ先生よく判りましたね〜」

「そりゃあ、そんなにゆっくり食べてりゃ判りますよ。」

「任務中って携帯食とかが多いし、戦場では火を使えないことも多いですからね」



でもね熱いのが嫌って訳じゃないですよ、一気に食べることが出来ないってだけです。

最初から温いのは美味しくないですしね〜現に一楽のラーメンは好きですよ。

偶に子供達つれていきますけど、熱いのをゆっくり食べるのがいいんですけど、

だけどね〜オレの顔をみようとのぞき込まれるんで口布の上げ下ろしに気を遣います。



「そうでしたか。あのカカシ先生、天麩羅は食べないんですか?」


途端に固まってしまったカカシさんは視線をあちこちにさまよわせたあげくに

箸で天麩羅をもちあげては下ろすということを数度繰り返し


「あ〜あの〜〜イルカ先生これどうぞ、
せっかく入れてくれたのにゴメンなさい。

オレ天麩羅がその〜どうしても苦手なんですよ〜。」



うわわっ自分の丼に乗っていたかき揚げを俺の丼に乗せちゃったよ。

そうか天麩羅は苦手だったんだ、悪いことしちゃったなあ。

忘れないように『天麩羅は嫌い』と覚えておかないと。

 

「イルカ先生と熱い饂飩のお陰でポカポカになりますよね〜。」



いやそれ違うから。あなたがコタツのスイッチ入れてなかっただけだから。

でも猫舌なんて意外だったなあコタツが好きでご機嫌なのも本当に猫みたいだし、

今まで格好良くて凄い人で憧れるしかできない人だとばかり思っていたけど、

フウフウ言いながら饂飩を啜る姿が何だか可愛いんじゃないか。

 


「あ〜美味しかった〜。ご馳走様でしたイルカ先生」

「いいえお粗末様でした。」

 

丼は流しにつけておいて、お茶を飲んで話をしているとカカシさんがフワッと欠伸をした。

 

「あ〜すいません。オレなんだか眠くなっちゃったなあ、そろそろ失礼しなくちゃ。」

「お腹が一杯になって、ポカポカになれば誰でも眠気に誘われますよ。

カカシさん、もしよければ今夜は家に泊まっていかれませんか?

今から帰っても家に着くまでに冷えるでしょうし」

「えっでも、でも、いいんですか?」

「まあごらんの通りに狭い部屋なので窮屈とは思いますので、カカシさんさえ宜しければ」

 

「イルカ先生ありがとう嬉しいです。」

 

先にカカシに風呂を使ってもらい、着替えはイルカのパジャマを貸した。

身長差は殆どなさそうなのに上着の袖や、ズボンの丈が短いのは癪にさわったが、

イルカが風呂から上がってきた時、カカシはコタツの中で丸くなって眠っていた。

 

「うわ〜俺んちでカカシさんが寝てるよ、ふふっ気持ちようさそうだな。」

 

イルカが毛布を被せて脇にすわり頭を撫でていると、

「ん〜〜」と言いながらモソモソ動き頭の落ち着き先を捜しはじめた。

とイルカの膝に手をかけると頭をのせてきてしばらくゴソゴソしていたら、

しっくりおちついた体勢になったのか、そのままスースー寝息をたてていた。

 

「うわ〜っ!これって膝枕ってヤツ?? いいのかな、俺の膝なんて固いだろうに。

ああだけどカカシさんの髪ってけっこう柔らかいなぁ、ふわふわで猫っ毛なんだな。

でも本当に猫みたいだ、コタツで寝ちゃって膝の上で丸くなるってのは、

カカシさんが猫だったら家の仔にしたのになあ人間なのが残念だよな。」

 

「ふわぁ〜っ 俺も眠くなってきたなあ。」

 

 

 

頭を撫でながらカカシに添い寝したイルカが目を覚ましたとき、

目の前には銀色の髪と目を閉じたカカシの顔があった。

しかもしっかり向かい合って抱き合っていて腰にはカカシの腕が回されていた。

 

「おおすっげぇこんなに近くで顔みちゃったよ、カカシさんって色白だな〜、

髪も綺麗な銀色だし睫も同じ色でバサバサだ、華やかな色合いの人だよなあ」

 

