不飽和脂肪酸
 このページは、移転しました。
 自動的にジャンプしない場合、ここをクリックして下さい


 脂肪酸の炭素間に、二重結合注1を有するのが、不飽和脂肪酸

 ヒトでは、リノール酸(n-6系)と、α-リノレン酸(n-3系)が、必須脂肪酸。

 1.多価不飽和脂肪酸には、n-6系と、n-3系がある
 二重結合を複数有する多価不飽和脂肪酸には、n-6系とn-3系がある:脂肪酸を構成する炭素を、メチル基の方から数えて、最初の炭素をn、2番目の炭素をn-1と数える。n-6系とは、メチル基の方から調べて、最初に存在する二重結合が、n-5の炭素とn-6の炭素の間に存在する多価不飽和脂肪酸のこと。n-3系では、最初の二重結合が、n-2の炭素とn-3の炭素の間に存在する。
 n-6系の多価不飽和脂肪酸(ω6脂肪酸)は、リノール酸(C18:2、LA)→γ-リノレン酸(GLA)→ジホモ-γ-リノレン酸(DGLA)→アラキドン酸(C20:4、AA)と代謝される。
 n-6系の多価不飽和脂肪酸は、主としてリノール酸として摂取され、生体内では、アラキドン酸に代謝される。アラキドン酸は、細胞膜や血漿中では、リン脂質として、存在する。

 n-3系の多価不飽和脂肪酸(ω3脂肪酸)は、α-リノレン酸(C18:3、ALA)→→(エ)イコサペンタエン酸(EPA:eicosapentaenoic acid、C20:5)→ドコサヘキサエン酸(DHA:docosahexaenoic acid、C22:6)と代謝される。
 n-3系の多価不飽和脂肪酸には、抗血栓作用や、VLDL低下作用がある。また、末梢組織のインスリン感受性を高める作用がある。
 n-3系の多価不飽和脂肪酸を含有する魚油カプセルを、単独、あるいは、ビタミンEとともに内服させると、心筋梗塞の発作の再発が予防される。

 不飽和脂肪酸は、小腸粘膜の細胞膜の電気抵抗を減少させる:不飽和脂肪酸は、細胞膜の流動性を上昇させる。逆に、飽和脂肪酸は、細胞膜の電気抵抗を増加させ、細胞膜の流動性を減少させる。

 二重結合を有する多価不飽和脂肪酸は、食品中でも生体内でも、酸化されやすいので、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化ビタミンを、同時に摂取する必要がある。
 食品中に多価不飽和脂肪酸の酸化を防止するために、酸化防止剤(BHT、ビタミンE、ビタミンCなど)が添加される。

 n-3系の多価不飽和脂肪酸は、免疫抑制的に作用する。
 T細胞のIL-2産生や、増殖反応、細胞障害T細胞活性などは、n-3系の多価不飽和脂肪酸を摂取すると、低下する。
 マクロファージからの、IL-1α、IL-1β、TNF-αの産生は、 n-3系の多価不飽和脂肪酸を1日2.7g、連続4週間摂取すると、低下する。
 NK細胞活性は、脂肪摂取を制限すると、増強する(脂肪摂取を全エネルギーの22%以下にする)。また、NK細胞活性kは、高脂肪食、特に、n-3系の多価不飽和脂肪酸を多く含む魚油を摂取すると、低下する。

 n-3系の多価不飽和脂肪酸は、細胞膜の臨脂質の組成を変化させ、細胞膜の流動性を変化させる(流動性を上昇させる)。 

 2.必須脂肪酸
 体内では、グルコースブドウ糖)が分解されて出来るacetyl-CoAから、ミトコンドリア外のマロニルCoA経路を経て、二重結合の無い飽和脂肪酸のパルミチン酸が、合成される。
 体内(肝臓)では、飽和脂肪酸に1ケの二重結合を生じさせ、一価不飽和脂肪酸を作ることは出来る。
 例えば、ステアリン酸(C18:0)が、オレイン酸(C18:1、注2)に、変えられる。
 しかし、二重結合が二つ以上ある多価不飽和脂肪酸は、合成出来ないので、食事から補う必要がある。
 このように食事から補う必要のある多価不飽和脂肪酸は、必須脂肪酸(あるいは、不可欠脂肪酸)と呼ばれる。
 ヒトの必須脂肪酸は、最近は、リノール酸(n-6系)とα-リノレン酸(n-3系)とされる。
 アラキドン酸EPADHAも、他のアミノ酸や炭水化物からは合成できないので、広義の必須脂肪酸と呼ばれる。

