NKT細胞

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 NKT細胞は、NK細胞とT細胞の両方の性質を合わせ持つ、新たに分画されたリンパ球。
 NKT細胞は、CD3陽性で、
 ・抗原受容体抗原提示細胞のMHC様分子(CD1d分子:注1)に結合した、糖脂質を認識して活性化され、IL-4とIFN-γを産生
 ・NK細胞受容体(CD161):標的細胞の糖鎖(注2)を認識して結合し、標的細胞を傷害する
の、2種類の受容体を保有している。

 NKT細胞は、形態学的には、NK細胞に似た顆粒リンパ球。
 NKT細胞は、T細胞と同様に、胸腺内でも分化する。
 NKT細胞は、末梢血、リンパ節、脾臓、胸腺には少なく、肝臓、骨髄に多い。

 NKT細胞は、MHC分子を失った標的細胞だけを傷害する(NK細胞と同様)。

 NKT細胞は、IFN-γ、IL-4を産生し、NK細胞やB1-B細胞など、自然免疫細胞を活性化させる。IFN-γ、IL-4は、相反する作用を持つ:IFN-γは、Th1細胞を活性化させ、IL-4は、Th2細胞を活性化させる。
 NKT細胞は、抗原提示細胞(樹状細胞)のCD1d分子(MHCクラスIb分子)に結合した、スフィンゴ糖脂質(α-ガラクトシルセラミド:α-GalCer)を、抗原受容体で認識して活性化し、IL-4とIFN-γを産生する:
 ・抗原受容体を介した刺激は、NKT細胞に、IL-4を産生させる。
 ・NKT細胞は、スフィンゴ糖脂質の誘導体(OCHという合成糖脂質)により、IL-4のみを産生するという。OCHは、多発性硬化症(MS)の治療への応用も、試みられた。
 ・NKT細胞は、α1,3-オリゴ糖により、CD161が刺激され活性化され、IFN-γのみが産生される。
 ・スフィンゴ糖脂質(α-ガラクトシルセラミド)は、樹状細胞(抗原提示細胞)にIL-12を産生させる。
 ・抗原提示細胞から産生されるIL-12は、NKT細胞に作用し、IFN-γを産生させたり、Fasリガンドを介して、細胞障害活性を示させる。 
 ・抗原提示細胞から産生されるIL-18は、NKT細胞に作用し、抗原受容体の刺激なしに、IL-12の作用(IFN-γ産生作用と細胞障害活性)を増強する。

 NKT細胞は、Fasリガンドを発現したり、パーフォリンを産生する。
 NKT細胞の細胞障害活性は、キラーT細胞と異なり、放射線、抗癌剤、ステロイド剤で抑制されない。
 T細胞と同様に、NKT細胞と樹状細胞には、CD28/B7共刺激回路が、樹状細胞とNKT細胞には、CD40/CD154(CD40L)共刺激回路が、存在する。

 生体内での腫瘍の転移は、初期にはNKT細胞が抑制し、後に、NK細胞が抑制すると考えられる。
 IL-12は、低濃度でも、NKT細胞の腫瘍転移抑制効果を増強し、NKT細胞からIFN-γを産生させる。
 NKT細胞は、免疫抑制作用があり、マウスの自己免疫疾患(SLE)の発症に先立って減少する。
 人間でも、SLE患者は、NKT細胞が減少している。
 Fas抗原を発現した、自己抗原反応性リンパ球を、NKT細胞が、アポトーシスで除去出来ないことが、自己免疫疾患の発症の原因とも考えられる。
 心臓移植の際に、共刺激(副刺激)阻害治療をすると、移殖片は拒絶されないが、NKT細胞が欠損したマウスでは、移殖片は拒絶されるので、NKT細胞は、免疫寛容とも関連している。

 クリプトコッカスに感染すると、肺胞マクロファージなどからMCP-1が産生され、体循環からNK細胞及びNKT細胞が、感染局所に集積する。NKT細胞は、樹状細胞と共に所属リンパ節に移動し、(NKT細胞からのIFN-γの産生や、樹状細胞からのIIL-12の産生を介して、)Th1細胞の分化を促進させる。

 1.マウスVα14NKT細胞
 マウスVα14NKT細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞とも異なる。
 Vα14NKT細胞の抗原受容体(Vα14TCR)は、Vα14Jα281遺伝子によってコードされる、α鎖からなる。
 Vα14NKT細胞は、NK1.1+T細胞として分類されて来た細胞と同一。
 この抗原受容体(Vα14TCR)は、抗原提示細胞表面の、マウスCD1d分子(非典型的MHCクラスIb分子)を抗原提示分子にして、「抗原」を提示される。

