アラキドン酸カスケード
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 アラキドン酸(肉食など、食事に由来する)は、細胞膜のリン脂質(ホスファチジルイノシトール)のC2位に、エステル結合している。アラキドン酸は、ホスホリパーゼA2PLA2)により、細胞質内に遊離される(注1)。
 遊離アラキドン酸は、アラキドン酸カスケードと呼ばれる代謝経路でシクロオキシゲナーゼ(COX、cyclooxygenase)により代謝され、PGG2を経て、発痛物質であるPGE2などが合成される。また、LT(ロイコトリエン)合成系で、LTが合成される。

 消炎鎮痛剤(NSAIDsなど)は、PGE2合成を阻害し、痛み(疼痛腫脹を抑制する。

 A.シクロオキシゲナーゼ回路
 COX(PGH2 Synthase:PGH2シンターゼ)は、アラキドン酸に酸素分子を付加するリポキシゲナーゼであり、PGG2からPGH2を合成するペルオキシダーゼ活性も有する。つまり、単一の酵素、PGエンドペルオキシド合成酵素に、シクロオキシゲナーゼ活性とヒドロペルオキシダーゼ活性がある。

 その結果、生理機能の維持や免疫的炎症反応に関与するプロスタグランジン(prostaglandin:PG)や、トロンボキサンA2(thromboxane:TXA2)が血小板や好中球で、合成される。

 NSAIDsは、COXの活性を阻害し、アラキドン酸からPGH2が合成されるのを阻害し、プロスタグランジン合成とトロンボキサン合成を抑制する。
 副腎皮質ステロイドホルモン(ステロイド剤)は、COXの合成を阻害して、抗炎症作用、鎮痛作用などを現す

  なお、 活性酸素の一重項酸素が、PGG2からPGH2が合成される際に産生される。

 B.リポキシゲナーゼ経路
 アラキドン酸は、5-リポキシゲナーゼにより代謝されて、5-HPETEを経て、免疫的炎症反応に関与するロイコトリエン(leukotrien:LT)が肥満細胞などの白血球で、合成される。
 アラキドン酸から、アラキドン酸カスケードやリポリシゲナーゼ経路(LT合成系)で合成される、TX、PG、LTは、エイコサノイド(eicosanoids)と総称される。
 細胞の刺激に応じて、エイコサノイドは、アラキドン酸から合成される。エイコサノイドは、局所で作用した後、速やかに代謝される。
 エイコサノイドは、生体の局所で合成されて、局所でホメオスタシス(生体の恒常性)を維持するために働いている。
 エイコサノイドは、エイコサペンタエン酸(EPA)からも合成される。

 1.プロスタグランジン(PG)
 PGは、赤血球を除く全ての細胞で産生される。
 PG には、AからJまで、10種類、知られている。
 PGI2は、PGH2からPGI2合成酵素により生成される。それ以外のPGA2、PGB2、PGC2、PGD2、PGE2、PGF2、PGJ2(JapanのJ:日本で発見された)は、PGH2からPGD,E,F合成酵素により生成されると言う。 

 NSIDsやステロイド剤は、COXを阻害し、プロスタグランジン合成を抑制し、抗炎症作用などを現す。
 プロスタグランジンは、アポトーシスを抑制する。

 1).PGE2
 PGE2には、炎症を促進する側面と、炎症を抑制する側面とが、ある。
 
a.炎症を促進する側面:発痛させる(疼痛を起す)。血管透過性を亢進させ、腫脹浮腫などを来たす。発熱させる。
 
b.炎症を抑制する側面T細胞からのインターロイキン-2(IL-2)やインターフェロン-γ(IFN-γ)の産生や、ロイコトリエンLT)など他の炎症メディエーターの産生を抑制し、抗炎症作用を来す。細胞膜を安定化させる。単球・マクロファージからのIL-1、TNF-α、IL-6の産生を抑制する。