 なお、植物では、例えば、ステアリン酸(C18:0)→オレイン酸(C18:1)→リノール酸(C18:2)→α-リノレン酸(C18:3)と、二重結合の数が変えられる。

 3.摂取する食餌により、体内の脂肪酸の比率は、変わる
 血液中の不飽和脂肪酸の比率は、摂取する食餌によって、変わる。
 同じ、エスキモー人でも、グリーンランドに在住している人たちと、デンマークに在住している人たちでは、前者の方が、血清中の(エ)イコサペンタエン酸(EPA)の量が多く、リノール酸の量は少ないことが判明している。

 ラットに、コーン油(リノール酸を多く含む)、大豆油(リノール酸に加え、α-リノレン酸を5%程度含む)、エゴマ油(リノール酸より、α-リノレン酸を多く含む)を脂質の原料とする食餌で、4週間飼育した実験結果では、
 1.小腸粘膜リン脂質中のリノール酸量は、食餌の油の種類により、差がなかった。
 しかし、小腸粘膜リン脂質中のアラキドン酸量は、コーン油や大豆油で飼育したラットに比べて、エゴマ油で飼育したラットは、少なかった。
 2.小腸粘膜リン脂質中のα-リノレン酸とエイコサペンタエン酸の量は、コーン油<大豆油<エゴマ油の順に多かった。 

 脂肪酸の構成比を調べた報告では、アラキドン酸は、摂取食物中より血清中の比率が多く、血清中に蓄積される傾向にある。
 また、脂肪組織中の不飽和脂肪酸の比率は、摂取する食事の質や量により変化する。

 4.不飽和脂肪酸を摂取すると、コレステロールが低下するが、酸化LDLは増加する
 食事でリノール酸を摂取すると、血清中のコレステロール(LDLVLDL)やトリグリセリドが低下する。
 しかし、食事で、不飽和脂肪酸を摂取し過ぎると、HDLが低下したり、酸化LDLが増加する。

 近年、リノール酸などの不飽和脂肪酸を過剰に摂取することが、アレルギー性疾患の増加を招いているという、指摘もある。
 また、リノール酸は、ある種の癌(乳癌、結腸癌、前立腺癌など)の発症を、増加させると考えられる。
 リノール酸から体内で誘導されるアラキドン酸からは、LTC4、LTD4、LTE4が生成される。LTC4、LTD4、LTE4は、毛細血管の透過性を亢進させ組織内に浮腫を誘導させたり、ヒスタミンより強力に気管支平滑筋を収縮させたりして、気管支喘息の気道炎症に関与する。
 不飽和脂肪酸が多い食餌を摂取したラットのリンパ球は、強いリンパ球増殖反応を示す。
 n-6系の不飽和脂肪酸は、IL-1などのサイトカインの産生を増加させる。
 反対に、n-3系の不飽和脂肪酸は、サイトカインの産生を抑制して、アレルギー性疾患や自己免疫疾患の改善に有効とされるが、結核などの感染症に対する抵抗力を減弱させるおそれも指摘されている。

 不飽和脂肪酸を与えた子ネズミは、飽和脂肪酸を与えた子ネズミより、寿命が半分くらいに短いと言う(注3)。

 アラキドン酸やDHAは、血管内皮細胞を活性化させるという(EPAは、あまり、活性化させない)。

 5.リン脂質
 リン脂質(グリセロリン脂質)は、1分子のグリセロールに、2分子の脂肪酸と、1分子の燐酸と塩基などの化合物が、結合している。
 塩基がコリン(注4)の場合は、レシチン(Lecithin、別名、ホスファチジルコリン:phosphatidyl choline:PtC)と呼ばれる。
 レシチンは、脳や神経、卵黄や大豆に多く含まれる。
 レシチンは、血清リン脂質の70%を占める。
 レシチンには、界面活性作用があり、血中のコレステロール値を低下させたり、血圧を低下させたり、血小板凝集を抑制する作用があるという。

 細胞膜は、リン脂質が二重層になって構成されている:、細胞膜の外側は、レシチン(ホスファチジルコリン)やスフィンゴミエリンが、多い。細胞膜の内側は、ホスファチジルエタノールアミンや、ホスファチジルセリンが、多い。

 リン脂質は、体内細胞を構成している。
 リン脂質のリン酸と塩基の化合物の領域は、親水性で、残りの領域は、疎水性になっている。 細胞膜は、2層のリン脂質によって構成されている:脂質二重層のリン脂質は、疎水性領域を向かい合わせて2層に並んで、細胞膜の外側と細胞質側に親水性領域を配置している。
 
