血液凝固と炎症
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血液凝固と炎症との間には、関連がある。
生体で、感染症などで炎症が起きる時、血管内皮細胞が活性化されたり、障害を受けて、血液は凝固しやくなる。
反対に、血液が凝固する時、炎症が起こる。
血液凝固に伴い産生されるブラジキニンは、ホスホリパーゼA2を活性化させ、PGE2が生成される。PGE2にも、弱い、発痛作用(知覚神経刺激作用)、血管透過性亢進作用、血管拡張作用(細動脈拡張作用)があるが、PGE2は、ブラジキニンの発痛作用を増強し、痛覚(疼痛)過敏にする。
1.接触相
血液が、異物面(血管内皮細胞下の結合組織のコラーゲンや、ガラス面)などと接触すると、第XII因子(Hageman factor)が、活性化される。
活性化された第XII因子は、プレカリクレインをカリクレインにするが、同時に、第XI因子を活性化する。
プレカリクレインは、高分子キニノゲン(HMWK)と複合体を形成している。高分子キニノゲンは、活性化された第XII因子が、プレカリクレンをカリクレインにする反応を促進する。
活性化された第XII因子により生じたカリクレインは、逆に第XII因子を活性化し、内因系凝固反応を促進する。
活性化された第XII因子は、血管透過性を亢進させる。
また、カリクレインは、高分子キニノゲン(HMWK)を分解してブラジキニンを放出させる。
2.カリクレイン
カリクレインには、血漿カリクレイン(分子量約11.5万)と、腺性カリクレイン(分子量約3万〜5万)の二種類が存在する。
血漿カリクレインは、血漿中に存在する。
腺性カリクレインは、殆ど全ての組織、特に腎臓、膵臓、顎下腺に多く、膵液、尿中にも見い出される。
腎臓の皮質部から分泌されるカリクレンは、肝臓から分泌されるキニノゲンに作用して、キニンを作り(カリクレイン・キニン系)で、降圧系に作用する。
血漿カリクレインは、(リンパ液や血液中で)高分子キニノゲンを分解して、ブラジキニンを産生する。
腺性カリクレインは、高分子と低分子キニノゲンを分解して、カリジンを産生する。カリジンもブラジキニン同様、発痛物質で、カリジンにアミノペプチダーゼが作用すると、ブラジキニンになる。
カリジン(アミノ酸10ケ)とブラジキニン(アミノ酸9ケ)は、キニン(kinin)と呼ばれる。
カリクレインには、血液凝固第XII因子を活性化する作用がある。
3.ブラジキニン
ブラジキニンは、血管透過性亢進作用、発痛作用、細動脈拡張作用、腸管や気管支の平滑筋収縮作用がある。
ブラジキニンは、血液凝固に際して、生成される:接触相で、活性化された第XII因子により生じたカリクレインが、血漿中の高分子キニノゲン(HMWK:high molecular weight kininogen、肝臓で合成され、血漿中ではα2-グロブリン分画に含まれる)を分解し、ブラジキニン(BK:bradykinin)が遊離・放出される:血液凝固と、K系(カリクレイン・キニン系)と、RAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)との関連を参照のこと。
ブラジキニンは、9ケのアミノ酸から成るpolypeptide:Arg・Pro・Pro・Gly・Phe・Ser・Pro・Phe・Arg。
ブラジキニンには、強力な血管平滑筋弛緩作用があり、血管を拡張させて血圧を低下させる。
また、ブラジキニンは、毛細血管透過性を亢進させて、浮腫をもたらす。
これは、ブラジキニンが、血管内皮細胞のB2受容体に結合し、血管内皮細胞を収縮させ、毛細血管透過性が亢進し、その際、NOが産生されて、細動脈平滑筋が弛緩し、血管拡張がするためと考えられる。
ブラジキニンは、発痛物質であり、炎症の際に、侵害受容器(ポリモーダル受容器)の線維自由終末(C線維)を興奮させ、発痛(灼けつく痛み:burning pain)、痛覚過敏、痒み(注1)をもたらす。
ブラジキニンは、ホスホリパーゼA2を活性化させ、PGE2が生成される。PGE2にも、弱い、血管透過性亢進作用、血管拡張作用、発痛作用があるが、PGE2は、ブラジキニンの発痛作用を増強し、痛覚過敏にする。
ブラジキニンは、肥満細胞のB2受容体に結合し、ヒスタミンを遊離させる。
ブラジキニンは、腸管や子宮の平滑筋を緩徐に(bradys)収縮(kinein)させる。
回腸粘膜には、ブラジキニン受容体が存在し、PG(PGE2)の産生を介して、腸管のCl-分泌に影響している。
ブラジキニンは、肺で、キニナーゼII(アンジオテンシン変換酵素:ACE)で分解され、尿中に排泄される。
内因系血液凝固の接触相の構成成分であるカリクレインにより、炎症メディエーターとして機能するブラジキニンが生成される。