 PGE2は、精のう腺、髄質、肺、、肝臓などでアラキドン酸より生成される。
 主な作用には、血管平滑筋弛緩(血管拡張血圧降下、血流増加)、血管透過性亢進、気管支平滑筋弛緩(気管支拡張)、胃酸分泌抑制や胃粘膜血流増加や胃粘液分泌促進胃粘膜保護)、血小板凝集抑制、子宮収縮、体温調節(発熱)、細胞膜安定化、覚醒などがある。

 消炎鎮痛剤(NSAIDsなど)は、PGE2合成を阻害し、痛み(疼痛腫脹を抑制する。

 PGE2は、血管透過性を亢進させ、腫脹を起こす
 炎症時に放出されるPGE2は、局所の血流を増加させ、ブラジキニンとともに血管透過性を亢進させ、浮腫形成(腫脹炎症細胞の浸潤を増強させる。

 PGE2は、疼痛を起こす
 PGE2は、侵害受容器ポリモーダル受容器)の感受性を亢進させ、C線維に流れるインパルスを誘発させ、発痛させる
 
PGE2の、発痛作用(知覚神経刺激作用)、血管透過性亢進作用、細動脈拡張作用は、弱い。PGE2は、ブラジキニンによる発痛(疼痛)を増強する(発痛増強物質)。
 PGE2、PGD2は、ラットの脳幹部において、高用量投与により痛覚鈍麻作用を、低用量投与により痛覚過敏作用を示す。PGE2、PGD2は、ラットの脊髄において、痛覚過敏作用のみを示し、痛覚鈍麻作用は示さないという。
 
 PGE2は、発熱を起こす
 PGE2は、視床下部の体温調節中枢に作用して、体温のセットポイントを上昇させるので、発熱が起こる。
 気管支喘息の発作は、発熱時に弱まる傾向があるのは、PGE2により、ロイコトリエン産生が抑制される為と考えられる。

 PGE2は、抗炎症作用を有する
 PGE2は、T細胞からのインターロイキン-2(IL-2)やインターフェロン-γ(IFN-γ)の産生や、ロイコトリエンLT)など他の炎症メディエーターの産生を抑制し、抗炎症作用を有する
 炎症時にマクロファージ(単球)から産生される、IL-1やTNF-αは、PGE2の産生を誘導する。
 PGE2や、 PGI2は、EP2、EP4受容体を介して、細胞内cAMPを上昇させ、情報伝達系の制御によって、TNF-α及びIL‐1の産生をは抑制し、また、IL‐6やIL‐10の産生をは促進する。
 このように、炎症時にマクロファージ(単球)から産生されるPGE2は、抗炎症的に作用する面がある。
 好酸球で産生されるPGE2やPGE1は、ヒスタミンの放出を抑制する。
 PGE2は、視床下部に働いて、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を増加させ、副腎からのステロイドホルモンの産生を増加させる。
 PGE2は、NK細胞活性を抑制する。
 このように、PGE2は、炎症の初期に分泌されて、発熱を促す一方で、炎症を解決(the resolution of inflammation)するようにも指令する。
 以上をまとめると、PGE2の抗炎症作用は、IL-2、IFN-γ、LT、TNF-α、IL‐1、ヒスタミンの産生や放出を抑制し、ステロイドホルモンの産生を増加させ、NK細胞活性を抑制し、IL‐6やIL‐10の産生を促進することによって、生じる。

 PGE2には、睡眠阻害作用(覚醒作用)がある。
 PGE2は、赤血球変形能を、弱いながら低下させる。

 PGE2は、疼痛を起す:PGE2は、PGE1PGI2と同様に、発痛増強物質疼痛増強物質)であり、侵害受容器(ポリモーダル受容器)の痛覚閾値を低下させ、痛覚過敏にさせる。ブラジキニン発痛作用を増強する。
 PGI2の発痛増強作用は、15〜30分でピークに達し、1時間以内に消失する。それに対して、PGE2の発痛作用は、遅れて出現して、3時間以上続くとされる。
 ブラジキニンは、ホスホリパーゼA2を活性化させ、PGE2の産生を刺激する。