 「抗原」として提示されるのは、特殊な糖脂質(α-GalCer)であり、ペプチド抗原ではない。
 マウスVα14NKT細胞は、マウスCD1d分子に結合した、リガンドとしてのスフィンゴ糖脂質を、抗原受容体(Vα14TCR)で認識する。
 これは、ヒトヘルパーT細胞が、MHCクラスII分子に結合した、抗原としてのペプチド抗原を、TCR/CD3複合体で認識するのと、対照的。
 このようにして活性化されたVα14NKT細胞は、IFN-γやIL-4を産生すると同時に、強力な抗腫瘍活性を、生体内(in vivo)で示す。

 EAE (experimental autoimmune encephalomyelitis)は、多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)のマウスのモデルで、ミエリン塩基性蛋白 (MBP) に反応する、CD4Th1型のヘルパーT細胞クローンによって誘発される。
 抗NK1.1抗体をマウスに投与すると、EAEが劇症化することから、NKT細胞やNK細胞は、自己免疫疾患の悪化を抑制していると考えられる。

 2.ヒトVα24NKT細胞
 マウスVα14NKT細胞に相当する細胞として、ヒトでは、Vα24NKT細胞が知られている。
 ヒトVα24NKT細胞の抗原受容体は、Vα24Vβ11遺伝子によってコードされるという。
 ヒトVα24NKT細胞は、抗原受容体であるVα24Vβ11と、NK細胞のマーカーであるCD161NKR-P1)分子を併せ持っている。 
 ヒトVα24NKT細胞も、スフィンゴ糖脂質(α-GalCer)をリガンドにする。
 ヒトVα24NKT細胞は、ヒト悪性腫瘍細胞株に対して、試験管内(in vitro)で、NK細胞様の標的細胞傷害活性を示す。
 ヒトVα24NKT細胞の抗腫瘍活性の発現には、抗原受容体よりも、NK細胞受容体(NKR-P1、CD3×CD161)が、関与すると考えられる。

 NKT細胞は、自己抗原反応性T細胞の活性を抑制する。
 ヒトVα24NKT細胞は、自己免疫疾患である、多発性硬化症の末梢血中で、著しく減少している。

 注1:ヒトCD1分子には、グループ1(CD1a、CD1b、CD1c)と、グループ2(CD1d)が存在する。マウスやラットでは、グループ2CD1(CD1d)のみが存在する。グループ2CD1(CD1d)分子は、糖脂質やリン脂質と結合する。
 ヒトCD1遺伝子群は、第1染色体上に位置する(MHC分子は、第6染色体上に位置する)。

 注2グルコースブドウ糖)、ガラクトース(Gal)、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、フコース、キシロース、シアル酸などの糖は、複雑に連なって、糖鎖を形成する。
 糖鎖は、糖蛋白や糖脂質と結合して、細胞間での情報伝達に、重要な役割を果たす。
 糖鎖は、蛋白質に結合して、蛋白質のタグ(荷札)の役割を担う。また、糖鎖は、結合した蛋白質や脂質を安定化させる。シアル酸シアル酸の付いた糖鎖が結合すると、陰性荷電により、血管内皮細胞と反撥し、肝臓などで、分解されにくくなる。
 蛋白質や脂質に糖鎖が結合したものは、複合糖質と呼ばれる。複合糖質には、糖蛋白質、糖脂質、プロテオグリカンに分類される。
 糖蛋白は、1本の蛋白質に、短い糖鎖(単糖が20個まで)が、1〜数百本の糖鎖が結合している。
 糖脂質は、1本の脂質分子に、1本の糖鎖が結合している。
 プロテオグリカンは、1本の蛋白質に、長い糖鎖(単糖が100〜1万個)が結合している。

糖鎖の単糖成分
 ヘキソース  ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)、グルコース(Glc
 デオキシヘキソース  L-フコース
 へキソサミン  N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)
 シアル酸  N-アセチルノイラミン酸(NeuAc)、N-グリコリルノイラミン酸(NeuGc
 ペントース  キシロース、L-アラビノース
 
 糖蛋白質の糖鎖部分は、親水性の供与、蛋白分解酵素からの保護作用、レクチンとの結合、ホルモンや微生物の受容体、細胞間相互作用などがある。

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