俺なんて黒一色でつまんねえしなぁなんてぶつぶついいながら、

のんびりカカシの顔を鑑賞していたイルカの言葉に返事が返ってきた。

 

「オレの顔気に入りました〜?」

 

イルカはカカシの手をふりほどきガバッと起きあがった。

 

「カっ!カカシさん起きていたんですか?」

「うんしばらくはイルカ先生の寝顔みてたんだけどね〜、

イルカ先生おきそうな気配だったから寝たふりしちゃいました〜。」

「寝たふりっ? なんでそんなこと」

「オレと一緒に寝てくれたでしょ?起きたときの反応が怖かったのね、

ねえお願いだからもう少し一緒に寝てくれない?」

「うわわっ!!」

 

カカシは横になったままイルカの手をグイッと引っ張って抱き込んだそして一息吸うと。

 

「イルカ先生が好きです。」

「えっあの??」

「オレイルカ先生んちの仔になるから、オレの事飼って」

「あっあなた聞いてっ!?」

「家の仔になってくれないかなって言いましたよね。」

「そりゃ言いましたけど、それは猫の話で人間じゃないし・・・」

「オレずっとイルカ先生の事好きでした。オレが暖かいと思ったのはアナタの人柄ですよ。

たしかにコタツも暖かいですけどね。だから夕べ泊まってと言われたとき凄く嬉しくて。

オレはもの凄く好きだけど、イルカ先生はオレの事どう思っているのかわからなかったし。

オレ悪名だけ高くってイルカ先生にどう思われてるのか自信がなかったし、

思いあまって襲いかかったりしたらもう絶対に終わりだと思ったんです。

でもせっかくイルカ先生が誘ってくれたのに帰るのは勿体ないじゃないですか

でも起きて顔見ていたらいたらドキドキするし〜〜。

でイルカ先生がお風呂に入っている間に寝たふりしていたんです。

でもイルカ先生が優しく頭撫でてくれたりするんですもん。

寝ぼけた振りして膝枕しちゃったりして、そしたら家の仔になんていうんですもん。

天にも昇る心地ってやつ?先生の手があまりに優しくて気持ち良いもんだからうっかり、

寝ちゃいましたよ〜。オレの煩悩もまだまだって事ですかね〜」

 

何だよ何だよ、俺が口を挟む隙も無いくらいにペラペラしゃべりやがって、

でも俺を抱きしめる腕が震えているのに気づいちゃったらなあ、

あ〜もういっかぁ 参ったよまったく

俺もアンタがいてくれるだけで暖かくなれるんですよ。

 

「ふうっ!しょうがないですねぇ」

「イ、イルカ先生?」

「いいですか?野良猫だったら飼いませんからね。ちゃんと家猫になって下さいよ」

「もちろんです!」

「だったらいいですよ。日が昇るまでまだ少しありますね、

俺たちコタツで寝ちゃってたんですね、布団に移動して二度寝しましょうか?」

「ふっ布団!?イルカ先生いいんですか?」

「あちょっと、そんなにギュってしたら苦しいです。いいんですかって何が? 

コタツで寝ると怠くなるから布団にしましょうって事ですけど」

「あっ あ〜そうね。そうだよねゴメン!じゃあオレの腕枕で寝てくれる?」

「そんなこと言って痺れても知りませんよ。」

「望むところです。ってか上忍の腕力見くびらないで下さいよ」


「……痺れに腕力は関係ないですよ…」

 

 

 

暖かい陽の差し込む部屋の中、恋人達はお互いの体温で暖め合いまどろんでいた。

可愛い恋人を腕の中に抱き込み、解いた黒髪を指に搦めて口づけるのは銀色の人。 

 

「ねえイルカ先生今日はこれで我慢したげる。

だけど次からはもっと恋人らしく温めあいましょうね」



オレの忍耐ってそんなに長く持ちそうにないからさ。
 


寒がりの猫は自分を受け入れてくれる暖かい場所を手に入れた、

そしてイルカの受難はこれから始まるのだ。

 

 

 

終わり。






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