抗酸化物質

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 体内で発生する活性酸素に電子を供給し、消去するのが、抗酸化物質
 還元剤としてのビタミンC(アスコルビン酸、水溶性)、ビタミンE(トコフェノール、脂溶性)が重要だが、その他、β-カロテン、尿酸、ユビキノ−ル(ビタミンQ)も重要。

 抗酸化物質の摂取が、健康に有益なためには、不飽和脂肪酸の摂取を控える必要があると思われる。
 (抗酸化物質は、活性酸素に電子を供給し、自身は、酸化されるので、高濃度では、却って、酸化を促進させる危険性が考えられる。しかし、正常な状態では、酸化を防止するように作用し、酸化を促進することはないと、考えられる。)

 野菜は、様々な抗酸化物質を含んでいるが、露地栽培の方が、紫外線を浴びて成長するので、含まれる抗酸化物質の量が多い。
 合成の殺虫剤や肥料をまったく使用しない有機農業で育てた、有機野菜は、抗酸化物質を多く含む。トウモロコシやマリオンベリー(キイチゴの1種)は、有機栽培された場合、合成の殺虫剤や肥料を使用する従来式農法で栽培された場合より、フェノール系抗酸化物質を、65%も多く含む。これは、作物が、農薬を使用しないで育てると、害虫や病気から自分を守るために、抗酸化物質を自力で、より多く作るためと考えられる。

 1.ビタミンC(ascorbic acid、水溶性)
 ビタミンCは、スーパーオキシドを消去する。
 ビタミンCは、活性酸素を消去して、酸化されたビタミンEを、再生させるという。

 血漿を用いた実験では、ビタミンEではなく、水溶性のビタミンCが、過酸化脂質(LOOH:cholesterylester hydroperoxide、phpsphatidylcholine hydroperoxide)の生成を抑制した。

 ビタミンC投与で、マウス(ハツカネズミ)の平均寿命は延長する。しかし、最大寿命は、変わらない。
 ヒトを含む霊長類(新世界猿)、モルモット、ゾウ、コウモリは、グロノラクトンオキシダーゼ遺伝子を欠損していて、体内でビタミンCを合成できない。そのため、食餌でビタミンCを摂取する必要がある。なお、原猿、他の哺乳類(イヌ、ネズミ、ウサギ)は、体内でビタミンCを合成できる。
 ビタミンCは、コラーゲンの合成にも不可欠であり、欠乏すると、壊血病になる。
 
 ビタミンCは、水溶性なので、体内に蓄積しない。
 ビタミンC欠乏食を摂ると、最初、速やかに血清中のビタミンC量が低下し、その後、白血球のビタミンC量がゆっくり低下する。

 ビタミンCは、微量の鉄イオンや銅イオンが存在すると、逆に、酸化を促進し、過酸化脂質を生成するという。
 ビタミンCを、むやみに多量に摂取するのも、健康に良くないと考えられる。

 ストレスの多い人や、喫煙者は、血漿中のビタミンC濃度が低下している。

 アスコルビン酸(還元型ビタミンC)は、強い還元性を持っており、酸化されると、モノデヒドロアスコルビン酸を経て、デヒドロアスコルビン酸(酸化型ビタミンC)に変化する(-OHが、=Oに変化する)。
 糖尿病などの高血糖状態では、細胞内の還元型アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンE、還元型グルタチオンの含量が、低下している。

 ビタミンC摂取は、血液中の酸化型CoQ-10量を減らす可能性がある。
 ビタミンC摂取は、血液中の過酸化脂質量を減少させないと思われる。 

 2.ビタミンE(α-tocophenol、脂溶性)
 ビタミンEは、ヒドロキシルラジカル一重項酸素を消去し、脂質の酸化を防止する。

 脂溶性のビタミンEは、脂質過酸化に対する、生体の最も重要な抗酸化物質と考えられている。
 ビタミンEは、連鎖的脂質過酸化反応を停止させる。
 ビタミンEは、強い抗酸化力を持ち、細胞膜を形成するリン脂質の酸化を防止している。
 ビタミンEが欠乏すると、臓器中の過酸化脂質の量が増加し、細胞膜が損傷を受ける。
 酸化されやすい脂質をたくさん摂取すると、血液中のビタミンE量は、減少する。 