 COX-2の主要産物は、PGE2
 PGE2は、細胞内のcAMPレベルを上昇させる。cAMPは、ポジティブフィードバックで、COX-2を誘導する:COX-2誘導→PGE2産生→cAMPの上昇→COX-2誘導
 PGE2で上昇したcAMPは、VEGF(vascular endothelial growth factor)やアンジオポエチン2(Ang2)の生成を誘導し、血管新生を増強する。
 
 PGE2は、adenylate cyclaseを賦活させ、cAMPの生成を盛んにする。
 cAMPは、血小板内のCa2+濃度を低下させ、actomyosinの収縮を抑制し、血小板凝集を抑制する

 PGE2は、破骨細胞による骨吸収を刺激する。

 PGE2は、粘膜上皮細胞内のcAMP濃度を上昇させ、水や電解質(Na+、K+、Cl-)の分泌を亢進させ、下痢を起こす。

 PGE2は、腎では、腎血管(輸入細動脈)を拡張させ、腎血流を増大させ、また、近位尿細管でのNa+再吸収を減少させ、利尿させる:PGE2は、Na+と水を排泄させる
 腎臓では、PGE2は、Na+-K+-ATPaseを抑制して、尿細管でのNa再吸収を抑制する:PGE2は、尿細管では、Gαi蛋白を介して、cAMPの産生を抑制し、PKA(Aキナーゼ:注2)によりNa+-K+-ATPaseが刺激されることを抑制し、Na再吸収を抑制する。(腎臓の糸球体では、高濃度のPGE2は、輸入細動脈を拡張させ、レニン分泌を増加させる(Na再吸収を促進させる)。PGE2は、腎不全では、産生が増加し、腎糸球体の細動脈を拡張させ、糸球体血流量を維持している。)
 NSAIDsにより、PGE2の産生が低下すると、腎臓のNa排泄能が低下する(Na再吸収が、抑制されない。その為、浮腫が生じる。NSAIDsにより、腎糸球体血流量が、低下する。)
 NSAIDsのインドメタシン(IND)は、糸球体の輸入細動脈では、低濃度のアンジオテンシンII(AII) による動脈収縮作用を増強し、輸出細動脈では、高濃度のAT II による動脈収縮作用を増強したという。これは、NSAIDsが、PGE2の産生を抑制し、PGE2による、輸入細動脈や輸出細動脈の拡張作用を、抑制するためと解釈される。
 
 PGE2は、腎では、以下のような作用を有している。
 1.腎の微小血管、特に、輸入細動脈を拡張させて、腎血流や腎糸球体濾過率(GFR)を上昇させる。また、腎髄質の血流を調節する。
 2.緻密斑(マクラデンサ)で産生され、レニン分泌を増加させ、血管を収縮させたり、血圧を上昇させる(アルドステロンを介して、Na+と水の再吸収を促進する)
 3.遠位尿細管で、Na+と水の再吸収を抑制する。
 4.集合管で、抗利尿ホルモン(バゾプレシン)の作用に拮抗し、水の透過性を抑制し、水の再吸収を抑制する。 
 
 PGE2は、マクロファージが抗原をT細胞に提示する際に分泌されて、ナイーブヘルパーT細胞を、Th2細胞(T helper 2 cell)細胞に分化させる。マクロファージから分泌されるIL-12は、ナイーブヘルパーT細胞を、Th1細胞に分化させる。Th1細胞からは、IFN-γ、IL-2が、Th2細胞からは、IL-4、IL-5が、分泌される。さらに、IFN-γは、Th1細胞の分化を誘導し、IL-4は、Th2細胞の分化や、B細胞のIgEなどの抗体産生を誘導する。

