一酸化窒素(NO)

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 NO(Nitric oxide)は、血管内皮細胞から産生され、血管内皮機能を調節している。
 血管内皮細胞から産生されるNOには、血管拡張作用(降圧作用)、血小板凝集抑制作用(抗動脈硬化作用)、単球などの白血球が血管内皮細胞に接着したり内皮細胞下組織に浸潤するのを防ぐ作用、血管平滑筋細胞の増殖を抑制する作用、などがある。
 NOは、血管の内皮由来弛緩因子(EDRF:endothelium-derived relaxing factor)と呼ばれていた。NOは、太い血管に作用する。

 動脈硬化を起こした血管では、酸化LDLなどにより血管内皮機能が低下し、NOの産生が低下して、血管弛緩の悪化、血小板凝集の亢進、血管平滑筋細胞の増殖の亢進などが起こる。
 NOは、従来より、喫煙や大気汚染の有毒ガスとして、悪名が高かった。
 NOは、“諸刃の剣”であり、NO産生が低下し過ぎても、増加し過ぎても、酸化ストレスは、過剰になる。
  
 NOも、不対電子を有しており、フリーラジカル
 NOの作用発現時間は、半減期が3〜6秒程度と、短い。
 NOは、近傍細胞(paracrine)や産生細胞自身(autocrine)に作用する。

 血管内皮細胞やマクロファージでは、NOとスーパーオキシド(O2-が同時に発生する。
 NOは、スーパーオキシドを捕捉し、スーパーオキシドを消去する。しかし、この際に、ペルオキシナイトライト(peroxynitrite:ONOO-)という、より強力な酸化力や毒性を持つラジカルが生成される(NO+O2-→ONOO-)。
 この、NOとスーパーオキシドとの反応速度は、SODとスーパーオキシドとの反応速度より、3倍も速い。

 このように、NOは、スーパーオキシドが産生されると、消去されてしまう。
 しかし、NOは、ミトコンドリアの電子伝達系を障害して、スーパーオキシドの産生を増加させる。
 他方で、NOは、スーパーオキシドを消去する細胞外SODを増加させて、スーパーオキシドによるNO自身の消去を抑制している(フィードフォワード機構)。
 
 NOは、グアニル酸シクラーゼ(guanylate cyclase)を活性化して、cyclic GMP(cGMP)レベルを上昇させる(注1)。

 NOには、下記のような作用があり、抗動脈硬化作用を示すとされる。
 1.血管平滑筋を弛緩させる。
 2.血小板凝集を抑制する。
 3.好中球などによる、スーパーオキシド産生を抑制する。
 4.細胞接着因子(VCAM-1セレクチン)の発現を抑制する。
 5.サイトカイン(IL-8など)の分泌を抑制する。
 6.LDLの酸化を抑制する。
 7.酸化LDLりゾホスファチジルコリン(LPC)が、マクロファージを血管内皮細胞に接着させる作用を抑制する。

 NOは、プロスタサイクリン(PGI2)合成酵素を活性化し、PGI2の産生を高める。
 PGI2は、血管内皮細胞に直接働いて、細胞内cAMP濃度を上昇させ、NO産生を高める。NOは、PGI2の産生を相乗的に高める(ポジティブフィードバック)。

 NOは、PGE2、LTB4、PAF、IL-6の合成を、抑制する。

 NO産生の基質となるL-アルギニンを強化した食餌を与えられたウサギは、血管内皮細胞機能が改善したという。

 インスリンは、血管内皮細胞から、NOを産生させる。
 糖尿病(2型)、肥満、本態性高血圧になると、血管内皮細胞の機能が障害されて、インスリン抵抗性状態になると、インスリンによるNO産生・放出が低下する。

 NOは、L-アルギニンを基質として、NO合成酵素(NOS)により生成される。
 NOSには、3種類のアイソフォームがある:NOS-1とNOS-3は、構成的(constitutive)に発現されているが、NOS-2は、誘導型(inducible)である(iNOS)。

 1).NOS-1
 NOS-1は、神経型で、小脳や嗅球などのニューロンに存在するのみならず、骨格筋、心筋、膵β細胞、下垂体、腎マクラデンサなどにも存在する。NOは、中枢神経系では、神経伝達物質として作用する。NOS遺伝子をノックアウトしたマウスは、攻撃性が高まる。

 2).NOS-2
 NOS-2は、マクロファージに誘導される。マクロファージ以外にも、肝実質細胞、血管平滑筋細胞、中枢神経系グリア細胞などにも存在する。細胞が、サイトカインや細菌壁リポ多糖類(LPS)などに刺激されると、酵素が誘導され、NOを産生する。
 NOS-2から産生されるNOは、アポトーシスの経路を抑制する。
 TNF-αは、NOS-2を誘導する。
 NOS-2は、COXとクロストークする。

 3).NOS-3
 NOS-3は、主に血管内皮細胞に存在する。血管内皮細胞に、長期間、ずり応力が働くと、NOSレベルが増大し、NO産生が高まり、血管が拡張したり、白血球の接着を抑制するという。また、ブラジキニン、アセチルコリンなども、NOS-3を活性化させるという。

 TNF-α、IL-1βは、産生を亢進させる。

 セロトニンは、血管内皮細胞に5-HT受容体を介して結合し、NOを産生させ、血管を拡張させる。

 NOの血管拡張作用の機序は、NO→グアニレートシクラーゼが活性化される→cGMPの上昇→細胞内から細胞外にCa2+が流出→血管平滑筋が弛緩、とされる。

 ACE阻害剤(降圧剤)は、カリクレイン・キニン系でキニナーゼII(=ACE)を抑制し、ブラジキニンの分解を抑制し、蓄積したブラジキニンは、NO、PGI2などの産生を増加させる。

 注1:NOは、血小板内のcGMP(GTPから、guanylate cyclaseにより合成される)を増加させて、血小板凝集を抑制する。PGI2は、血小板内のcAMP(ATPから、adenylate cyclaseにより合成される)を増加させて、血小板凝集を抑制する。

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