 体重当りのカロリー消費量に対するビタミンE濃度を、いろいろな動物で調べると、ビタミンE濃度が高い程、寿命が長い。
 ビタミンEを線虫やショウジョウバエに投与すると、寿命が延長する。しかし、ヒトでは、ビタミンEで寿命は延長されないようだ。

 ビタミンEを服用すると、冠動脈疾患の発症が有意に低下される。

 ビタミンEは、LDL表層にとどまってしまい、LDLの酸化を生体内でおさえるのには十分でないとも考えられている。
 また、ビタミンEは、マクロファージのミエロペルオキシダーゼ(MPO)を阻害出来ず、MPOによる低比重リポ蛋白(LDL)の酸化を抑えられないという。

 ビタミンEは、高濃度だとLDLの酸化を促進するが、ビタミンCと一緒に摂取するとLDLの酸化を遅延させるという。
 ビタミンEの動脈硬化進展抑制作用を得るためには、ビタミンCを併用することが必要。

 ビタミンEは、食品群別平均摂取量から見ると、油脂類から約25%、魚介類から約18%、緑黄色野菜注1)から約14%、摂取されている。 
 油脂類は、ビタミンEを多く含んでいるが、酸化され易い多価不飽和脂肪酸も多く含んでいる。
 油脂類で、ビタミンEを摂取しようとすると、高トリグリセリド血症(高中性脂肪血症)になり、過酸化脂質が増加する危険がある。
 しかし、緑黄色野菜は、含まれる多価不飽和脂肪酸が少なく、ビタミンE/多価不飽和脂肪酸比が高い。そのため、緑黄色野菜は、ビタミンE供給源として、優れている

 ビタミンC合成不能ラットを用いた実験結果では、
 ・食餌中にビタミンEを添加しないと、血清中および肝臓の過酸化脂質量が増加する
 ・食餌中のビタミンC量は、血清および肝臓の過酸化脂質量に影響しない
 ・食餌中にビタミンEを添加しないと、アルコールを自由に飲ませた群は、飲料水を飲ませた群に比して、血清中の過酸化脂質が増加するが、肝臓の過酸化脂質量は変わらない
 ・食餌中のビタミンC量を増やしても、アルコールを自由に飲ませた群では、血清中の過酸化脂質量は増加する:ビタミンCによる、ビタミンE再生作用は、認められなかった
 ・アルコールを自由に飲ませた群では、肝臓のビタミンE量が低下する傾向にあった
という。
 飲酒時には、ビタミンEを十分に摂取して、過酸化脂質の生成を予防することが必要と考えられる。

 高齢者の末梢単核球は、若い人の単核球より、PGE2の産生が多い。ビタミンE投与により、PGE2の産生は、減少する。

 ビタミンEは、生体膜(細胞膜など)を活性酸素から保護し、流動性を守っている。
 
 ビタミンEは、抗酸化作用を介して生体膜を安定化させる作用以外に、ビタミンEの側鎖(フィチル側鎖)の部分が、細胞膜のリン脂質(リノール酸、アラキドン酸)の二重結合に入り込み、膜組織を安定にさせる。
 ビタミンEは、生体膜安定化作用があり、赤血球や血小板の膜を安定化させる。

 免疫担当細胞は、細胞膜に、多価不飽和脂肪酸を、通常の細胞より、多く含んでいる。ビタミンEが不足すると、免疫担当細胞の細胞膜で、過酸化脂質が生じ、プロスタグランジンE2PGE2)の生成が増加し、T細胞の活性化や、サイトカインの産生が、抑制される。

 3.カロテノイド
 カロテノイド(カロチノイド)も、ヒドロキシルラジカル一重項酸素を消去する。

緑黄色野菜中のカロテノイド含有量(μg/100g)
 野菜  α-カロテン  β-カロテン  リコピン  ルテイン
 ニンジン   3600   7900      −    260
 ホウレンソウ      −   4100      −  10200 
 冬カボチャ     12    820      −     38
 夏カボチャ     12    420      −   1200  
 生食用トマト      −    520   3100    100
 ブロッコリー      −    700      −   1900
 コーン     50     51      −    780
 グリンピース    630     44      −    740


 1).α-カロテン
 α-カロテンは、ニンジン、カボチャ、コーンなどに多く含まれ、肺癌、皮膚癌、肝臓癌の発生の抑制効果がある。
 なお、ニンジンには、ビタミンCを分解する酵素も含まれている。

