BCAA
 
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 運動時に、BCAAからは、アンモニア(NH3)を処理するのに必要なグルタミン酸が、生成される

 1.BCAAは、骨格筋で代謝される
 BCAAは、Branched Chain Amino Acid(分岐鎖アミノ酸)の略で、ロイシン、イソロイシン、バリンの3種類のアミノ酸がある。
  ロイシン、イソロイシン、バリンの3種類のアミノ酸は、BCAA(Branched Chain Amino Acid:分岐鎖アミノ酸、分枝アミノ酸)と総称される。
 BCAAは、血漿中の遊離必須アミノ酸の約4割を占めている。
 BCAAは、肝臓ではほとんど代謝されず、主として、骨格筋と脳で代謝される。
 BCAAは、骨格筋の蛋白質合成を促進し、蛋白質の分解を抑制する。
 BCAAは、運動時の骨格筋の維持や増量に、重要な役割をすると言われる。

 2.AAAは、肝臓で代謝される
 インスリンは、BCAAの骨格筋への取り込みを促進するが、脳内の神経伝達物質の前駆体になる、芳香族アミノ酸(aromatic amino acids:AAA)の取り込みには、あまり影響しない。 
 AAAには、神経伝達物質の前駆体である、リプトファン(Trp:注1)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)がある。

 骨格筋で代謝されるBCAAと異なり、AAAは、アルブミンと結合し代謝的に安定しているトリプトファン以外は、肝臓で代謝される。

 BCAAとTrpとは、脳への取り込み(脳血液関門の通過)が、競合する
 ラットに、空腹状態で、無蛋白食を食べさせると、インスリンが分泌され、血漿中のBCAAが骨格筋に取り込まれて減少し、Trpが脳へ取り込まれ易くなり、脳内Trp濃度が上昇し、Trpから合成されるセロトニン濃度も上昇する。

 糖尿病患者が、うつ病になるリスクが高い(2倍)のは、インスリンによるBCAAの骨格筋へ取り込みが減少し、Trpが脳へ取り込まれにくくなるのが、機序かも知れない(運動は、骨格筋でBCAAを消費させ、血漿中のBCAA濃度を低下させることで、脳内の神経伝達物質を増加させると思われる)。

 また、肝硬変患者では、肝臓でのアミノ酸代謝が減少し、骨格筋でのアミノ酸代謝が亢進し、血漿中のBCAA濃度が減少し、脳内のPhe濃度やTyr濃度が、増加するという。

 3.BCAAは、アンモニア処理に必要なグルタミンを供給する
 BCAAのバリンは、BCAT(branched chain amino acid aminotransferase)という酵素により、α-ケトグルタル酸にアミノ基を転移してグルタミン酸注2)を生成し、自身は、α-keto-isovalerate(分岐鎖ケト酸:BCKA)になる。
 BCAT:BCAA+α-ケトグルタル酸→BCKA+グルタミン酸
 BCKAからは、ピルビン酸が生成される。
 BCATは、ビタミンB6ピリドキサールリン酸注3)が、補酵素として必要。α-keto-isovalerateは、BCKDH(branched chain α-keto acid dehydrogenase)という酵素により、異化されて、その際、NADH2+が生成される。BCKDHは、運動時に活性化される。
 バリンからは、最終的には、スクシニル-CoA(succinyl-CoA)が生成される。
 BCAAのロイシンやイソロイシンの異化も、最初の段階は、バリンと同様に、BCATやBCKDHに触媒され、グルタミン酸が生成される(注4)。

 グルタミン酸(Glu)は、脳、肝臓、腎臓で、アンモニア(NH3を処理するのに、大切なアミノ酸。
 グルタミン酸は、グルタミン合成酵素(glutamine synthetase)により、アンモニアと結合し、グルタミン(Gln)が生成される。
 glutamine synthetase:グルタミン酸+アンモニア→グルタミン

 グルタミン酸は、ALTGPT)により、ピルビン酸に、アミノ基を転移すると、糖原性アミノ酸である、アラニンが生成される。
 ALT(GPT):グルタミン酸+ピルビン酸→α-ケトグルタル酸+アラニン

 アラニンは、肝臓で、糖新生に利用され、グルコースが生成され、血液中に供給される。

 このように、BCAAからは、アンモニア(NH3)を処理するのに必要な、グルタミン酸が、生成される
 脳や骨格筋で、アンモニア(NH3は、グルタミン合成酵素により、グルタミン酸(Glu)と結合して、グルタミン(Gln)が生成される(注5)。
 BCAAを、肝性脳症の患者に、点滴や経口で投与すると、血中アンモニア濃度が低下する。

