ルイス式血液型
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ルイス式血液型(Lewis式血液型)や、ABO式血液型の、血液型抗原は、タイプ1の基幹領域であるGalβ1→3GlcNAcに、酵素(Le酵素、Se酵素、ST酵素、A酵素、B酵素)により、糖(Gal、GlcNAc、GalNAc、Fuc、NeuAc)を結合して、合成される、糖鎖抗原。
1.ルイス式血液型抗原の合成
a).Lewis A抗原(Lea)
ルイス式血液型のLewis A抗原(Lea)は、Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAc-Rであり、フコース(Fuc)が、一個結合している。
Lewis A抗原(Lea)は、基幹領域(基幹構造)のGalβ1→3GlcNAc(注1)のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)に、Le酵素(ルイス抗原遺伝子酵素:FUT3酵素)により、フコース(Fuc)を、一個、1→4結合させ、合成される(注2)。
b).Lewis B抗原(Leb)
ルイス式血液型のLewis B抗原(Leb)は、Fucα1,2Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAc-Rであり、フコース(Fuc)が2個結合している。
Lewis B抗原(Leb)の合成には、基幹領域のGalβ1→3GlcNAcのGalに、まず、Se酵素(分泌型遺伝子酵素:FUT2酵素)により、フコース(Fuc)を、1→2結合させ、H抗原(O型抗原)が形成される(注1)。次いで、基幹領域のGalβ1→3GlcNAcのGlcNAcに、Le酵素により、もうひとつフコース(Fuc)を、1→4結合させ、合成される。
上皮細胞で合成された、Lewis A抗原やLewis B抗原は、糖脂質として分泌され、赤血球に吸着する。
ルイス式血液型の赤血球の表現型は、4型に分類される:Le(a+b-)、Le(a-b+)、Le(a+b+)、Le(a-b-)。
日本人は、Le(a+b+)の人が多い:Le(a+b+) の人は、活性型のLe酵素と、活性がきわめて弱くなったSe酵素を持つ。
Le (a-b+) の人は、 Se酵素、Le酵素ともに活性型であり、分泌型個体。
Le(a+b-)の人は、Se酵素を完全欠損していて、Lewis B抗原(Leb)を合成出来ない(Le酵素は、有している)。
Le(a-b-)の人は、Le酵素を欠損している。
2.ABO式血液型抗原の合成
基幹領域のGalβ1→3GlcNAcのGalに、Lewis B抗原(Leb)合成に必要な、Se酵素により、フコース(Fuc)を1→2結合させると、ABO式血液型(注2)の、H抗原(O型抗原)が形成される。
H抗原(O型抗原)のGalに、A酵素(A型転移酵素:α-N-acetylgalactosaminyltransferase)により、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)が、1→3結合すると、人間のABO式血液型の、A型抗原が形成される。
また、H抗原(O型抗原)のGalに、B酵素(B型転移酵素:galactosyltransferase)により、もう1つ、ガラクトース(Gal)が、結合すると、B型抗原が形成される。
3.シアリルLea抗原
シアリルLea抗原(シアリルルイスa抗原:sLea:CA19-9)の合成には、タイプ1の基幹領域のGalβ1→3GlcNAcのGalに、先ず、ST酵素(シアル酸転移酵素)により、シアル酸(NeuAc)を2→3結合させ、シアリルLec抗原(sLec:シアリルルイスc抗原:DUPAN-2)が形成される。
次いで、シアリルLec抗原(sLec)のGlcNAcに、Le酵素(ルイス抗原遺伝子酵素)により、フコース(Fuc)を1→4結合させて、シアリルLea抗原(CA19-9)が、合成される。
シアリルLea抗原は、結果的に、ルイス式血液型抗原のLewis A抗原(Lea)に、シアル酸(NeuAc)が、2→3結合した構造をしている。
シアリルLea糖鎖抗原(sLea:シアリルルイスa抗原)は、基幹領域がGalβ1→3GlcNAcで、ガラクトース(Gal)と、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)との結合が、1→3結合(Galβ1→3GlcNAc)をしている、一型糖鎖。
それに比して、シアリルLex鎖抗原(sLex:シアリルルイスx抗原)は、ガラクトース(Gal)と、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)との結合が、1→4結合(Galβ1→4GlcNAc)をしている、ニ型糖鎖(注3)。