 2).β-カロテン(脂溶性)
 β-カロテンは、プロビタミンA活性があり、体内でビタミンAに変わる。
 ビタミンAは、一重項酸素のみを消去する。
 β-カロテンは、従来、β-カロチンとも呼ばれた。
 β-カロテンは、リン脂質の代謝を抑制する。
 β-カロテンは、マクロファージ、T細胞、NK細胞を活性化する。
 β-カロテンは、ニンジン、ホウレンソウ、ブロッコリーなどに多く含まれる。
 β-カロテンには、肺癌の発生の抑制効果は、ない。

 3).リコピン
 リコピンには、肝臓癌、膀胱癌、前立腺癌の発生を予防する効果がある。

 4).ルテイン
 ルテインは、ホウレンソウ、夏カボチャ、ブロッコリーなどに多く含まれ、肺癌、乳癌、子宮癌、大腸癌の発生を抑制する効果がある。
 ルテインは、体内で合成出来ない。
 ルテインは、黄斑部に含まれていて、光(特に、青色光)を吸収し、光による脂質の酸化を予防し、黄斑部変性症を、予防するという。


 4.尿酸(水溶性)
 尿酸は、ヒドロキシルラジカルを消去する。
 尿酸は、体内(関節周囲や耳介)で結晶が沈着すると、痛風の原因になる。痛風では、血液中の尿酸値が、増加するが、排泄低下型と、産生過剰型とがある。
 尿酸の産生は、肝臓(550〜600mg/日)、食餌由来(100〜150mg/日)と、体内で合成される方が、約7倍多い。
 尿酸の排泄は、尿中(550mg/日)と、便中(150mg/日)とされる。
 このように、尿酸は、食餌に含まれるプリン体より、細胞が壊れる際に、核から放出されるプリン体の方が、原料になる。そのため、プリン体を多く含む食餌を食べても、短時間的には、尿酸値は、変動しない。
 尿酸は、アルカリに溶けやすいので、尿酸値を低下させたり、痛風の発作を予防したり、尿酸結石を予防するには、野菜を多く食べて、尿をアルカリ性の方向に、持って行くのが、良いと思われる

 5.ユビキノ−ル(脂溶性)
 ユビキノールは、補酵素Q(ユビキノンCoQ)の還元型。
 ユビキノールは、別名、還元型ユビキノン、コエンザイムQ(CoQ)、CoQ10(補酵素Q10)、ビタミンQなどとも、呼ばれている。
 ユビキノール-10(CoQH2-10)は、血漿を用いた実験では、ビタミンCより長い時間、過酸化脂質(LOOH:cholesterylester hydroperoxide、phpsphatidylcholine hydroperoxide)の生成を抑制した。
 糖尿病患者では、血液中の酸化型ユビキノン-10(CoQ-10)は、朝食後から増加する。このような酸化型ユビキノン-10の増加は、健常者では、認められない。

 ユビキノール(補酵素Q)は、ミトコンドリアの内膜に存在し、電子(e-)を伝達して、水素イオン(H+)の膜間スペース(膜間腔)への輸送に関与している。伝達された電子が、酸素(O2)を還元する際、一電子還元すると、スーパーオキシド(O2-)が生成されてしまう。

 ユビキノールは、他の物質に電子を供給して、還元させる作用があり、最近は、抗酸化物質としての生理作用が、注目されている。
 ビタミンEに構造が似ている。葉緑体に含まれるPlastoquinoneにも、構造が似ている。

 ユビキノールは、体内でも生成されるが、年齢とともに生成量は減少するとされる。

 薬剤としては、ユビデカレノン(Ubidecarenone:医薬品名は「ノイキノン」)が、心筋細胞のATP産生の増加を期待して、心不全の治療に、従来から用いられて来た。
 野菜、大豆、背の青い魚、鶏肉、牛豚のレバーなどの食品に含まれるという。
 血液中での抗酸化作用は、ビタミンCや、ビタミンEより、長いとされる。
 
 6.葉酸
 葉酸が欠乏すると、ホモシステインが増加し、血管内で活性酸素を産生させ、
動脈硬化を促進させる。
 ホモシステインは、NOの産生を抑制したり、血小板凝集を促進し、
血栓形成を促進させる。
 ホモシステインは、食物にも含まれるアミノ酸で、必須アミノ酸のメチオニンや、S-アデノシル1-メチオニン(SAM)を生成するメチル回路を活性化するために、不可欠。
 ホモシステインには、脂質を酸化させる作用がある。
 ホモシステインは、含硫アミノ酸で、血管内皮細胞など、内皮細胞に対して、毒性を示し、その結果、血栓症や、脳機能障害を来たす危険性が指摘されている。
 血中のホモシステイン濃度は、加齢と共に上昇する。