 最近は、BCAAを含有するアミノ酸飲料も市販されているが、BCAAが減少している人には、アンモニアの処理を高めて、脳細胞の疲労の回復を早める効果が期待出来るが、うつ病(鬱病)の患者には、セロトニン産生を抑制する危険はないのか、疑問に思われる。

 注1:トリプトファンは、必須アミノ酸のひとつ。
 トリプトファンは、穀類(精白米、小麦粉)、大豆、肉(豚肉など)、魚(アジなど)、鶏卵、牛乳、野菜(ほうれん草など)、多くの食餌に含まれている。
 肉類は、セロトニンの原料となるトリプトファンを多く含むので、うつ病の人は、肉類を食べると良いと言う人もいるが、トリプトファンは、大豆など、多くの食餌からも、十分に摂取可能と思われる。
 トリプトファンは、肉類、大豆以外にも、ゴマ、落花生、乳製品、卵黄、赤みの魚などに多く含まれているので、これらの食品は、うつ病に有用かもしれない。

 注2グルタミン酸は、ALTGPT)により、ピルビン酸と反応して、アラニンに変換される。
 グルタミン酸ナトリウム (Sodium Glutamate) は、昆布、シイタケ、鰹節などに含まれ、「だし(出し汁)」の「うま味(旨み)」として用いられて来た。
 ヒトの母乳は、グルタミン酸を多く含んでいる。
 なお、BCAAは、運動時に、骨格筋で異化され、グルタミン酸が生成される。このグルタミン酸は、解糖で生じるピルビン酸に、ALTGPT)により、アミノ基を転移させ、アラニンを生成させ、肝臓での糖新生を促進させると考えられる。

 注3:活性型ビタミンB6は、West症候群(点頭てんかん)などの、難治性脳神経疾患の治療に、用いられている。

 注4:ロイシンは、最終的には、acetoacetateとacetyl-CoAに異化される。
 イソロイシンは、acetyl-CoAとpropionyl-CoAに分解され、後者は、succinyl-CoAにまで異化される。

 注5グルタミン酸(glutamic acid:Glu、塩は、glutamate)グルタミン(glutamine:Gln)の変換に関して。
 1).グルタミン酸は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(グルタミン酸脱水素酵素:glutamate dehydrogenase:GDH、または、GLDH)によって、アンモニアとα-ケトグルタル酸(2-オキソグルタル酸)から生成される。
 アンモニア(NH4+)+α-ケトグルタル酸⇔L-グルタミン酸(Glu)
 この反応は可逆的だが、平衡定数は、グルタミン酸の生成側に偏っている。GDHにより、アミノ基(窒素)を集めたグルタミン酸から、尿素回路にアンモニアが供給されるだけでなく、逆の反応で、α-ケトグルタル酸とアンモニアから、有機アミノ酸(グルタミン酸)が生成される。植物や最近では、GDHにより、グルコースブドウ糖)とアンモニアから、多量のアミノ酸の合成が可能。
 GDHの大部分は、肝臓のミトコンドリアマトリックスに存在する。
 この反応では、NADH2+が消費される。

 2).グルタミン合成酵素(glutamine synthetase:GS)は、グルタミン酸とアンモニアを結合させ、グルタミン(Gln)を生成する。
 L-グルタミン酸(Glu)+アンモニア(NH3)→L-グルタミン(Gln)
 この反応には、ATP、Mg2+が必要。
 この反応は、特に、脳でのアンモニアの解毒や、腎臓でのアンモニア排泄に、重要。

 3).グルタミンは、グルタミン酸合成酵素(glutamate synthase)によって、α-ケトグルタル酸と反応し、2分子のグルタミン酸に変換される。
 L-グルタミン(Gln)+α-ケトグルタル酸→2L-グルタミン酸(Glu)
  この反応も、NADH2+が、消費される。
 グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)は、糖原性アミノ酸であり、ミトコンドリア内で、m-AST(m-GOT)により、α-ケトグルタル酸(2-オキソグルタル酸)になり、TCA回路クエン酸回路)に入る。
 トリプトファン(Trp)、アラニン(Ala)、AMPなどは、グルタミン合成を抑制する。
 アラニン、AMPは、glutamine synthetaseの活性を抑制する(α-ケトグルタル酸を節約して、TAC回路を機能させる)。
 なお、アンモニウムイオン(NH4+)は、脳血液関門を通過しにくいが、アンモニア(NH3)は、脳神経細胞内に移行しやすい。

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