 PGE2やPGFは、重炭酸イオンの分泌を促進し、胃酸を中和するという。

 PGE2の受容体には4種類のEP受容体(EPレセプター:EP1、EP2、EP3、EP4)があり、生体内で異なる臓器や組織に存在して、異なるシグナルを細胞内に流すため、標的組織により異なる作用が発現する
 PGE2は、EP2受容体を介して、cAMP濃度を上昇させ、気管支拡張、血管拡張を来たす。
 PGE2は、EP3受容体を介して、cAMP濃度を低下させ、平滑筋収縮、発熱、末梢での発痛を来たす。
 PGE2は、EP4受容体を介して、cAMPを増加させ、肥満細胞からのヒスタミン遊離の抑制、血小板凝集の抑制が、起こる。PGE2は、EP3受容体を介しては、cAMPを減少させる。
 腎臓では、EP1受容体は、集合管に、EP3受容体は、遠位尿細管に、EP4受容体は、腎糸球体と腎動脈に分布している。
 PGE2は、腎臓では、EP3受容体(EP3AとEP3B)を介して、cAMPの産生を抑制し、PKAによるNa+/K+-ATPaseの発現を抑制して、尿細管でのNa+再吸収を抑制する。EP3A受容体(EP3Aレセプター)は、遠位尿細管細胞に存在し、バソプレシンのV2受容体(V2レセプター)と拮抗して、cAMPを低下させる。EP3B受容体(EP3Bレセプター)胞は、カルシウムのシグナルトランスダクションを介して、細胞内カルシウムを増加させて、利尿やナトリウム利尿(Na+の排泄)を生じさせるという。
 NSAIDsは、PGE2の産生を抑制するので、Na+再吸収が増加し、Naと水分が、貯留して、浮腫などの、副作用を示すことがある。

 IL−1βは、NF-Bの発現を介して、COX-2と、EP3受容体のmRNAの発現を、増加させる。
 EP3受容体は、肝臓、腎臓、脂肪(epididymal fat)、膵臓のランゲルハンス島では、最も、多く存在するEP受容体。膵臓のランゲルハンス島では、EP1受容体が、EP3受容体に次いで、多く存在する。
 骨格筋には、EP3受容体は、少なく、EP2受容体が、多く存在する。

 PGE2は、肝臓で、アデニル酸シクラーゼを抑制し、グルカゴンによるグリコーゲン分解(glycogenolysis)を、抑制する。.

 PGE2には、動脈管拡張作用がある。NSAIDs(Indomethacin)は、未熟児に投与すると、PGE2を抑制して、動脈管を閉鎖させる。

 卵胞のCOX-2で合成されるPGE2は、排卵を促進させるので、NSAIDsの長期間服用は、不妊の原因になる。
 PGE2は、妊娠子宮を収縮させるが、非妊娠子宮を弛緩させると言う。

 ビタミンEは、PGE2の合成を抑制する。

 アスピリン喘息と言って、喘息患者がアスピリンを内服すると、喘息発作が誘発されることがある。この機序として、 気管支に分布するPGE2(気管支を拡張し、細胞膜安定化作用がある)の産生が、アスピリンにより抑制され、気管支が収縮したり、肥満細胞からヒスタミンなどが遊離されることが、考えられる。また、アスピリンは、PG合成系を阻害するが、リボオキシゲナーゼ経路には影響しないので、強力な気管支収縮作用のあるロイコトリエン(LTC4、LTD4、LTE4)の産生が増加して、アスピリン喘息が起こることも、考えられる。

 PGE2は、脂肪組織では、EP3受容体を介して、アデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase)を抑制し、cAMPの産生を抑制し、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)による、中性脂肪の分解を、抑制する。

 2).PGI2(プロスタサイクリン)
 PGI2(prostacyclin)は、血管内皮細胞から産生され、血小板凝集を抑制したり、血管平滑筋を弛緩させて血管を拡張させたりして、血管内の血流の維持に関与する。
 血管内皮細胞から産生されるPGI2は、血小板凝集や血管平滑筋に対して、血小板から産生されるTXA2とは相反する作用を示し、恒常状態では、この両者の生成のバランスが保たれている。
 PGI2には、肺でも生成され、気管支拡張作用(気管支平滑筋を弛緩させる)、肺血管拡張作用もある:一般にPGは、肺の細胞内で酸化され(−OHが=Oになる)、生理活性を失う。しかし、PGI2は、肺の細胞内に入りにくいので、肺ではほとんど代謝されない。
 PGI2は、でも産生されて、胃粘膜の血流を維持したり、粘液産生を増加させ、胃粘膜を保護している。
 PGI2は、腎でも生成される。
 