4.Le(a+b-)とLe(a-b-)
ルイス式血液型は、Se酵素を持っていない人は、Le(a+b-)になり、Le酵素を持っていない人は、Le(a-b-)になる。
a).Le(a+b-)
ST酵素とSe酵素は、共存していると、基質(基幹領域)を競合する(ST酵素によりシアル酸を結合させsLecを経てsLeaを合成するか、Se酵素によりフコースを結合させLebを合成するか、競合する)。
Se酵素を持っていないLe(a+b-)の人は、基質に、ST酵素によりシアル酸を結合させるので、シアリルLea糖鎖抗原の産生が増加して、癌がなくても、CA19-9値が高くなる。
b).Le(a-b-)
日本人では、人口の4〜10%の人は、Le酵素が欠損し、Le(a-b-)である。
Le(a-b-)の人は、シアリルLec抗原からシアリルLea抗原(sLea)を合成出来ない。
その結果、Le酵素が欠損しているLe(a-b-)の人は、癌があっても、CA19-9値(シアリルLea抗原)は、上昇しない(ゼロになる)。
しかし、Le(a-b-)の人は、癌があれば、シアリルLec抗原(sLec)は、上昇し得るので、DUPAN-2の測定が有用である。DUPAN-2(シアリルLec抗原:sLec)は、CA19-9(シアリルLea抗原:sLea)の前駆体である(上図)。
なお、CA50は、シアリルLec抗原も検出するので、Le(a-b-)の人の診断に利点があると言われて来たが、CA50は、シアリルLea抗原をより多く検出する。
また、SLX(シアリルLex抗原)の合成に際して、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)に、フコース(Fuc)を結合させるには、Le酵素(FUT3酵素:α1.3とα1.4の両方のフコース転移酵素活性を示す)と、FUT6酵素(α1.3のフコース転移酵素活性を示す)が用いられる。SLX(シアリルLex抗原)のフコースは、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)に、α1.3結合(1→3結合)している。そのため、Le酵素が欠損しているLe(a-b-)の人でも、FUT6酵素により、SLX(シアリルLex抗原)は合成される。その結果、Le(a-b-)の人でも、癌があると、SLX値は上昇するので、Le(a-b-)の人では、CA19-9より、SLXを測定する。
注1:GalとGlcNAcとが結合した2糖構造は、色々な糖鎖の基幹領域(基幹構造)になっている。
基幹領域には、タイプ1(Galβ1→3GlcNAc:一型糖鎖を構成)と、タイプ2(Galβ1→4GlcNAc:二型糖鎖を構成)とが、存在する。タイプ2の基幹領域(Galβ1→4GlcNAc)は、N-アセチルラクトサミン(N-acetyllactosamine:LacNAc)。
注2:ABO式血液型抗原は、赤血球だけでなく、腸の粘膜上皮細胞の表面にも、存在する。
ABO式血液型抗原は、腸では、糖鎖として、腸内細菌との結合能に、影響する。例えば、A型の人の腸内では、納豆菌が定着しやすいという。
血清中に、A型の人は、B型の赤血球を凝集させる抗B抗体(β:IgMクラス)を有している。この抗B抗体は、自分の体内に侵入した微生物のB型糖鎖に感作され、産生される。
ニホンザルは、B型しか存在しない。
なお、ABO式血液型抗原は、一つの遺伝子に乗って存在している。血液型A型の人は、遺伝子型レベルでは、AA型の人と、AO型の人とがいる。
稀に、同一染色体上に、AとBの遺伝子が乗る場合(cis AB)があり、その場合、片親がAB型なのに、O型の子供が生まれることがある(逆に、片親がO型なのに、AB型の子供が生まれることがある)。
注3:Lex抗原(Lewis X抗原:SSEA-1抗原)は、Lea抗原(Lewis A)と相似して、フコース(Fuc)が、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)に結合している。しかし、Lea抗原では、基幹構造が、Galβ1→3GlcNAc(タイプ1)なのに対して、Lex抗原では、Galβ1→4GlcNAc(タイプ2)。
Lex抗原:Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAc-R
Lea抗原:Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAc-R
Lex抗原に、ST酵素により、シアル酸(NeuAc)が結合した糖鎖が、sLex抗原(シアリルLex抗原)。
参考文献
・腫瘍マーカー−その診断的意義と今後の展開 日本医師会雑誌 第131巻・第5号
2004年
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