 葉酸や、ビタミンB6ビタミンB12は、血中ホモシステインを減少させる。運動も、ホモシステインを減少させる。
 葉酸の1日必要摂取量は、成人200μg、妊婦400μgと言われる。日本人の15%の人は、遺伝子がTT型だが、TT型の人は、400μg摂取しないと、葉酸の血中濃度が上昇しない。
 葉酸欠乏は、口唇・口蓋裂、神経管閉鎖障害(二分脊椎症)などの胎児奇形の原因にもなる。
 葉酸は、口唇・口蓋裂の予防に不可欠だが、葉酸の摂取のみで、完全には、予防出来ない。

 葉酸は、緑黄色野菜、枝豆、緑茶などに含まれている。
 葉酸は、100gあたり、ほうれん草210μg、焼き海苔1900μg、せん茶(浸出液)16μg、ブロッコリー210μg、キャベツ78μg、鶏卵43μg、含有されている。
 葉酸を効率良く摂取するには、サプリメントを利用するのも良い。なお、葉酸を摂取すると、ビタミンB6は、極端に低下してしまうと言う。そのため、葉酸をサプリメントで摂取する時には、ビタミンBとの合剤で摂取するのが、良いと言う。

 7.グルタチオンとアセチルシステイン
 グルタチオン(glutathione)は、N-アセチルシステイン(N-acetylcysteine:NAC)から合成される。
 N-acetylcysteineを摂取して、細胞内のグルタチオン濃度を高めると、ミトコンドリアや細胞が、活性酸素の障害作用から、防御される
 N-acetylcysteineは、それ自身、抗酸化作用(antioxidant properties)がある。
 機序は不明だが、パントテン酸(pantothenic acid)を投与して、細胞内のCoA量を増加させると、グルタチオン濃度が高まる。
 カレー粉の成分クルクミンも、細胞内グルタチオン濃度を高める。

 8.抗酸化物質を多く含む食品
 抗酸化作用のある食品成分は、すっぱい(ビタミンC)とか、渋い(カテキン)などと言った味の嗜好から敬遠され、現代の食生活では、摂取が少ない可能性もある。
 抗酸化物質を多く含む食品として、下記の食品などが、勧められる。

 ・ホウレンソウなどの緑黄色野菜:トマトはリコピンを含み、中医学では「血液を清める」と言われる。

 ・ニンニク:ニンニクに含まれるアリシン(注2)には、抗酸化作用がある。MATS(メチルアリルトリスルフィド)は、TXA2の合成を抑制し、血小板凝集を抑制する。ニンニクは、五葷(ごくん)の1つであり、性欲を亢進させるので、修行者には、勧められない。  

 ・ゴマ:セサミンなどのリグナンや、ビタミンEを含む。セサミンは、ペルオキシソームに作用して、脂質の代謝を促進するという。セサミノール配糖体は、抗酸化作用があるが、腸内細菌でセサミノールに変えられ、動脈硬化を予防する。
 ゴマには、ジホモ-γ-リノール酸(DGLA)を、アラキドン酸(AA)に変換することを、阻害する物質が含まれていて、抗アレルギー作用もあると言う。
 ゴマには、便秘解消効果もある。

 ・緑茶:カテキンを含む。カテキンは、水溶性かつ脂溶性に作用する。緑茶のカテキンは、渋味成分なので、徳用茶を高温(90度以上)で煎じた方が、多く抽出される。カテキンは、煎茶(特に、2番茶)に多く含まれる。葉酸も含まれるが、抽出には60度程度が良い。カテキンには、血小板の凝集を抑制する作用、肝細胞を保護する作用もある。カテキンには、抗酸化作用の他、抗菌作用、アポトーシス誘導作用などもあるという。