 血清リン脂質の大部分は、肝臓で合成される。

 多価不飽和脂肪酸(リノール酸アラキドン酸、リノレン酸など)は、多くの場合、グリセロールのβ位(中央のC2位)に結合し、リン脂質として存在している。
 
 なお、トリグセリド(triglyceride:TG、中性脂肪トリアシルグリセロールとも呼ばれる、注5)は、1分子のグリセロールに、3分子の脂肪酸が結合しているが、結合している脂肪酸の大部分は、化学的に安定な飽和脂肪酸(パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸など)で、不飽和脂肪酸は少ない(注6)。
 トリグリセリド(中性脂肪)は、エネルギー供給源として、体内に貯蔵される。 

 6.リゾホスファチジルコリン(LPC)
 ホスホリパーゼA2(phospholipase A2注7)は、リン脂質のレシチン(PC)のC2につく脂肪酸(β位の脂肪酸)を加水分解し、リゾレシチン、つまり、リゾホスファチジルコリン(LPC)が生成されるという。
 LPCは、食品が空気中の酸素で劣化しても、生成される。
 LPCの生成は、ビタミンEを食品に添加することで、抑制される。

 肥満細胞(注8)は、刺激される(表面のIgE受容体に、抗原が結合して、架橋される)と、ホスファチジルセリン→ホスファチジルエタノールアミン→ホスファチジルコリン(レシチン)と生成され、カルシウムイオン(Ca2+)が細胞内に流入する。
 ホスファチジルコリン(レシチン)は、ホスフォリパーゼA2の作用で、リゾホスファチジルコリンにされ、細胞膜と顆粒膜の融合が促進され、脱顆粒が起こり、ヒスタミンなどが放出される。

 蛇毒や細菌溶血毒も、ホスホリパーゼA2作用のある、レシチン分解酵素(レシチナーゼ)であり、レシチン(PC)から、C2につく脂肪酸1ケを加水分解して、LPCを生成し、溶血させるという。
 
 他にも、レシチン(PC)から誘導される、血小板活性化因子(PAF)や、リゾホスファチジン酸 (LPA:LPCが、血漿中のりゾホスフォリパーゼDにより加水分解されて生成される)には、血小板凝集作用がある。
 また、レシチン(PC)を構成する不飽和脂肪酸が過酸化されて、PAF様の生理活性を有するリン脂質が生成される。この際、ドコサヘキサエン酸(DHA)で構成されるレシチン(PC)から、最もPAF様の生理活性が高いリン脂質が生成されるという。

 7.過酸化脂質
 不飽和脂肪酸の酸化生成物は、過酸化脂質と総称される。分子内にペルオキシド結合(-O-O-)を持つ。
 過酸化脂質は、細胞膜を障害したり、動脈硬化の発症に関係する。
 実際に、血液中の過酸化脂質は、心筋梗塞、急性期脳梗塞、糖尿病、急性肝炎、劇症肝炎、未熟児網膜症などで、増加している。
 不飽和脂肪酸の摂取は、過量にならないようにすると同時に、抗酸化物質を十分に摂取することが、大切。
 血液中の過酸化脂質値は、遊離脂肪酸が多い場合や、高トリグリセリド血症(高中性脂肪血症)では、高値を示す。

 注1:炭素原子間の二重結合C=C)は、一つのσ結合と、一つのπ結合から、構成される。
 炭素には、電子を蓄える性質がある。

 注2オレイン酸(C18:1)は、一価不飽和脂肪酸。
 オレイン酸は、酸化されにくい。
 オレイン酸は、コレステロール低下作用がある。リノール酸は、ある一定量以上をとると、HDLも低下させてしまい、結果的に、LDLが増加してしまうが、オレイン酸は、LDLのみを低下させるという。
 オリーブ油は、オレイン酸を多く含む:78%が、オレイン酸で、残りは、n-6系不飽和脂肪酸(リノール酸が、8%)と、飽和脂肪酸。オリーブ油は、リノール酸の含有量が少ないので、アレルギー体質の人には、リノール酸の含有量が多いサラダ油などよりは、健康に良いかも知れないが、肥満で、カロリー制限が必要な人は、控えた方が良いと思われる。
 オリーブ油は、空腹時に、スプーン1〜2杯、飲むと、便秘が改善する(オリーブ油が、胆嚢の収縮作用や、小腸の蠕動運動を促して、便塊が滑りやすくする)。
 オレイン酸が含まれる割合:オリーブ油=78%、菜種油=61%、サラダ油=45%、ゴマ油=39%、コーン油=31%
 