 PGI2は、アデニル酸シクラーゼ(アデニルサイクラーゼ)の活性を亢進させる。アデニル酸シクラーゼは、ATPからcAMPを生成するcAMPは、血小板内のCa2+濃度を低下させ、血小板の収縮や放出反応を抑制する。cAMPは、血小板膜のリン脂質からアラキドン酸が遊離されるのを抑制し、また、アラキドン酸からのトロンボキサンA2(TXA2)の生成を抑制する。このようにして、PGI2は、cAMPを生成させ、血小板内のCa2+濃度を低下させ、血小板凝集を抑制する。
 PGI2には、血小板凝集塊を解離させる作用もある。

 PGI2は、発痛増強物質である。

 PGI2は、細胞のcAMP濃度を増加させ、抗炎症的に作用する。
 PGI2は、PGH2からprostacyclin synthetaseにより、生成される。
 PGI2は、不安定で半減期が短く、不活性な6-keto-PGFにすぐ分解される。

 PGI2は、コレステロールを分解する酵素、ACEH活性を促進する。

 PGI2の受容体は、IP受容体とのこと。

 経口プロスタサイクリン誘導体製剤(ベラプロストナトリウム:医薬品名ドルナー)には、血管内皮細胞保護作用があり、過酸化脂質による血管内皮細胞障害を抑制する。

 3).PGE1
 PGE1には、動脈管拡張作用や血小板凝集抑制作用がある。(注射で新生児期の動脈管開存症に用いた時の副作用には、発熱、下痢、出血傾向、などがある。)
 PGE1は、胃酸分泌を抑制し、発熱させるという。

 60分間膵臓を阻血する実験で、阻血する前にPGE1を30分間持続静脈注射すると、膵臓細胞は保護され、インスリン分泌能や外分泌能(アミラーゼなど)の傷害は、軽減される(膜の安定化作用)。

 4).PGF
 PGFは、マクロファージ、白血球で、生成される。
 PGFには、子宮収縮作用(生理痛の原因となる)、消化管粘液分泌促進、腸管蠕動亢進作用、気管支平滑筋収縮作用、粘液分泌亢進作用がある。
 なお、子宮宮筋層は主としてPGI2、TXA2を産生し、子宮内膜は主として PGE2とPGFを産生するという。

 5).PGD2
 PGD2は、ヒト肺実質、肥満細胞で産生される。
 PGD2には、血管平滑筋収縮作用、血管透過性亢進作用、気管支平滑筋収縮作用、粘液分泌亢進作用があるが、血小板凝集は抑制する。
 PGD2には、自然睡眠誘発作用がある。カゼなどで発熱した時に、眠くなって、体を休息させようとする。
 PGD2は、アレルギー性鼻炎で、ヒスタミンLTPAFと同様に、鼻粘膜の血管に直接作用して、血漿を漏出させ、鼻汁成分にさせる。

 補体C5aの食欲増進作用(摂食促進作用)には、PGD2が関与している。

 PGD2は、PGH2より、PGD合成酵素により合成される。
 PGD2の代謝産物の15-deoxy-PGJ2は、脂肪細胞の分化や、肥満に関与すると言う。

 6).PGG2、PGH2
 PGG2PGH2には、血小板凝集促進作用や、血管平滑筋収縮作用、気管支平滑筋収縮作用がある。

 2.トロンボキサンA2(TXA2
 TXA2は、血小板で、トロンボキサン変換酵素により生成される。
 TXA2には、血小板凝集作用、血管平滑筋収縮作用、気道平滑筋収縮作用がある。
 生体は、外傷などで血管が損傷を受けた時に、血小板から、TXA2を放出させ、血小板凝集や血管収縮を起させ、止血しようとする。
 TXA2は、血小板から濃染顆粒放出させる
 トロンボキサン合成酵素の活性の高い組織は、まず、血小板、続いてマクロファージ、肺、肝臓である。その他の組織にも、低値ながらトロンボキサン合成酵素は、存在する。