 ・大豆:イソフラボンを含む。イソフラボンは、辛み成分の一つ。イソフラボンを摂取するには、納豆(注3)などの発酵食品の方が良い。納豆は、40g1パックで、イソフラボン50mgを含有している。イソフラボン50mgを摂取するには、豆腐だと100g(1/3丁)、生揚げだと280g(2/3枚)、黄な粉20g(大さじ2杯)、味噌125g(味噌汁10杯)が、必要。豆乳は、コップ約1杯弱に、40mgのイソフラボンを含んでいて、摂取すると、血中セロトニンの分泌量を増加させ、頭痛や、不安感を軽減する。イソフラボンは、弱いが、女性ホルモンに似た作用を持ち、閉経後の乳癌の発症率を減少させる。イソフラボンは、摂取後、2時間で、血中濃度がピークになる。イソフラボンは、糖と結合していて吸収が悪いが、腸内の善玉菌は、糖を分解して、イソフラボンの吸収を増加させてくれる。イソフラボン大豆は、イソフラボン以外にも、抗酸化作用のある、サポニンも含んでいる。

 ・ナス:抗酸化作用のある、クロロゲン酸を、表皮に含む。クロロゲン酸は、渋味成分であり、コーヒーにも含まれている。

 ・カレー粉:ターメリック(注4)に含まれる黄色の色素の成分は、クルクミンで、抗酸化作用がある。クルクミンは、腸で吸収される時、より抗酸化作用が強い、無色のテトラヒドロクルクミンになる。クルクミンは、細胞内のグルタチオン濃度を高める作用もあるとされる。

 ・ミカン:キサントフィルを含む。

 9.抗酸化物質は、アレルギー疾患を改善する
 リンパ球には、T細胞と、抗体(免疫グロブリン)を産生するB細胞とがある。
 T細胞には、さらに、単球・マクロファージから抗原を提示され、免疫反応を調節する、ヘルパーT細胞(CD4抗原陽性)と、ウイルス感染細胞などを傷害する、キラーT細胞(CD8抗原陽性)がある。
 ヘルパーT細胞には、Th1細胞とTh2細胞とがある。
 Th1細胞(T helper 1):マクロファージが、抗原をT細胞に提示する際に分泌するIL-12は、ナイーブヘルパーT細胞を、Th1細胞に分化させる。Th1細胞は、IL-2、
IFN-γ(IgE抗体の産生を抑制する)、TNF-αなどを産生し、T細胞や、単球など貪食細胞の活性を高め、細胞性免疫(ツベルクリン反応など)に関与する。
 Th2細胞: マクロファージが、抗原をT細胞に提示する際に分泌するPGE2は、ナイーブヘルパーT細胞を、Th2細胞(T helper 2 cell)細胞に分化させる。Th2細胞は、IL-3、
IL-4(IgE抗体の産生を増加させる。肥満細胞からも産生される)、IL-5、IL-6、IL-10、IL-13を産生し、液性免疫に関与する。IL-10は、Th1細胞からのIFN-γの産生、IL-12の産生を抑制する。
 Th1細胞による免疫応答では、細胞性免疫が働いて、リンパ級やマクロファージなど単核細胞中心の炎症反応が起る。真菌のクリプトコッカスに対する免疫応答では、Th1細胞が優位に働くと、強固な肉芽腫が形成され、感染が局所に封じ込められる。しかし、Th2細胞が優位に働くと、炎症性細胞浸潤が極めて乏しい(液性免疫では、クリプトコッカスなどの細胞内寄生菌を、殺せない)。そして、肺胞腔にクリプトコッカスが充満して、感染が、容易に血行性に広がって、髄膜炎などを発症する。
 Th1細胞より、Th2細胞が優位に働いている状態では、アレルギー体質に陥りやすいと考えられている(注5)。
 生体の抗酸化能が低下すると、Th1細胞より、Th2細胞が優位に働くと考えられる。
 ビタミンC(90mg/日)、ビタミンE(20mg/日)、β-カロテン(0.75mg/日)などの抗酸化物質は、Th2細胞優位の状態を改善すると考えられる。
 アトピー性皮膚炎の症状改善のためには、脂肪(植物性油脂)、砂糖ショ糖)の摂取を制限(注6)し、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化物質を摂取することが、推奨される。

 10.抗酸化物質は、解毒を促進する
 毒性物質(発癌物質)である、魚の焦げ(ヘテロサイクリックアミン)、カビ類(アフラトキシン)、排ガス(ベンゾ[a]ピレン)は、体内に入ると、肝臓で、P450により、活性体に変化する。
 解毒酵素(グルタチオン・S・トランスフェラーゼ、キノン還元酵素など)は、毒性物質の活性体を無毒化し、排出する。
 抗酸化物質(テトラヒドロクルクミンイソチオシアネートなど)は、解毒酵素を誘導し、解毒を促進する。