そのため、血液の凝固反応が起きると、浮腫や発痛といった炎症症状が現れる。
キニンは、動脈の血管内皮細胞に作用して、PGI2などのエイコサノイド、NOの合成を促進させ、血管を拡張させるという。
ブラジキニンは、古典的な急性炎症症状の、発赤、腫脹、発熱、疼痛を生じる
ブラジキニンの受容体には、B1受容体、B2受容体がある。
肥満細胞は、B2受容体を持ち、ブラジキニンが結合すると、ヒスタミンやPAFが放出される。
PAFは、血小板に作用し、セロトニンを放出させ、血管収縮が起こる。
ブラジキニンは、ホスホリパーゼA2(ホスフォリパーゼ、PLA2)を活性化させ、プロスタグランジン(PG)の合成を促進させる。ブラジキニンは、PGI2の産生の促進、NOの合成の促進、エンドセリンの産生の抑制により、血圧を低下させる方向に働く。
血液中のブラジキニンは、血液中や組織中のキニナーゼIやキニナーゼIIで分解され、不活化される。
キニナーゼIIは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)と同一である。
唾液腺で、唾液が分泌される時には、毛細血管や毛細リンパ管が拡張し、血流やリンパ流が増加するが、この血管の拡張は、ブラジキニンの作用。腺細胞が腺性カリクレインを分泌し、血漿中の高分子キニノゲンを分解し、ブラジキニンが生成される。
4.レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(renin-angiotensin-aldosterone system:RAAS)
体内のNa+量は、主にレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系により調節される。
主として肝臓で作られるアンジオテンシノーゲンが、血液中に分泌され、腎皮質の傍糸球体細胞から分泌されるレニンにより、アンジオテンシンI(AI、又は、ATI)になる。
アンジオテンシンIは、肺、血漿、腎のアンジオテンシン変換酵素(ACE)により、アンジオテンシンII(AII、又は、ATII)が作られる。
アンジオテンシンIIやアルドステロンは、NFkBの核への移行を促進させ、多くの炎症性メディエーターを発現させ、炎症を促進させる。
アンジオテンシンIIは、NADHオキシダーゼ(NADPHオキシダーゼ:NADPH酸化酵素)を活性化させ、スーパーオキシドや過酸化酸素と言った活性酸素を産生させ、血管を障害する。
アンジオテンシンIIは、血管平滑筋を収縮させたり、副腎皮質からのアルドステロンの産生分泌を促進する。
アンジオテンシンIIの受容体には、AT1受容体やAT2 受容体が存在する(注2)。
アルドステロンは、腎の遠位尿細管に作用して、ナトリウム、水の再吸収を促進し、体液量が増加し、血圧が上昇する。
ACE阻害剤は、レニン・アンジオテンシン系に作用して、アンジオテンシンIIの産生を抑制すると同時に、カリクレイン・キニン系でキニナーゼII(=ACE)を抑制し、ブラジキニンの分解を抑制する。蓄積したブラジキニンは、NO、PGI2などの産生を増加させる。その結果、冠血流量が増加して、虚血が軽減される(心保護作用)。また、蓄積したブラジキニンは、気管支の無髄神経線維(C線維)を刺激するので、空咳の副作用が出る。
また、ACE阻害剤は、アンジオテンシンIIの産生抑制によりPAI-1の産生を抑制し、ブラジキニンの分解抑制によりt-PAの産生を増強し、抗血栓性にする。
急激な血圧変化の後、レニンが分泌されアンジオテンシンIIにより血圧が上昇するまで分単位の期間(2分後頃から始まって、15〜30分以後にピークがある)を要し、さらに、アルドステロンにより血圧が上昇するまで時間乃至日単位の期間(5時間後頃から始まって、4〜8日後にピークがある)を要する。
高血圧は、アンジオテンシンを介して、酸化ストレスを増加させ、血管内皮細胞のNO産生を障害する。
注1:痒み(かゆみ)は、肥満細胞(マスト細胞)やケラチノサイトから放出される、ヒスタミン、トリプテース(プロテアーゼの1種)、ロイコトリエンB4(LTB4)、サブスタンスP(SP)などによって、引き起こされる。
注2:AT1受容体は、主として、血管平滑筋、肝臓、腎皮質、副腎皮質、心臓などに存在し、血管収縮、血圧上昇、アルドステロン分泌、細胞増殖などに作用する。
AT2 受容体は、主として、脳(基底核)、子宮筋、卵巣、肺、腎臓、副腎髄質、心臓などに存在し、血管拡張、NO産生、細胞増殖抑制などに作用する。
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