一緒に暮らそう @
ちっくしょうぅぅ・・・ なんって重いんだよこいつはぁ
よいせっとかけ声かけて抱え直して歩きだす
そうしながら思い出すのは母の言葉・・・・
「イルカまた拾ってきたの? 駄目よ家では飼えないのよ」
「でも 母ちゃん こいつあのまま放っておいたら死んじゃうよ」
腕のなかでピルピル震える子猫・・
「しかたないわね ほらタオルで拭いてあげなさい 今ミルク暖めてあげるから
でも明日になったら貰い手探すのよ いいわね」
「母ちゃん こいつ俺が飼っちゃ駄目? 俺ちゃんと世話するから」
皿に顔を突っ込む勢いでミルクを舐める小さな命
家の仔になったら思う存分可愛がってあげられるのに
「あのねぇイルカ 父さんも母さんも任務があって家を空ける事が多いし
イルカもアカデミーで昼間は家にいないでしょ?
その間 その仔一人じゃかわいそうよ そうね イルカが自分の事は自分で
出来るようになったらそのときは飼ってもいいけど、でも今はまだ無理ね
ほら 早くお風呂はいって着替えなさいそのままじゃ風邪ひくわ」
母ちゃんはいつもそういって動物を飼うことは許してくれなかった
息が苦しいよぉ ヒューヒューって音がうるさいんだ
「イルカ イルカ? ほらこの薬飲んで・・・」
口の中に入れられた顆粒は苦くてキライだった
だけどこれを飲むと楽になることは知っていた。その夜喘息発作をおこした俺は
三日間寝込み、その間に子猫はよそに貰われていた
「イルカちゃん お婆ちゃん この仔大事にするからね 本当に有難う」
子猫は煙草屋のおばあちゃんの所に貰われていたんだ
本当はあげたくなかったけど それはそれは嬉しそうな顔で御礼なんて言われちゃったら、
もう駄々こねることなんて出来なかった
その次は野良犬を拾ってきたっけ そうしたら母ちゃんにすぐ
「そんなに育っていたらもう躾なんてできないわよ」って言われたんだ
確かに全然なついてくれなくて三日目には鎖をちぎって逃げ出してしまったんだ
それからは犬も猫も小鳥も飼うことはなかった 今ならその理由も判る
俺は小児喘息ってヤツで動物の毛とかで発作をおこしていたんだから
母ちゃんは仕事が忙しくて世話が出来ないっていったけど
本当は俺の体を心配してくれてたんだって
なのに今更見つけてしまった
いやそのまま放って置いたっていい状態だったんだけどさ 雨の中ぐったり
横たわる姿を見たとたんに家の子にしようと俺のなかで決めてしまったんだ
「母ちゃん 俺もう大人だし だからいいよな?」
体だって丈夫になったし ちゃんと世話だって出来るんだから
雨のなか泥だらけで横たわっていた大きな犬を躊躇うことなく担ぎあげ
アパートに向かって歩きだした。玄関はいってちょっと躊躇う
サンダル脱ぐにはこいつを下ろさないといけないけど
こんな泥だらけのヤツを廊下に下ろすのも後が面倒だよな〜
いっか 廊下は後で拭けばいいんだしな
目を覚まして『ウ〜〜』と唸り始めた犬を肩にかついだまま
風呂場へ直行してシャワーを浴びせながら声をかける
「なあ ここペット禁止なんだ だからお前大人しくしてくれるか?
お前凄い泥だらけだからさ 洗わせてもらうよ」
人間のシャンプーって犬に使っても大丈夫かなあ まっ毒ではないだろ
ゴシゴシ洗って泥を落としシャンプーの泡を流した時には
灰色だとばかり思っていた犬は白い毛並みになっていた。
「へぇお前って白かったんだ〜 綺麗な毛並みだなあ
んっ左目どうしたんだすごい傷だ それにしたって何だってあんな所で
転がっていたんだい? あっもしかして腹ペコ? そうだなお前こんなに
ガリガリに痩せてるもんな〜」
ほらほらじっとしてくれよ これはな〜ドライヤーだよ
音がうるさいかもしれないけど大丈夫だよ お前を乾かすだけだからさ
まるで俺の言葉が分かっているみたいに大人しくタオルで拭かれて
ドライヤーで乾かされている間犬は目を細めて体をべた〜とのばして
寝そべっていた。
俺を無視しながらも尻尾がパタパタと左右に揺れているのが可笑しかったけどな
「おお すっげ〜 お前結構男前になったじゃないか ふふっ いい手触りだな〜」
毛を乾かしてフワフワになった犬は痩せた体を感じさせない立派な体格に見えて
イルカの好みにもろ直撃だったりした そうそうこんな大型犬がほしかったんだよなって
「タロ ポチ シロ・・え〜とミケ? なあ返事してくれよ〜」
そして今イルカは途方に暮れていた。
犬は思いつく限りの名前で呼びかけても 振り向くこともしなかったので・・・・
「なあ ここにミルク置いておくからさ 俺が風呂使っている間にでも飲んでくれよな」