 11.ハプトグロビン
 動物実験では、抗酸化作用のある、ビタミンCとビタミンEは、LDLコレステロールの酸化を抑制し、動脈硬化の進行を抑制する。しかし、人間に、抗酸化ビタミンのビタミンCとビタミンEのサプリメントを投与した場合、動脈硬化の進行が抑制される人と、そうでないない人がいる。このような、効果の違いは、ハプトグロビン遺伝子型によるという。
 ハプトグロビン遺伝子には、1型と2型があり、組み合わせから、1型のホモ型(1/1型)、2のホモ型(2/2型)と、1型と2型とのヘテロ型(1/2型)の、3通りが存在する。
 抗酸化ビタミンの摂取は、1/1型の人には、動脈硬化の進行の抑制に、効果がある。しかし、抗酸化ビタミンの摂取は、1/2型と2/2型の人には、動脈硬化の進行の抑制には、効果がない。特に、糖尿病を罹患している、2/2型の人では、抗酸化ビタミンの摂取は、動脈硬化の進行を、却って、促進させるという。これは、2型のハプトグロビンは、血中の鉄分が多く、抗酸化ビタミンとして、ビタミンCを摂取すると、酸化第二鉄(Fe3+)が還元され、酸化第一鉄(Fe2+)が生成され、LDLコレステロールを酸化する力が出来る。

 注1:緑黄色野菜とは、可食部100g当たり、カロテノイドが、600μg以上、含まれる野菜。

 注2
アリシンは、硫化アリルの1種で、ニンニク、タマネギ、ネギ、ニラなどに含まれる。生のニンニクには、アリインとして含まれていて、切ったりすると、酵素の働きで、アリシンに変わる。ビタミンB1は、アリシンと結合すると、より吸収や、血中持続性に優れるアリチアミンになる。アリシンには、殺菌作用(細菌、真菌)がある。
 アリシンは、100度以下で処理すると、無臭で脂溶性のアホエンに変化する。

 注3:納豆は、ワ−ファリン(Warfarin)という薬を、医療機関で処方されている方は、主治医と相談して摂取して下さい。

 注4:ターメリック(turmeric)は、熱帯アジア原産の植物で、カレー粉が黄色なのは、ターメリックの色素が、黄色いため。ターメリックに含まれる黄色の色素の成分は、クルクミンで、抗酸化作用がある。
 ターメリックの和名は、「秋ウコン」。ウコンは、ショウガ科の多年草で、健胃薬、利胆薬、止血薬として、用いられる。ウコンは、漢字では、鬱金、宇金などと書かれる。
 ウコンは、カレー粉の成分だが、カレー料理から、体内に入る量は、わずかなので、健康被害をもたらさないと考えられている。しかし、ウコンを、健康食品として、毎日、摂取した場合、ウコン自体、または、不純物の蓄積により、肝障害を来すことが、想定される。実際に、ウコンを健康食品として摂取して、肝障害を来した報告がある。ある報告では、262±36日間摂取して、肝障害の為に、血清ASTALT、ALPが上昇し、回復には、62±88日間を要したという。ウコンには、牛レバーに相当する鉄分が含まれており、(長期に摂取すると、)体内の肝臓に鉄が蓄積すると、C型肝炎では、血清トランスアミナーゼ(AST、ALT)が、上昇するという。従って、ウコンは、肝臓が悪い人が、健康の為に、摂取するのは、要注意と考えられている。

 注5菌体成分(Pathogen-associated molecular pattern:PAMP)は、樹状細胞に作用し、ナイーブT細胞のTh1細胞への分化を促進し、Th1細胞優位の状態にし、アレルギー体質を改善する。納豆、ヨーグルト、などの食材を摂取すると、アレルギー体質が改善される(Hygiene hypothesis)。
 梔子柏皮湯(ししはくひとう)は、山梔子(さんしし:クチナシの実)、黄柏(おうばく:ミカン科キハダの皮)を含む漢方薬だが、アトピー性患者に内服させると、血液中のTh1細胞が増加することが確認された。

 注6砂糖の過剰摂取は、マクロファージや好中球の機能を低下させると言う。


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