 同じアラキドン酸から生成される、プロスタグランジンI2PGI2プロスタサイクリンには、血小板凝集阻止作用がある。(同じ材料から、同じ代謝経路で、反対の作用を示す生理活性物質が産生されることは、生命の恒常性を保つために、好都合な仕組みと、思われる。)

 n-3系の不飽和脂肪酸のEPAが、血小板でCOXにより代謝されて出来るトロンボキサンA3(TXA3)は、アラキドン酸が代謝されて出来るTXA2と異なり、血小板凝集作用や、血管平滑筋収縮作用が無いとされている。
 実際、EPAを含む魚食により、血小板凝集能が抑制される。
 EPAからは、PGI3も生成されるが、PGI3には血小板凝集抑制作用がある。
 魚油(EPAやDHAを含む)を、成人の喘息患者に投与すると、臨床症状は改善しないが、多核白血球のEPAは上昇し、アラキドン酸は減少し、LTB4、C5aは減少すると言う。

 TXA2は、血小板内のCa2+濃度を増加させ、血小板を収縮させたり、ADPやセロトニンを放出させ、血小板を凝集させる。また、血小板内のCa2+濃度の増加により、PLA2が活性化され、アラキドン酸からのTXA2の合成が促進される。
 TXA2受容体は、PGH2受容体と同じ。
 TXA2は、血小板で、膜のアラキドン酸から、PGH2を経て、thromboxane synthetaseにより、生成される。

 TXA2は、血中半減期が約30秒と短く、TXB2に代謝される。
 慢性糸球体腎炎腎不全群、紫斑病性腎炎活動期では、血漿TXB2は、高値を示し、PGI2の代謝産物の血漿6-keto-PGFは、低値を示す。
 
 3.ロイコトリエン(LT)
 LTC4、LTD4、LTE4は、肥満細胞好酸球、好中球、単球・マクロファージなどから産生される。
 LTC4、LTD4、LTE4は、気管支、血管、消化管の平滑筋を、ゆっくりと、持続的に収縮させる。
 LTC4、LTD4、LTE4の気管支平滑筋収縮作用は、ヒスタミンより強力(LTC4は1000倍)に作用し、しかも、その収縮作用は持続する。
 また、LTC4、LTD4、LTE4は、気管支喘息の気道炎症に関与する:毛細血管の血管透過性を亢進させ組織内に浮腫を誘導させたり、気道粘膜の繊毛運動を減少させたり、気道粘液の分泌を亢進させたり、好酸球を気道に遊走・活性化させる。
 LTC4、LTD4、LTE4は、従来、Slow-Reacting Substance of Anaphylaxis:SRS-Aと呼ばれていたが、最近は、システイニルロイコトリエン(CysLT:cysteinyl LT)と呼ばれる。
 LTB4には、強力な白血球遊走能亢進作用、及び白血球活性化作用がある。

 ロイコトリエン拮抗薬は、ロイコトリエンの受容体への結合を阻害し、抗アレルギー作用、抗炎症作用を示す。
 表3 エイコサノイドの生理活性の比較
 エイコサノイド  TXA2  PGI2  PGE2  LTC4、D4、E4  LTB4
 産生細胞  血小板など  血管内皮細胞など  腎、胃、肺、肝臓など  肥満細胞など  肥満細胞など
 気管支平滑筋  収縮        弛緩        弛緩        収縮        無し      
 気道粘液分泌  不明  −  抑制  亢進  無し
 胃酸分泌  (抑制)  抑制  抑制  −  −
 好中球遊走作用  不明  −  −  ー  有り(注3
 毛細血管透過性  無し  亢進  亢進  亢進  無し
 血管平滑筋  収縮  弛緩  弛緩  収縮  −
 血小板凝集  促進   抑制        (抑制)       −   −
 肉や卵に多く含まれるアラキドン酸(注4)や、体内でアラキドン酸に代謝されるリノール酸を過剰に摂取すると、生理活性物質である、TXA2、PG、LTの合成が亢進して、炎症反応の強度が影響を受ける可能性があります。 