 注3:飽和脂肪酸に関しては、動物実験の結果で、飽和脂肪酸を摂取させた動物は、記憶テストで、低い成績を示し、神経の樹状突起の数や長さが、未発達であったと言う。

 注4:コリンは、CH2CH2N+(CH3)3。コリンには、脂肪乳化作用がある。
 塩基が、コリンのリン脂質は、ホスファチジルコリン(レシチン)。
 塩基が、エタノールアミン(-CH2CH2NH2)のリン脂質は、ホスファチジルエタノールアミン
 リン脂質のリン酸と塩基の部分は、親水性で、他の部分は、疎水性。

 注5:中性脂肪は、体内で、ブドウ糖(グルコース)の代謝産物のグリセロール-3-リン酸(α-グリセロリン酸)か、ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)と、脂肪酸が、エステル結合して、合成される。 
 グリセロール-3-リン酸が豊富に存在する時には、生じた脂肪酸に相当する分量は、グリセロール-3-リン酸と、再エステル化され、中性脂肪(トリアシルグリセロール)に戻ります。グリセロール-3-リン酸が不足している時には、生じた脂肪酸は、遊離脂肪酸として、血中に放出されます。グリセロール 3-リン酸の前駆体は、グルコースなので、グルコースの吸収速度が、遊離脂肪酸の動員に、関連します。
 グリセロール 3-リン酸は、グルコースから、解糖時に生成されます:グルコース→グルコース 6-リン酸→フルクトース 6-リン酸→フルクトース 1,6-ビスリン酸→ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)→グリセロール 3-リン酸と、生成されます。
 グリセロール 3-リン酸は、フルクトース(果糖)からも、生成されます:フルクトース→フルクトース 1-リン酸→グリセルアルデヒド→グリセロール→グリセロール 3-リン酸と、生成されます。フルクトースは、フルクトース 6-リン酸となって、解糖系にも、導入されます(糖新生の経路の図に示しました)。
 なお、グリセロール-3-リン酸は、α-グリセロリン酸とも呼ばれて来ましたが、グリセルアルデヒド 3-リン酸(GAP)とは、異なります。ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)は、グリセロール 3-リン酸に変換されます。 
 グルコースは、解糖時に、上に述べたように、DHAPを経由して、
 ・グルコース→グルコース 6-リン酸→フルクトース 6-リン酸→フルクトース 1,6-ビスリン酸→ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)→グリセルアルデヒド 3-リン酸(GAP)→1,3-ビスホスホグリセリン酸(1,3-BPG)→
 と分解される経路と、フルクトース 1,6-ビスリン酸から、DHAPを経由しないで、直接、グリセルアルデヒド 3-リン酸(GAP)に分解される、
 ・グルコース→グルコース 6-リン酸→フルクトース 6-リン酸→フルクトース 1,6-ビスリン酸→グリセルアルデヒド 3-リン酸(GAP)→1,3-ビスホスホグリセリン酸(1,3-BPG)→
 と言う経路とがあります。
 皮脂腺から分泌される皮脂は、血中の中性脂肪を原料に、分泌される。甘い物(糖分)を食べ過ぎると、血中に中性脂肪が増加して、皮脂の分泌が増加する。ビタミンB2は、皮脂腺からの皮脂の分泌量を制御している(抑制している)が、甘い物(糖分)を食べ過ぎると、糖分の分解の為、ビタミンB2が消費され、皮脂の分泌量が増加する。

 注6:トリグリセリド(中性脂肪)に含まれる不飽和脂肪酸の比率は、動物によって異なる。
 牛や豚の脂肪は、トリグリセリド(中性脂肪)に、飽和脂肪酸を多く含むが、鳥の脂肪は、トリグリセリド(中性脂肪)に、不飽和脂肪酸を多く含む:飽和脂肪酸:不飽和脂肪酸の比率は、牛肉45:55、豚肉40:60、鶏肉31:69(もも肉)。その為、脂肪の融点は、牛肉40〜50度、豚肉33〜46度、鳥肉30〜32度であり、動物によって、脂肪の固まり易さが異なる。

 注7ホスホリパーゼA2(phospholipase A2PLA2)は、下記のように、リン脂質のC2につく脂肪酸残基を加水分解し、リゾリン脂質を生成させる。リゾリン脂質は、界面活性作用があり、細胞膜を壊し、細胞を溶かす。


 注8肥満細胞は、ヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、PAFなどを産生する。

 |トップページ脂質と血栓の関係ミニ医学知識医学の話題小児科疾患生命の不思議リンク集