 ホスホリパーゼ阻害剤には、塩酸ジラゼフ (医薬品名:コメリアン )がある。
 トロンボキサンA2合成阻害剤には、塩酸オザグレル(医薬品名:ドメナン、ベガ)がある。
 

 注1
ホスホリパーゼA2(ホスフォリパーゼA2、phospholipase A2)の加水分解に際し、リゾリン脂質が生成されると、考えられる。
 また、ホスホリパーゼA2の加水分解に際しアラキドン酸と共に、lysophosphoryl cholineが産生され、PAF(platelet activating factor:血小板活性化因子)が合成される。
 PAFは、好塩基球、肥満細胞、単球・マクロファージ、好中球、好酸球、血管内皮細胞、血小板など、広範な細胞から放出され、血小板凝集血管透過性亢進作用(ヒスタミンより強力)、平滑筋収縮作用、好酸球の遊走作用、血圧降下作用がある。

 注2:G蛋白質共役型受容体ファミリーには、G蛋白(α/β/γの3量体型)が共役している。
 細胞外の受容体にリガンド(アセチルコリン、ホルモンなど)が結合すると、受容体の細胞質ゾル側の構造が変化し、G蛋白と結合する。すると、G蛋白のαサブユニットがGTPと結合し、活性型αサブユニットとなり、βγ複合体と解離する。活性型αサブユニットは、2秒程度の後に、アデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase)系や、ホスホリパーゼC系を活性化させる。活性型βγ複合体は、Kチャネルなどに結合して、チャネルを開放する。活性型αサブユニットが、結合しているGTPを加水分解して、GDP結合型の不活性型αサブユニットになると、βγ複合体と再び会合して、不活性型G蛋白に戻る。このようにG蛋白は、分子スウィッチとして、機能している。

 1).アデニル酸シクラーゼ系(AC系):
 アデニル酸シクラーゼ系(
AC系)では、ACにより、ATPからcAMPが生成され、cAMP依存性Aキナーゼ(protein kinase A:PKA)のCサブユニットを活性化させる。活性化されたAキナーゼのCサブユニットは、核内に移行して、標的遺伝子の転写活性を高め、様々な生理作用を示す。

 2).ホスホリパーゼC系(
PLC系):
 ホスホリパーゼC系(PLC系)では、PLCにより、ホスファチジルイノシトール2リン酸(PIP2)が分解され、イノシトール3リン酸(IP3)とジアシルグリセロール(DAG)が生成される。
 
IP3(イノシトール3リン酸)は、小胞体Ca2+チャネル(IP3受容体)に結合して、Ca2+を細胞質ゾルに放出させたり、ミトコンドリアから、Ca2+を放出させ、細胞内Ca2+濃度を上昇させる。細胞膜のチャネルからも、Ca2+が流入する。Ca2+は、Ca2+-カルモジュリン依存性キナーゼ(CaMK)を活性化させ、標的蛋白質をリン酸化させる。
 Ca2+は、Cキナーゼ(PKC)と結合する。Ca2+と結合したPKCは、細胞膜にリクルートされ、細胞膜のDAGにより活性化される。活性化されたPKCは、標的蛋白質(セリン/スレオニン)をリン酸化させ、様々な細胞応答を示す。

 注3:LTB4は、好酸球遊走作用もある。


 注4:アラキドン酸の含有量は、可食部100mg当たり、豚もも肉28mg、鶏卵155mg、鯖(サバ:生)189mg、牛乳3mg。魚は、EPAも含んでいるが、同時に、魚は、アラキドン酸も多く含んでいる

 参考文献
 ・吉野加津也、他:サイトカインと炎症 小児科 35:1233-1246, 1954.

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